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夏の始まり

全員が赤点を免れたテストを終えた今日、日野咲高校も夏休みに入ろうとしていた。

夏休みに入るにあたっての校長からの長い話しをうつらうつらに聞いている。

これが終われば教室で担任からのお言葉に成績表の返却。

そうこれさえ耐えれば待っているのは長い夏休みだ。

そう思えばこの暑い体育館も我慢出来る。


(って言うか先生達にだけ扇風機とかずるい)


生暖かい夏の風でも無風の体育館の中では天国だろう。

そんな教師達を横目に今だに学生たるものっと熱弁をふるう校長にため息をついた。


長い体育館での式を終え、教室で通知表を受け取る。


(うん。まずまずの成績。)


可もなく不可もなくな成績に満足していると全員に配り終えた担任からの話が始まる。


「まっ校長からもグダグダ言われてっからな。俺から一言。事故は起こすな、巻き込まれるな。俺の貴重な休みを邪魔しない程度に遊べ。」


本当にこれだけで終わりだからこの担任は嬉しい。

30過ぎの独身の担任は生徒からも評判がいい。

他のクラスがまだ終わっていなきのを尻目に私達は学校を後にした。


「あー始まった。俺の高校生活初の夏休み!!バイトすっぞー。」


長山君は今まで静かにしていた分、学校を出ると元気になった。


「バイトなんて夏休みじゃなくても長山君やってるじゃんか。」


優ちゃんはそう言ってストローの刺さったジュースに口をつける。

因みに私達がいるのは駅前のワック。

約束通り夏休みまで会わなかったのみっちゃんとの待ち合わせだ。


「そーゆう田島はどうせ金森とのデートしか考えてないんだろ。」


「失礼ね。確かにみっちゃんとのデートもするけど夏はおばあちゃんの所にも行くもん。」

「へーへー。」

「長山と田島さんって何だかんだ仲良いよね。」

「本当。喧嘩するほど何とやらだね。」


私の左側に座る小林君が2人を眺めながら話しかけてきた。

因みに私達がいるのはカウンター席で右から小林君、私、長山君、優ちゃんの順だ。

私としては長山君と入れ替わって優ちゃんの隣に行きたいんだけど。

どっちが私の隣に座るかで軽く揉めてからこの形になった。


(別に隣になんて、どうだっていいと思うんだけど)


2人の中ではかなり重要らしい。


「悪い。遅くなった。」


少し息を切らしたみっちゃんがきた。


「おー遅かったな。金森の所も話が長かったのか?」

「長かったが、遅くなったのは家に寄ってたから」


みっちゃんがそこまで話したとき、小林君が何かに気づいた。


「金森、後ろにいるの誰だ?」


みっちゃんの影に隠れている人物に気づかなった私も少し体を傾けてみっちゃんの後ろを見ようとする。


「夢叶ー!」


影に隠れていた人物は私に気がつくと思い切り抱きついてきた。

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