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覇戒の龍神  作者: KB
一ノ欠片
6/13

確認

一人称と三人称が混在しててすいません。


※2017/6/11改稿

※一人称


 俺は、王宮の自室にある窓から外を眺めていた。

 その目に映る光景は、ゲームの時とは異なっている。

 1つの都市とそこから続く幾多もの道。

 それが、ゲーム時代の本拠地「ソール」の光景だった。

 だが、今俺の目に映っているのは俺が保有する禁忌の1つである『神の寝床』が発動していることを示す金色のベールに包まれた都市の姿と、幾多もの道があったはずの所が樹海によって覆い隠されているという光景。


 『神の寝床』。


 俺が保有する禁忌の中でもぶっちぎりで壊れている魔道具。番号は4番であり、割と最初の方に出てきたバランスブレイカーである。

 効果は、指定した場所へ入った登録者の不死化。

 如何なる攻撃も通さず、どのような異常も認めず、悪意も敵意も殺意すらも通さない金のベール。

 神の寝室にて一切の不埒な真似を許さない、神の安眠を守る薄き守護者。


 それによって守られたこの都市は、ゲーム時代の拠点防衛イベントにおいて無類の強さを誇っていた。

 なにしろ、相手の攻撃は通らないのにこっちの攻撃は通し放題なんだから、負ける要素が見当たらない。


 そんな守護者はゲーム時代、攻めて来る者がいなくなり、その効力を発揮しなくなって久しくなっていた。

 その守護者が再び金のベールとなり現れたということは、この「ソール」に悪意か敵意か殺意を持つ者が近くにいるという事。

 だというのに「ソール」に住まう者達に慌てる素振りは見えない。


 それもそうか。

 なにしろ「ソール」に住まう者は皆が兵士であり平民であるのだ。そんな者達が、過去、幾度となく自らを守ってくれた金色の輝きに、感謝はすれど慌てるなんて事がある訳が無いのだから。


 そんな考えを抱きながら、今後どう過ごすか計画を立てていると、ふと、部屋の外に気配を感じた。


「シェラか」


「はい」


 自分が命令を下していたNPCの1人が、部屋の前にて返事を返した。


「何の用だ」


「序列第1位フレンベルク以下、序列第13位のイリーナまで全ての者が帰還いたしました」


「そうか、今行こう」


「お供致します」


 ローブを羽織り部屋を出ると、長く艶やかな黒髪に、均整のとれたプロポーション、そんな体をメイド服に包み込んだ女が恭しく頭を下げているのが目に入った。


 シェラ。


 俺が手に入れたNPCの内の1人。

 序列は11位ではあるが、それはあくまでも彼女が人という種族を超えていないからに過ぎない。

 得意武器は短剣の二刀流。

 戦うメイドさんである。


「他の者は何処にいる」


「謁見の間にて主様をお待ちしております」


「そうか」


 俺はそう言って王城にある謁見の間へと向かうために廊下を歩いた。


 一週間前、突如としてこの世界に来た俺は、とりあえず状況を確認する事にした。

 初日で『神の寝床』を確認し、確実にゲームの中では無い事を悟った俺は、何か変わった事は無いか城内を捜索させ、城下町を調べさせ、最後には近隣の調査に部下を派遣した。

 シェラや他の全員が戻って来たという事はその調査が終わった、もしくわ一区切りがついたという事なのだろう。


 そうして歩いていると、謁見の間へと続く扉へと着いた。


「我らが王、オロチ様のご到着です」


 シェラがよく通る声とともにその扉を開いた。


 天井には絢爛と輝くシャンデリア、壁には2枚羽から6枚羽までの天使達の彫刻が埋め込まれてあり、王の来訪を祝福するかのように武器を掲げている。そして、地には赤く染まりながらもその歩みを妨げる事の無い美しい絨毯。その絨毯より外側、王の花道を踏む事が恐れ多いといった風に絨毯の切れ目に膝をついて頭を垂れているのは、12の臣下達。

 そんな者達を尻目に、絨毯の先、この国の王であり、彼らの主である俺だけが座る事を許された玉座に、俺は腰を下ろした。


「面を上げよ」


『はっ』


 11の声が綺麗に重なり全ての者が顔を上げる。

 シェラもその中に加わり片膝をついた。


「して、フレンベルクよ、此度は何の用があって戻って来た」


「はっ、この度、オロチ様より御下命頂いておりました城内及び城下町の確認、さらには周辺への調査、この2つが終わった事をここにご報告したく参りました」


 やはり、俺の考えていた通り調査が終わったようだった。


「聞こう」


「はっ、城内に関しましては、各部屋や空き部屋に異常は見られず、宝物庫付近に関しても魔道具の影響により立ち入り不可は変わらないままでありました」


「そうか」


「そして次の城下町に関してですが、我々直近の者達の配下が住んでいるという事と、全ての者が戦闘能力を有しているという2点のみならば確認が取れました」


「他にはないのか?」


「申し訳ございません、配下といえど、お情けでこの地に住む事を許された者達。気にも留めておりませんでした」


「シェラ、紅、お前達もか?」


 俺はそう言って紅色の髪をした少女とシェラに尋ねる。


「メイド達には何も問題はありません、主様」


 そう言ってシェラは片膝をつきながら頭を下げる。


「私から見ても何も異常は見受けられませんでした、オロチ様」


 そう言って自動人形(オートマタ)の少女も続いて頭を下げる。


「そうか、ならいいだろう」


 俺はそう言って再びフレンベルクの方を向いた。


 フレンベルク。


 俺のNPCの内の1人。

 序列は文句無しの1位。

 種族は真龍王という、竜達の頂に立つ存在である。

 得意武器は全て、得意魔法は全て。

 単体で、儀式もなしに詠唱のみで特級魔法を使える数少ない存在。


 俺はそんな奴の報告に耳を傾ける。

 フレンベルクは、俺の視線を受けて報告を続けた。


「最後に、この周辺の調査ですが……」


 そう言ってフレンベルクは言い淀んだ。


「何か問題でもあるのか? 特級の魔物でも現れたか?」


 それならば楽しくなりそうだ。

 特級なんて久しく相手にしていなかったからな。


「あっ、い、いえ! そのような事はありません、むしろ逆になります」


「逆?」


「はい。というのもここ『ソール』近郊には以前であれば、2級から3級程度の魔物が生息していました。しかし、今はどう見繕っても4級から5級程度の雑魚ばかり、1番強い魔物でも、3級のファミリーバードでした」


