世界統一政府
「この瞬間、世界は一つの政府によって管理されることになったのです」
万雷の拍手が、その一人の人物に向けられた。
世界統一政府が作られることになったのは、人類の急激な減少だった。
その理由を作ったのは、人類ではない。
どこから飛来したかわからない小惑星は、予測されていた軌道より内側を通った。
この軌道は、地球に直撃こそしないが、極めて大規模な地殻変動を引き起こすことが予想された。
月は、ほとんどその影響を受けないということで、その移住先に選ばれた。
どうして小惑星が軌道を突然に変えたかは、今をもってわかっていない。
ただ、その軌道のずれは、ほんの1度ほどであったということはわかっている。
月をかすめることなく、地球に異常な地殻変動を引き起こすことになったその小惑星は、人類を一つにまとめ上げる力があった。
月に移住した人は、その後、小惑星からの破片により、壊滅した。
生存者は、移住者の1パーセントもいないとされている。
一方、より遠くの火星へと移住をした者とは、連絡が取れない。
今のところ、初めに囚人を、次に移住希望者を、最後に公募によって選んだ人類たちを、日本皇国、欧州連盟、そして北米条約連合という3極によって派遣をした。
連絡がないことで、向こうがどうなっているのかはさっぱりわからない。
地球はというと、人口は約30万人にまで減った。
その中で、生き残った首脳陣や有力者たちが、どうにかして集まり、この統一政府の樹立を宣言した。
ただ、この政府の先は暗雲が立ち込めている。
そもそも、本当に30万人生き延びているかどうかは、まったく集計することができないからだ。
また、税収というのも当てにすることはできない。
今や、物々交換の時代へとさかのぼっているような、そんな感覚ですらある。
貨幣制度というのは、すでに過去の遺物として扱われている。
そんな世界だ。
だが、それでも、人類は生き延びている。
どんな状況であれ、生きている。