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廃墟の教会



 


 翌朝、私は半次郎とスーナと共に馬を走らせ、目的地である廃墟の教会の周辺の森までやってきた。


 キャンプもして、精気は養っているし、戦闘になったとしても皆、問題なく立ち回れる事だろう。


 廃墟の教会に近づく前に、私達は馬を降りた。


 既に、ここら一体は奴らのテリトリーだ。気づかれる可能性があるし、徒歩の方が隠密性も高まる。


 幸い、半次郎と私はこういった隠密に関しては慣れていた。だって私の本業は殺し屋だからな? そりゃ、仕事柄そうなるのも致し方ないだろう。


 問題はスーナだ。彼女はどちらかというと正面から斬り合う事の方が多いため、こういった隠密行動は苦手だろう。


 一応、軽装はしているが、不安なとこではある。



「お…、早速一体目だな…」

「グギャッ…!?」



 私は木の上からすかさずナイフを投げ、ゴブリンを一人仕留めた。


 ゴブリンに投げたナイフは綺麗に脳天に突き刺さっている。それを見た半次郎は感心したようにこう告げた。



「凄か腕前じゃ、一発で仕留めるとはの」

「たりめーだ、本職なめんな」



 私はゴブリンに刺さったナイフを引っこ抜き、半次郎にそう告げるとニヤリと笑う。


 この程度は初歩の初歩だ。育ての親であるディグレの姉御から仕込まれた技は身に付けるのも大変なものだったし、これくらいは私にとっては朝飯前。


 銃だとどうしても音がでるからな、ナイフと矢はその分、暗殺には秀でた殺傷武器だ。


 なので、対象が複数人の場合、私は銃ではなくナイフをよく愛用している。


 銃は強力だが、そういったデメリットがあるのだ。



「近接担当、お二人さん頼むぜ? 潜入にはその得物はもってこいだろう?」

「まあ、期待しといたらええ、…おい達の腕ばの」

「日頃、磨いた剣技の見せ所だしな」



 そう言って、二人は不敵に笑っていた。


 さすが戦場慣れしてるだけはあるな、頼もしい限りだ。


 それから、しばらく教会の方面へと足を進める私と半次郎、スーナの三人。


 しかしながら、もうすぐで教会が見えるであろう範囲まで近づいたその時だった。


 空気が変わった事に気がついた私は二人を手で制止する。



「右から一人、左から二人…」

「応、こっちに来よるな…」



 すぐさま、腰にある刀に手を添える半次郎。


 そして、スーナも剣に手を掛けいつでも抜ける臨戦態勢を取っている。まだ、あちらは気配を察知しているようだが、こっちには気付いていないようだ。


 真っ直ぐに向かっては来てないものの距離を少しずつ詰めてきているのを感じる。



「スーナどんは右を殺れ、おいはロホさぁと左を殺る」

「了解した、気を付けろよ」



 そう言って、私達は頷くと左右に分かれる。


 私は木の上に素早く登ると、始末する数の多い半次郎の方についていく。


 万が一、殺し損ねた時に私が殺せるようにという保険だ。


 スーナに関しては片付けるのが一人だけだし問題ないだろう。


 素早く茂みに隠れながら、敵との距離を測る半次郎。


 目視でゴブリンが二人、巡回しているのが確認できた。



「…あれか…」



 二人のゴブリンは何やら談笑をしているようだ。


 こちらに向かって来ているが、半次郎の隠れている茂みには気付いていない。そして、二体はすでに半次郎の間合いに入り込んでいる。


 それからは、一瞬の出来事だった。


 私がすかさずナイフを投げようと構える動作をする間にそれは終わった。



「…ッシッ!」

「…ガッ!」

「ゴガッ!」



 声をゴブリンが上げる前にすでに二体の首が宙に舞った。


 茂みの中から閃光の様な速さで腰から抜かれた半次郎の刀はまるでチーズをスライスするかのように簡単に首を撥ねてしまったのである。


 私もこれには冷や汗が頬から流れ出た。


 相手が声を出すまでもなく一撃必殺の抜刀で二匹も…。


 半次郎は何事もなかったように刀の血を払うとそれをゆっくりと納刀する。



「…すまんの、ロホさぁ、纏めて斬ってもうたわ」



 小さくそう告げる半次郎の技に私は笑みを溢しながら、静かに問題無いと頷くと地面に降りる。


 さすがと言う他ない技だった。やはり、半次郎をあのマルケから買ったのは間違いではない。


 私はでかしたと軽く半次郎の肩を叩く。


 さて、後はスーナの方だが、どうだろうな。


 しばらくして、私達の元に返り血がついたスーナが帰ってくる。



「向こうも始末して来た」

「よし…行こう」



 スーナの言葉を聞いて私達は再び教会に向かい歩みを進める。


 しばらくすると廃墟になった教会が見えて来た。


 私達はその手前の茂みに身を屈めて、息を殺す。下手に出ればこちらに気づかれ、後手に回る可能性があるからだ。


 それにこの位置からなら、どれだけの数がいるのか双眼鏡を使えばよくわかる。


 私は懐から双眼鏡を取り出すと廃墟の教会の様子を静かに観察する



「どうじゃ?」

「外にゴブリンが四匹…、デカいオークが一匹、裸にひん剥かれてる村娘が一人」



 私は冷静な口調でそう告げる。


 隣にいるスーナは今にでも飛び出して斬りかかりそうな雰囲気を醸し出している。


 まあ、同じ女性だしな、気持ちはわからんでもない。あんな村娘の酷い姿を見れば誰だってそうなる。


 半次郎も例外ではない、表情は何事もないような顔をしているようだが、目は殺意で満ちている。


 しばらくして、スーナは私の言葉に静かにうなずいた。



「…なるほどな」

「中の様子はわからない…が、上の窓から侵入できそうだな、…裏手の割れた窓から私が侵入する。私が銃を撃った途端…外にいるゴブリン四匹をまずは二人で片付けるように動け」



 私の言葉に頷く半次郎とスーナの二人。


 潜入した私は中にいるだろう人質を監視してる連中を静かに皆殺しにして、囚われている村娘を全て、割れた窓から全て逃す。


 そして、それから、私が銃を使う。


 銃声を聞けば、いやでもこちらに注意が向く、その隙に二人が奇襲をかけて外にいる連中を皆殺しにする。


 そして、私は教会の中にいる残りの連中を皆殺しにして、今回の依頼は完了だ。


 もうちょいスマートなやり方があるかもしれないが、中の様子がわからない為、今回はこのやり方でやるしかない。


 正攻法でないやり方でやる、それが、私のやり方だ。



「それじゃ二人は位置についてくれ」

「わかった」

「応」



 私は二人にそう告げると、割れた窓がある教会の裏口へと回る。


 人質が殺されたりしたんじゃ依頼料も減ってしまうからな、できるだけ被害を出さないやり方で今回はやる他ない。


 私としても派手に暴れたいが、まあ、それは…。


 後のお楽しみというやつだ。

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