水族館
小林くんは何か目的地がある様で迷いなく歩いて行く。
「ごめんね。深田さん、田島さんと一緒でなかなか2人っきりになれそうに無かったから・・・」
あーそりゃそっか。小林くんは最初2人で出かける事を言ってたわけだし。
どうしたもんか・・・・
「深田さん少し目を瞑っててくれない?ほんの少しでいいから。」
「う、うん。」
目を瞑った状態で歩いたのは多分1、2分位だろうか。
「お待たせ。ゆっくり目を開けてみて。」
「ん。・・・うわー綺麗・・・トンネルになってる。」
目を開けてすぐに見える景色は先程より道幅が狭く一方通行になっており、トンネル型の水槽の中をペンギンが優雅に泳いでる。
「可愛い。」
「凄いでしょ?下も見て見て。」
「下?わっ下もガラスになってる。」
トンネルの中を歩くと言うよりペンギンの泳ぐ海の中にいるような錯覚に陥る。
「凄い。」
「喜んでもらえて良かった。あのさ深田さん良かったらこのまま2人で・・・「見つけたぞ。小林、抜け駆けしてんじゃねぇー」見つかったか。残念。」
一方通行で私達より後ろに人もいた為、長山くん達が追いついて来ることは無かったが小林くんは出口まで来ると長山くん達を大人しく待っていた。
正直助かったけど、このまま皆をまくとかはしないんだ。
「小林、てめぇ本当油断ならねぇな。」
「ちゃんと待ってたんだからいいだろ。」
「夢ちゃんー。いないからびっくりしたよー。」
「ごめんね。優ちゃん。」
「で?小林くんと何かあったの?遠目で見た感じいい雰囲気に見えたけど。」
「何もないよ。」
優ちゃんが期待するような事はないもない。ただあのトンネルは綺麗で見せに連れて行ってくれた事には感謝してるだけ。そうそれだけ。
その後は長山くんがよく喋り、抜け駆けをさせないようにしながら5人でイルカショーや水槽を見ながら食べるレストランで食事を摂ったりとそれなりに水族館を満喫した。
「あ、お土産コーナー見て行こうよ。」
出口近くにあるお土産コーナーを指さして優ちゃんが走り出すのをみっちゃんがため息をつきながら追いかける。
「あいつらカップルっていうより兄弟みたいじゃないか?」
「優ちゃんとみっちゃんは小さい頃からずっと一緒だったから。」
長山くんにそう答えた後私も二人を追ってお土産コーナーへ歩きだした。
定番のぬいぐるみやお菓子を見ながら歩いてるとアクセサリーコーナーで私の足が止まった。
「気になるのか?」
「みっちゃん。うん。可愛いなって。」
私が手に取って見てたのはペンギンが
小さな星を持ったペンダントだった。
ペンギンが持ってる星の中には石が入っていてそれが12種類。
誕生石になっているものだった。
その下の段には同じく誕生石で型どったボールを回すイルカのペンダントもあった。
「珍しいよね。ペンギンのペンダントって。」
「買うのか?」
「うーん。可愛いけどいいや。」
私が自分の誕生石のついたペンダントを元に戻すと優ちゃんが興奮した様子で手招きしているのが見え、優ちゃんの元に向かった。
私が去った後もみっちゃんはペンダントを眺めていた。
「それ自分の彼女の誕生月じゃないだろ。」
「小林。優香の知ってるのか?」
「先月、田島さんがクラスで言ってたのをたまたま聞いただけ。」
「そうか。」
「そ。だからそれは俺が買うから金森は自分の彼女のを買えよ。」
「・・・夢叶に安易に近づいて傷つけるようなら許さないからな。」
「は?それどうゆう・・・」
金森は俺の言葉を無視してイルカのペンダントを持って行った。
それぞれの買い物を終え、水族館を出ると夕日で水族館の壁がオレンジに染まっていた。
「田島凄い買ったな。」
「そりゃあ長山くんこれを見つけたら買わずには居られないよ。」
「え?これって」
「イケメン海神シリーズのネプチューン!水族館と期間限定コラボしてたんだよ!」
「お、おう。」
優ちゃんが力説するのを長山くんは引き気味で聞いている。
あーやっぱり引くのか。ん?これなら諦めてくれるかも。
「長山くん、小林くん。」
私が声を呼ぶと2人がこちらを向いてくれる。
それを確認すると持っていたビニール袋から買ったばかりのファイルを取り出す。
「私も買ったの。イケメン海神シリーズのワダツミのファイル。」
「「・・・」」
「私・・・恋愛ゲームは好きだけど三次元には興味ないの。」
「三次元?」
「つまりリアルの恋愛には興味ないの。だからごめんなさい。」
「「・・・はい」」
よし!これでまた月曜日からは地味生活に戻れる。