今度は
「そんな事があったんだ。」
「俺達に話せるわけないよな。」
「うん。でも今のままじゃ駄目だと思うの。姿こそ変わっても中身は中学時代を引きずったまま。私は夢ちゃんに幸せになってもらいたいの。」
「田島さんはどうしてもそこまで深田さんの事を大切にしてるの?」
「俺もそう思った昔から仲がいいってのは分かるけどよ。普通ここまでするか?」
「それは・・・。」
「俺達も夢叶に酷いことをしてしまったからだ。」
「みっちゃん・・・」
それまで静かにしていた金森満が口を開いた。
「俺達は悪口を言ったりしたわけじゃない。むしろその逆だ。」
「逆?」
「あぁ夢叶のイジメに気づいたのが遅れたのは事実だ。気づいてからも夢叶があんなに傷ついてるって事を知るのが遅れた。」
「どういうことだ?」
「夢叶は普通だったんだ。俺達の前では。だから悪口も気にしてないんだと思ってた。普通に考えれば平気な奴なんていないのは分かる事なんだけどな。」
満の言葉に2人は黙った。
「私とみっちゃんは幼馴染みでずっと一緒にいて、からかわれる事もあったの・・・みっちゃんの側にいない方がいいのかなって思ったりもした。そんな時に助けてくれたのが夢ちゃんなの。夢ちゃんがいなかったら私とみっちゃんの間には溝が出来て今は一緒にいなかったかもしれない。それなのに私は夢ちゃんが困ってる時に何もできなかった・・・ううん。しなかった。」
優花の目には涙が溜まっていた。
「だから今度こそ私が夢ちゃんを守るの。」
まだ目の赤い優花は満に任せ、店を2人は後にした。
「小林「長山」」
ほぼ同時に互いの名前を呼んだ。
「多分俺達同じこと言おうと思ったよな。」
「あぁ。お前とは何だかんだ腐れ縁だからな。」
言葉にしないまま2人はそれぞれの帰路に着いた。
翌日の学校も夢叶は欠席することなく登校してきた。
2人はそんな夢叶に話しかけようとするが上手いこと逃げられていた。
昼になると2人の姿は教室から消えており、夢叶は内心安堵していた。
「夢ちゃん。気分転換にたまには屋上でご飯食べない?」
「屋上で?」
屋上と言えば昨日の事が蘇るが優花がその事を知っていると思っていない夢叶は戸惑いつつも同意した。
屋上までくる人間は意外と少なくこの日も屋上には誰もいなかった。
屋上の重い鉄扉をゆっくり閉めたあと空を見上げればそこは雲一つない晴天が広がる。
少しずつ気温も上がり、もうすぐ夏休みになる。
休みがあければ春先の様に何もない日々が始まる。
「深田さん」
「え?」
誰もいないと思った屋上。扉の前に立つ優花から少し離れた位置。
貯水タンクの影になっていた死角に小林と長山がいた。
「悪い。お前とちゃんと話がしたくて田島に頼んだ。」
長山がそういうと優花が申し訳なさそうに顔の前で手を合わせた。
「「今度は俺達の話を聞いてくれ。」」




