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ギルド

 




 私は半次郎とスーナの二人を連れてギルドにやってきた。


 二頭頭のオルトロスを殺して報酬を貰ってから改めてこのギルドに来たが、オベッハプエブロのギルドはエスケレトプエルトのギルドに比べるとかなり落ち着いてるギルドだと感じる。


 というのも、やはり治安だとか、依頼を受けにくる人間の層が良いのがやはり1番の理由だろう。


 良い意味で安心できるギルド、悪い意味で平和ボケしてるギルドである。


 まあ、こんなギルドなら滅多に血の雨が降る事もないだろう。エスケレトプエルトは毎回のように死人が出るくらいだからな。



「…あ、あら、ロホさん、今回は何の用ですか?」

「殺しの仕事あるか?」

「ありません」



 私は受付に行き、すぐに受付嬢に問いかけるが即答で返されてしまった。


 おかしいな、エスケレトプエルトならレディストの姉御がニコニコして紹介してくれるというのに。大体、ギルドの汚い仕事をむしろ請け負ってあげてるんだからそんな邪険な扱いをされる覚えはない。


 私はため息を吐くと、タバコに火をつけてため息を吐くように煙を吐く。



「んだよ、ない事はないだろ? 悪徳な貴族だろうが商人だろうが無法者だろうがたくさんいるだろうが」

「貴女ねぇ…」

「応、おいも刀にゃ自身がある。紹介してくれたらサパッち殺ってくるど? こう見えて人斬りなんち言われとったからの」



 そう言って、私に便乗する様に半次郎も受付嬢ににこやかな笑顔を浮かべているものだから、流石の受付嬢も困り果てたように頭を抑えていた。


 まあ、それが健常者なら普通の反応だろう、私が普通でない事ははなから自覚がある。


 それは隣にいる半次郎も同じか、唯一まともなのは、私達の言葉に呆れたようにため息を吐くスーナぐらいだろう。



「お前達、少しはまともな話をしたらどうだ? お前達の話を聞いてると血に飢えた狂人にしか聞こえんぞ」

「間違っちゃいないな」

「そうじゃの」



 血に飢えた狂人と言われ、頷く半次郎と私。


 金になるのが手っ取り早い仕事なんだから致し方ないだろう。別に手段がそういう仕事なだけだ。


 スーナはとりあえず、私達を押し除け、受付嬢に近寄ると親しみ易い笑みを浮かべたままこう告げる。



「すまないな、奴らの言葉は聞かなかった事にしてくれ。それで、依頼なんだが…。あ、普通の依頼だ。冒険者用のな」

「えぇ、それなら大丈夫です! 良かったぁ…貴女みたいな人が居てくれて!」



 おい、それはどういう意味だ。


 私がそう告げて鋭い目つきで受付嬢を睨むと彼女はひぃ! と声を上げて後ずさる。それを見たスーナは私と半次郎をジト目で睨むと散れとばかりに手で追い払う仕草をした。


 なんだその手は私と半次郎は猫か犬の類か? 


 まあ、そう言うわけで、ごく普通の依頼をスーナが持ってきたわけなんだが。



「行方不明の村人の救出だぁ?」

「そうだ」



 その依頼というのが、行方不明になった村人の娘の救出という依頼であった。


 私は面倒くさそうに後頭部を掻く、話を聞けば襲われた隣の村の娘達を救出して欲しいという。まあ、私がこの街に来た時に群れがどうとか言ってた気はするがな。


 まあ、相手が人型のモンスターかもしれないだけマシか、早い話が探し出してこの街に連れ帰れば良いだけだしな。



「まあ、殺れんだろ? 場所的にはどの辺だ?」

「村から南東の廃墟だそうだ、もともとは教会があった場所だな」



 私の問いかけにそう告げるスーナは白みを帯びた長い銀髪の髪を背後に纏める。


 教会に居座るなんて罰当たりな奴らだな、こりゃ神様もお怒りに違いない、いや、そんな教会なら神様なんてのは裸足で逃げ出して南国にバカンスにでも出かけてるか。



「久々に腕がなるのう、何人斬れるか楽しみで仕方なか」

「うむ、そうだな」

「お前達のお手並拝見だな、それじゃ行くぞ」



 そう告げると私はギルドの外に待たせていた愛馬のシャンドレに跨る。


 二人も続いて、このギルドに着く前に購入した馬にそれぞれ跨った。移動手段はやはり必要だからな、馬に関しては必要経費だ。


 ちなみに、皆はすでに気付いているとは思うが自分の一人称が私になってるだろう?


 まあ、察しは付くだろうがプラダからの強制である。


 せめて、自分の呼び方くらいは女の子らしくしろだとかいう事らしい。


 ちょっと不満はあるが、今ではもう馴染んだものだ。


 レディストからもいつも言われてたしな、今更、一人称が俺から私に変わったところでどうという訳でもないし。


 それからギルドを出た私達は馬を走らせ、ひとまず、被害にあった村に向かう事にした。


 その間、時間があるのでスーナは私に昨日、耳にした話題について投げかけてきた。



「そういえばボス、オルトロスを殺ったというのは本当か?」

「あん? …あー、あのデカイクソ犬か」



 私は昨日の事を思い出しながらそう呟く。


 殺ったというより、弱ったところを無理やり殺したというのがこの場合正しいだろう。


 わざと街に誘導したものだから、人的被害も結構あったみたいだ。それを、意図的にやったからなおのこと私はタチが悪いだろう。おかげで難なく討伐することができたわけなんだが。


 その事をスーナに話すと彼女は顔を引きつらせながら一言こう告げる。



「とんでもない悪党だな貴女は…」

「お褒めくださりありがとう、最高の褒め言葉だ」



 反省の色なく、笑みを浮かべスーナにそう返す。


 生きる為なら手段は選ばない、外道だろうが結果的には人々を苦しませていたオルトロスを殺してあげたのだから別に結果オーライだろう。


 私も余裕があったわけでもないし、使えるものは全部利用するのが私の流儀だ。



「私らは正々堂々なんてアホみたいな事はしやしない、未だに騎士道なんてモノ引っさげてんならこの先お前さんは辛い思いするだけだぞ」

「……あぁ、確かにな、私が間違ってたよ」

「気持ちはわかるけどな、まぁそういうこった」



 私の言葉にスーナは肩を竦める。


 そう、わかった上でロホについて行くとスーナ自身が決めたのだ。今更、正しい行いをしよう、やり方が騎士道に反しているなんて言い出すなら最初からついて行こうなんていう必要などない。


 その事はスーナも重々承知している。そして、ロホの言葉に引っかかっていた感情はスッキリと消化できた。


 しかしながら、獰猛なオルトロスを殺しきったロホのその腕前はやはり称賛に値するとスーナは素直にそう思った。


 街の冒険者や住人の間でもロホの名前がやたらと上がっていたことからその強さは本物だろう。



「全く…プラダといい、お前といい…おっかないな」

「あれと一緒にしないで欲しいが、まあ、同類だからな」



 私は肩を竦め、苦笑いを浮かべるスーナにそう告げる。


 いずれにしろ、スーナもこっち側の人間になってもらう必要がある。正義感の強そうな元騎士の彼女にはなかなか酷な事かもしれないが、割り切るということも大切なのだ。


 今は無法者のスーナとして、ウチに貢献して貰わなきゃな。


 私の隣で退屈そうに欠伸をしてボサボサな黒髪を掻いている半次郎に関しては、まあ、心配することないだろう。


 多分、元からこちら側に近い人間だ。



 スーナと雑談を繰り広げている内に、私達の乗った馬は被害にあった村へと無事にたどり着いた。


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