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覇戒の龍神  作者: KB
ハジマリ
4/13

異世界

ブックマーク登録ありがとうございます。


※2017/6/11改稿

※三人称

 2105年7月20日。

 この日に何があったかご存知だろうか?


 そう、最強最悪で名高いあのギルドが、他の者達から遅れて異界の地へと降り立った日である。


 61の欠片(ピース)を持って彼らが異世界へと降り立つ時、その世界の神はその地に住まう者達に神託をもたらした。


「54の魔道具と54の魔法。全てが揃いし時、神へと至る扉が現れる」


 ――と。


 108の欠片(ピース)を巡って世界は混沌とした争いに包まれる。


 その争いの中心にいるのは果たしてPC(プレイヤー)達か、それとも古くからその地で暮らす異界の民達か。


 世界は動き出す。


 良くも悪くも世界は変わる。


 その先に何があるのかは、神託を降した神ですら、視ることは叶わない。



♢♢♢♢♢



 明け方に始まった大戦も、日が沈み辺りは闇で包まれ始めた。


 ぽっかりと開けた戦場の中心で2人の男が相対していた。


「まさか君がここまで出てくるとはね、オロチ君」


 龍の文様の入った大剣を肩に担ぎ、整った顔立ちを苦しげに歪めながら言葉を発するのは、ギルド「聖騎士連合」のギルドマスターであるフーバ。


 対して、涼しげな顔で気負う事無く言葉を返すのは、


「そう言うな、お前の相手は弟妹達では荷が重いと思ってな」


 最強の名を冠するギルド「邪蛇」のギルドマスターであるオロチ。


 当初、フーバ達「聖騎士連合」の予定では、オロチの持つ13のNPC達を数十人のギルドメンバーで囲み各個撃破していき、最後にオロチと戦うつもりだったのだが、蓋を開けてみれば組織「柳」の者達からの横槍で満足に戦えず、挙句、敵を削りきること無く時間だけが過ぎていくというグダグダな展開へとなってしまっていた。

 そして、ついさっきオロチが放った魔法により、大半のギルドメンバーが戦闘不能へと陥り、急いで駆けつけてみれば、そのフーバの前で悠然と敵の大将が待ち構えているという予想外の展開へとなっていた。


