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ライバル

あの一方的な約束から数日。

憂鬱な気持ちは晴れないまま体育祭当日を迎えた。


「あー。何でこんなに晴天なの。」


私達が通う日野咲高校は進学校の割に運動部にも力を入れている。

だけど体育祭にはそれ程力を入れていない為、体育祭当日が雨で中止になった場合予備日など設けていない。

だから私は雨が降るようにお祈りしていたのに。


「ここ何日も天気に恵まれたね。でも明日は雨なんだってー。」


私が項垂れていると横で優ちゃんがのほほんとした笑顔で話しかけてきた。


「雨は明日じゃなくて今日が良かったんだよー。」

「まあまあ。お菓子位いいじゃん夢ちゃん。私も手伝うから、ね。」


お菓子作るのは計量とか地味に大変だから嫌なのにな。


「深田夢叶!!」

「はい?」


突然後ろからフルネームを呼ばれて反射的に返事をして振り返った。

そこにはややつり目で髪を高い位置でポニーテールにしている女子がいた。

頭には白いハチマキが着いている。

・・・うん。知らない子。

そもそも私は赤だし。


「えっと誰?」

「1-4名蔵玲奈よ。忘れたとは言わせないわ。」

「忘れるも何も、私あなたの事知らない。」

「廊下でのことと言い・・・何なの貴女。」


いや。それは私のセリフだし・・・ん?廊下?


「もしかして隠れて悪口言ってた女子1?」

「女子1って何よ。まぁいいわ。貴女のおかげで分かったの。やっぱり小林くんに貴女は相応しくない。」

「はあ。」

「だから私が相応しい相手になってみせるわ。ダイエットして3キロ体重だって落とした。そして今日は勝負よ。貴女のいる赤チームになんて負けないんだから。」


唖然としている私を余所に言いたいことを言って満足した名蔵さんはスタスタと歩いていった。

えっとこれって・・・


「夢ちゃんライバル宣言されたね!」

「やっぱりそういう事?!」


赤に勝つって小林くんも赤だから小林くんも負けるって事になるけど名蔵さん気づいてるのかな?

私は別に勝ち負け気にしてないからいいんだけど、ただ一つ言えることは


「また面倒な事が増えた。」


その後は順調に体育祭が進行していった。

チームは赤、白、黄色で各学年の1、2組が赤、3、4組が白、5、6組が黄色と分かれている。

そして今の得点は白と黄色が同一1位で赤が僅差で3位という接戦だったりする。


「黄色も白も強いね。」

「ね。3年の運動部の先輩達の熱の入れようがすごいんだって。」

「まぁ今年最後だしね。」

「次って障害物リレーだっけ?」

「えっとね。うん。って事は私いかないと」


タイムスケジュールを確認していた優ちゃんはそのまま参加者待機場所へ言ってしまった。


「深田。隣いい?」

「ん。いいよ。」


と言うより答える前に座ってたよね長山くん。


「あれ小林くんは一緒じゃないの?」

「あいつは次の障害物出るからさ。」

「あぁ小林くんもだったっけ。」

「そ。ってか深田、運動苦手って言ってた割には足速いだろ。」

「そう?ありがとう。」


自分ではそう思わないけど褒めてもらえるのはやっぱり嬉しい。


「ヤバイ。」

「は?」

「笑顔とか反則だろ。笑うとすっげえ可愛い。いやいつも可愛いけど。」

「なっっ」


可愛いとか・・・ないない。

照れて笑いながらこっち見ないで。

今、長山くんの顔見れない。

そんな私の耳に微かにスタートの合図のピストル音が聞こえた。


「なぁ深田。こっち見ろよ。」

「ちょっ・・今は無理。」


私がそう言うと代わりに長山くんが私に近づくのを感じる。


「じゃあこのままでいい。俺は深田の事が」


長山くんが喋る度に暖かい空気が左耳をくすぐる。

長山くんがそのまま言葉を続けようとした時。


「長山くん来て。」


優ちゃんが長山くんの手を掴むとそのまま引っ張ってゴールへ走り出した。

長山くんも訳が分からないまま走る。


「ゴール。田島さんが持ってきたカードに書かれたお題は金色。つまり・・・」

「長山くんの髪の色!!」

「俺の髪は金色に近い茶色だー。」


障害物の最後は借り物競走だったんだ。

それにしても・・・助かった。

あの雰囲気は無理だ。

思い出すだけで心臓がドキドキする。

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