救出
私は二人に話した通り、教会の裏手から侵入した。
中は思いのほか広い、そして、二階に分かれている。私が侵入したのは木を伝って二階からだ。
身を屈めて、懐から愛用しているナイフを軽く手元で回す。
「とりあえず、2、3、いや…4匹か…、一階にはもうちょい居るんだろうなこれ」
二階から侵入した私は素早く近くの物陰に隠れると息を潜める。
とりあえず表からはバリバリの近接向きの二人が居るし、何も心配は要らないだろうが、なんたって向こうに人質がいる以上、あまり派手には仕掛けられない。
地道にやるしかない、私は静かに足音を立てずに見張りをしているゴブリンに近づくと背後から口を押さえ、思い切り喉元にナイフを突き刺した。
「…ンゴォ! ゴガッ」
「死んでろ」
そして、突き刺したナイフを引き抜き、次は背中から心臓にかけてひと突き。
返り血は付くが、これは致し方ない、私は殺したゴブリンの死体を静かに物陰に隠す。
まずは一匹、次は残りの三引きだが、二匹は固まっているので後回しだ。
次の獲物へと静かに近づいた私は先程と同じようにして、二匹目を始末する。
二匹目の側には裸体の村娘が横たわっていた。どうやら、死んではないようだが、疲れたように眠っている。
まあ、予想はつくけどな、どうやら二匹目はお楽しみから終わって完全に油断しきってたようだ。となると、最初に殺した奴は大方、その見張りかなんかだろう。
さて、それじゃ最後は二匹、何やら話し込んでいるようだが、さてどう始末したもんかな。
ここまで来れば小賢しい小細工は必要ないか。
私は投げナイフを構えて素早く投擲する。勢いよく飛んだナイフは腰を据えて座っていたゴブリンの額を直撃した。
突然の出来事に動揺しているもう一体を狩るのは楽だった。
私が振り切ったナイフは鋭い切れ味で綺麗にゴブリンの首を地面に落とす。
「ふぅ、一丁あがりだな」
相手が人型のモンスターならこんなもんだろう。
前にやり合ったオルトロスみたいなでかい的だと話は変わるが、何人も殺してきた私にとってみればゴブリンのような人型が相手なら何人でもぶち殺せる自信がある。
さて、それじゃ残りは一階だけだな、慎重に敵を殺して村娘達の安全を確保してあげてやらないと。
私はゆっくりと階段を降りながらナイフを構える。
そして、静かに息を殺して、残りのゴブリンやオーク達にバレない様に一階を散策した。
「…うわ…この部屋、すごい臭いだ」
私は物凄い臭いがする部屋のドアにそっと手をかける。
多分、この先に拉致された村娘達が連れ込まれているのは間違い無いだろう。嬌声が外に聞こえてくる。
私はそっと、扉を開けて中を確認するとお楽しみ中のオークとゴブリンが一人ずついた。中では犯されている娘とは別の村娘達が啜りなく声が聞こえてくる。
私は手持ちのナイフを持ち変えると、素早く背後から駆け寄り、まずはゴブリンの首を掻っ切る。
そして、それに驚いたオークの脳天に向かって首を掻っ切ったナイフをそのまま投げつけた。
「よっしゃ、…大丈夫か?」
「…う…うぅ…! ありがとうございますっ!」
「全員静かに、声を上げるな気づかれる」
私はすかさず、悲鳴をあげそうになってる村娘達に念を押す。
あとはこいつらを一旦逃すだけだが、まずは私が先行して一階にまだ残っているゴブリンやオーク達の目を惹きつけてやらないといけない。
私は懐から銃を取り出すと、身体を隠すように村娘達についてくるように促した。
「よし、…まず、私が目を惹きつけるからお前達は一気に扉から外に逃げろ、良いな?」
「え…! わ、私達だけ…」
「外に私の仲間がいるから心配すんな」
そう言って安心させるように肩をポンと叩いてやる。
さて、問題は外にいる奴等だが、半次郎とスーナの腕ならそんなに時間はかからないだろう。
後はド派手にパーティーするだけ出しな、こちとら隠密に行動しすぎてフラストレーションが溜まりっぱなしなんだ。
私がこの部屋に来るまでに確認できたのは七匹くらいだ。
ゴブリンが四匹、オークが三匹、まあ、畜生が何人いようとさしたる問題ではないんだが。
「それじゃいくぞ? 準備は良いか?」
「は、はい…」
「さん…に…いち…!」
カウントを数え切った瞬間、私は勢いよく部屋の扉を開き、構えた銃で目に入ってきたゴブリンに向かって発砲する。
そして、その私の行動と共に悲鳴をあげながら、村娘達が一気に教会の出口に向かって駆け始めた。
その銃声と共に一気に私にその場にいるゴブリンやオーク達が視線を向けてくる。
私はそんな奴等に静かに銃口を向け、笑みを浮かべていた。