「わざわざ、その為だけにここまで出てきたのかい? 君のお気に入りの椅子はこの場には無いんだよ?」


 挑発とも取れる言葉に、彼に付き従うNPC(人工AI)達から殺気が漏れる。


「止めておけ。そうだな、だが、この場を綺麗にしてしまえば、椅子ぐらい置けると思わないか? 竜殺し(・・・)殿」


 片手を上げて部下を制し、言葉を返す。


「それは嫌味かい? 神の名を冠する()よ」


「いやいや、そんな事はないさ」


 個人ランク1位と2位の会話。


 「聖騎士連合」の幹部であっても、「邪蛇」に所属するNPC達であっても会話に立ち入る事が出来ず、たった2人だけの空間がそこにはできていた。



 ギャリィィィン



 突如金属同士が擦れ合う音が聞こえた。


「チッ!!」


「おいおい、物騒だな。騎士様は礼儀も知らないのか」


 これは、びっくりした。と言った声音でありながらも、表情は微塵も変わること無く、フーバが振り下ろした大剣を片手で受け止めるオロチ。


「化け物が!! 君に礼儀を説かれたく無いね!」


 言うや否や、フーバは距離を取るように後ろに飛びながら周りにいる部下に声をかけた。


聖十二騎士(パラディン)達よ! NPCを抑えろっ!!!」


 聖騎士(パラディン)とは、騎士の隠し職業の事であり、「聖騎士連合」では12人いる幹部全てがこの職に就いている。


「「「「はっ!!」」」」


 12の騎士達が連携し13のNPC達を抑えにかかる。


「如何致しますか? オロチ様」


 NPC(人工AI)の1人、メイド服姿の女性に問われ、オロチは考える。


「ふむ、戦場において逐次投入は下策。なのであれば、初手から全力が当たり前か」


「では、そのように伝えても?」


「あぁ、初手から『禁忌』で行こう。なに、相手に防ぐ手段はないだろうさ」


「畏まりました」


 主人の声を聞き、メイドは恭しく一礼してから後ろを振り返り、他のNPC(人工AI)達にその旨を伝えた。


 そして両者が衝突する。

 方や騎士の誇りを胸に、方や主の命に忠実に。


 禁忌を発動する為に片方は魔法で弾幕を張る。

 もう一方はそれを防ぐように盾を片手に相手へ迫る。


 フーバ自身も自らが持つ唯一の『禁忌魔法』を発動しようとする。


「【飛べ紅の鳥よ、羽ばたけ尽きぬ焔よ、我全てを捧げて夜を照らす不死の鳥となる】禁忌魔法6番火魔法『不死鳥(フェニックス)』」


 自分の全てと引き替えに尽きぬことなき不死の鳥へと種族を変える『禁忌』の一つ。


 空が太陽が昇ってきたかのように明るくなった。


 炎が集まってくる。


 『禁忌』が世界を歪めていく。


 NPC達はそれを見て、不死の鳥に特級魔法を放つ。


「6番……か。欲しいな、何が見えるのだろうか」


 戦場にいながら、まるで自宅のリビングにいるかのような落ち着きぶり。

 オロチはこの場において誰よりも落ち着き、誰よりも戦況が見えていた。

 それ故彼は何もしなかった、否、何もする必要がなかった。


「オロチ様ッ!!!」


 NPCの1人が叫んだ。


「準備は出来たのか? ならば喰らうがいい」


「はいっ!!」


 闇妖精(ダークエルフ)の少女が笑顔と共に詠唱を始める。


「【光を喰らいて闇を呼び、炎喰らいて絶望を呼ぶ】禁忌魔法4番闇魔法『常闇』」


 光も炎もこの世に現存する全ての物を喰らう闇を暗黒をこの地に呼び出す『禁忌』の一つ。


 二つの『禁忌』が世界に現る。


 その時世界が歪に歪んだ。




 ギュル ギャャッッ バリッ キュルルルルルルッッ




 世界が光で包まれた。


 視覚と聴覚にある程度の制限を設けているはずのゲームで、視覚が潰れ頭が割れる程の音が鳴り響く。


「――――ッ!?」


 流石のオロチでも何が起こったのか理解できなかった。


「な……ん、だ? バグ、か?」


 効かない視覚と吐き気を催す音に、意識を保つので精一杯だった。


 ――『禁忌』の同時使用はお控え下さい。


 このゲームのホームページに小さく、本当に小さく、そう書かれていたのを思い出す。


「ふっ、ざ、けるなよ、ここまで、酷いなら……ッ! ……でっかく書けよ……」


 耐えきれなくなり、意識が朦朧とし始める。


「なら……結局大戦は、どう、なるんだか」


 口調が変わっているのにも気付かず独りごちる。


「弾かれたら、ログアウト、しておこう。明日もまた、仕事があるし……」


 翌日の事を考え憂鬱となりながら耐えていると、徐々に音が止み、目が見えるようになってきた。


「さて、ましになってきたぞ、ログアウトはどれだ?」


 そんな事を考えていると一際大きな音と共に光がオロチを襲った。



 パキンッ!! カッッッ!!!



「いっっつぅっ!?」


 目を瞑り、音に耐えるも意識がなくなるのが分かった。



♢♢♢♢♢



 しばらくして、意識を失っていたと分かったのは自分が何か硬い物に腰掛け眠っていると認識出来てきたからだ。


「んっ…」


 目を開けてみると、そこは自分のよく知る場所だった。


「謁見の間、か?」


 ギルド「邪蛇」のギルドホーム「ソール」。

 王城と城下町からなる都の王宮の中にある一つの部屋。

 部屋の主が威厳を持って客人を迎える場所。


 そこの玉座に腰掛け、肘掛に肘をつき、顔を覆うようにして眠っていた。


「お目覚めですか? 我らの王よ。ここは、貴方が統べるに相応しき世界です」


 謁見の間中央にて、片膝をつき頭を垂れているのは、自らが全てを注ぎ込んで集めたNPCの数々。


 理解が追いつかないながらも、一つ一つ確認するかのようにそれらの名を呼ぶ。


「フレンベルク」


「はっ」


「クレナイ」


「御前に」


「ミーヤ・カーヤ」


「「はい!!」」


「ユーミット」


「なんでしょうか? 我が主よ」


「ミルルーシュ」


「ここに」


「ガーヴァン」


「おうッ!」


「セバス」


「はい」


「ミルフェール」


「はぁい!」


「ウルージ」


「ハイ」


「シェラ」


「お側に」


「ロックガン」


「………ゴッ……」


「イリーナ」


「はぁ〜い♪」


 全ての名前を呼び、確認をするも理解ができない。


(俺は、あの時大戦の最中だったはずだぞ……どうなってる?)


 いくら考えようとも、何も分からず、目の前で頭を垂れる部下達を見る。


(視覚も聴覚も嗅覚もある、…………いや、むしろ現実と大差ないほどにあるんじゃないか?)


 ゲームではありえない状況、されどそれが現実。

 そう考え、肘掛にかけていた手を顔の前まで持って行き手を握る。


(触覚も……ある、ゲームでは仮装と現実の区別をつけるために、あっても衝撃のエフェクトぐらいだったはずだが)


 自分はどこか違う所に来てしまったのではないか、そんな考えが脳裏をよぎる。


(ははっ、いいじゃないか、違う世界? デスゲーム? どっちでも構わない。ようやく寝て起きてを繰り返す機会みたいな世界から自由になったんだ、ここが「インフィニティ・オンライン」の世界だって言うなら、残りの世界を見てみようじゃないか)


 自分の中でそのように考えをまとめ、部下達を見ていた視線を宙にやり、今一度見つめ声をかける。


「ここはどこだ?」


 ありきたり、何の捻りもない率直な質問。


 故に、帰ってくる答えも簡潔にして明瞭。


「新たなる世界にございます、我らの王よ」


「そうか……」


 答えと共に彼の心も決まった。


 これで最後のピースは出揃った。


 この時をもって、新たな時代の幕開けとなる。


 オロチがこの時何を考えていたのか、近い将来それがわかる時が来ることになる。

ふむ、前後書きは短文の方がすっきり読めますね。

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