大丈夫
「話って・・・」
私は2人を拒んだ。
怖くて優しい2人から逃げた。
そんな私にどうして?
「田島さんから聞いたんだ・・・その昔の事。」
「そっか。聞いたんだ。」
「田島は悪くない。俺達が無理矢理聞いたんだ。」
大丈夫だよ。2人は知る権利があると思うし、優ちゃんが言ってくれて良かったと思う。
「じゃあ尚更分かるよね?私は地味に静かにしたいの。」
「俺達はさ。話を聞いて知ることは出来ても気持ちは分からない。」
「・・・」
「辛かった、悲しかった。言葉にしたら簡単だけどその傷の酷さは本人しか分からない。」
「同情もしない。してもそれは俺の自己満にしかなんねぇし。本当のお前の事知ること出来ねえからな。」
「何が言いたいの。」
可哀想だとかそんな眼差しを向けられると思ってた。
でも2人は過去を知っても私を同情や哀れみの目でみてこない。
心が揺らぐ。
「過去は変えれないけど今は変えれる。深田さんも変わりたいと思ってるんじゃないの?」
「わ、私は・・・」
「お姉さんが変えた。それは聞いたよ。髪は切ったらすぐには伸びないけど服装は戻せるよね。お姉さんがアメリカに帰っても戻さなかったのは変わりたいって気持ちがあったからでしょ。」
「昔は誰も気づかなかったかもしれねぇ。だけど今は俺達がいる。小林が気づかなくても俺が気づいてお前を守る。」
「・・・」
「抜け駆けはよせよ。俺だって深田さんを傷つけるような奴がいたらそいつから守るよ。」
「「俺達2人のどちらかを好きになってくれとは言わない。」」
2人の声が重なって私の心に強く響く。
「だからって距離をおいたりしないで今までみたいに一緒にいよ。その中で好きな人が現れたらその時はちゃんと離れるから。」
「ごめん・・・なさい。私楽しかったの。最初は目立つ2人が側にいるのは嫌だった。けど2人の事を知る内に・・・一緒にいるのが楽しくてでも昔みたいなる気がして怖くて。」
もう一度2人の側で過ごしていいの?
「うん。大丈夫だよ。高校生活はまだ始まったばっかりなんだから一緒に楽しもう。」
「そーだぜ。俺といたら楽しさ倍増だからな。」
長山君の言葉に私の口が笑みを浮かべる。
「ありがとう。これからもよろしくお願いします。」
まだほんの少し恐怖はあるけどきっと大丈夫。
私はこの2人に会えた事に感謝した。