「ふ、ふふっ、あはははっ、ファミコンが1番強いだって? なんの冗談だそれは。速いだけの焼き鳥がボスだって? クソみたいな森じゃないか」


 俺は知っている。ファミリーバードと呼ばれる鳥が、家族で過ごす鷹という意味合いからファミコンと揶揄されているのを。

 俺は忘れていた。ファミコンが初心者(ルーキー)達の間では『音無死』なんて言う大層な呼び名で呼ばれていた事を。


「え、えぇ、ですから我々も何かの間違いだろうと隈なく捜索しましたが、どうもそれが事実だと認めなくてはならないようで」


「あのクソみたいな制度から解放されたと思ったら次はクソみたいな群生地に飛ばされたのか。ははっ、面白くもないな」


「全くです」


 俺はそう言って1番気になっていた事を聞いた。


「それで、体や魔法、魔道具に関してはどうだ?」


「それに関してはなんの問題もありませんでした。種族間でも異常の差は見られず、魔法・魔道具ともに禁忌以外は問題なく使えます、その禁忌も『神の寝床』や宝物庫の件がある以上は問題はないかと」


「そうか、問題なかったか」


 一先ずそれならば死ぬ事は無いし、万が一死んでもどうにでもなる。


 なら、さっさとこの世界を見て回るに限るだろうな。


「はい、蘇生アイテムに関しても問題なく使えました」


「それならばいい」


 それならばさらに好都合だ。


 俺はそう思いつつ立ち上がった。


「どうされました?」


「町や村といったものはあったのか?」


 これからの行動のために聞いておく。


「いえ、森を抜けきることができず、その外までは手が及びませんでした」


「そうか」


 俺はそう言って、徐ろに玉座の後ろにある両扉のガラス戸を開いた。


「見ろ、お前達」


 俺はそう言って、金色のベールで包まれたその先、雑魚ばかりの森で王者を気取っている鳥達の住処を指差す。


「この世界ではどうやら3級でも王になれるらしい、ヒエラルキーの中層に属する者が王を名乗るとは片腹痛い」


 俺はそう言って13の配下と、こちらを見上げる多くの民達に目を向ける。


「先ほどフレンベルクは町や村を見ていないと言ったな」


「申し訳ございません」


「いや、それ自体はいい。我らはこの地に来たばかりだ、いわば新参者。それならば新参らしく派手に挨拶をしようでは無いか」


 俺はそう言い手を上空にかざす。


「ヒエラルキーの中層にいる者が図にのるなよ。俺が、俺の最愛の家族たちが、奪われゆくのを座して待つだけの腰抜けだと思っているなら好都合だ。あの時から我ら『(りゅう)』は姿を変えた」


 そして、一節だけ詠唱する。


「【滅べ】「龍神の滅咆(ドラゴン・ノヴァ)」」



 バシュッ



 そう音を立てて、「ソール」を除いた半径50キロは悲鳴もなく消えた。


 俺は知っている。この魔法が自らが持つ特級魔法の中で1番弱く、消費の少ない魔法だという事を。

 俺は後々知った。この日、この地で起こった厄災が、後に「白銀の産声」と呼ばれるようになる事を。


「これで幾分か楽になっただろうがこんな雑魚ではつまらない。ようやく世界の全てが見れるんだ、禁忌を集めて神を狩ろうじゃないか」


 俺がそう言って振り返ると、26の眼差しが俺をしっかりと捉えていた。


『御意』


 そう言って、13の『蛇』が生まれた。


「斥候を放て、村や町に入り強者と禁忌の情報を集めろ」


「王の御命令のままに」


「あぁ、剣を向けてきたら躊躇いなく殺せ、害虫に用はない」


「はい」


「情報を吐かないやつも殺せ、役立たずにも用はない」


「はい」


「全てを捧げるものだけ見逃せ」


『はい、全ては偉大なる神の御心のままに』


 そうして俺は玉座から降りた。


「さぁ行くぞ、たった半分だ、半分しか見ていない。全ては俺が解き明かしてやる」


 俺の後に13の影が続いた。


「面白くないなら、面白くしよう。強者がいないなら己の手で作り出してしまおう。そして神に会いに行こう」


 俺はそうして部下達に命令する。


 これが全ての始まりとなる事を知らずに。


 神の言葉を聞くことのなかった俺は、それゆえ神に出会うためにこの地に降り立った。


「この世界の全てに俺たちの存在を知らしめろ。『ウロボロス』でやったように。全ての者の脳裏に刻め、そうして神に会いに行こう」


『全ては貴方様のもの。我等一同、その御心のままに』


 そうして俺は動き出した。


 神に出会うために。

会話文の間って空いてる方がいいんですかね?


後、「英雄の子」だけじゃなくてこっちもBMして貰えたらと思います。

オーバーロードと一緒じゃんとか言わないで下さいね。結構自覚してますんで。

俺、あの作品大好きなんですよね。

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