王子は策略者に泣く
王子たちのざまぁを書こうとしたら何故かこうなった‼
俺は、どこで人生を間違えたのだろうか。
異様に輝く冷たい月を見上げると、とたんに自分の置かれた立場に涙が伝う。
確かに、学園でアリア嬢に出会い彼女の愛を得た。
そして、親にあてがわれただけの愛情を持てない婚約者と婚約を破棄した時は最高に幸せだったように思う。
卒業式の後に開かれた記念パーティーで婚約者のカトレア嬢に婚約破棄を宣言したとき、彼女は一瞬、小さく微笑んでいた。
そんなに俺との婚約・結婚は嫌だったのだろうかと思った。
だが、彼女は俺や、彼女の弟のアルデリック候爵子息や宰相の子息などが話している途中に冷たい表情のまま立ち去った。
今、思えば他にいい方法もあったのではないかと思う。
カトレア嬢は、アリアを苛めてなどいなかった。
それどころか。貴族令嬢として申し分のない対応をしていた、らしい。
にも拘わらず、俺たちは彼女を公衆の面前で侮辱し、家族や親しい友人との縁すらも断ち切ってしまった。
後悔だけが残っている。
卒業記念パーティーの翌日、良い気分で、父へカトレア嬢との婚約を破棄しアリア嬢との結婚の話をした俺に父王は、王位継承権の放棄と臣籍降下を迫った。
何故。
疑問だけが残り、問うが父から言葉が返ってくることはなかった。
また、あれほど愛し愛されていると思っていたアリアは離れていった。
王太子でなければ価値がなかったのかもしれない。
王位継承権を放棄しバレンバーグ伯爵となり、外交の仕事に携わるようになった。
仕事にも慣れてきた頃、
「バレンバーグ伯爵、ガーディニア帝国の皇太子殿下がご成婚されることとなったそうです。大使としてガーディニア帝国へ赴いていただけますかな。」
外務大臣に呼び出されたは、使節団の大使として赴くことになった。
正直、隣国のしかも皇太子の結婚などめでたいとも、思えなかった。
式の数日前、皇太子夫妻に謁見する機会を得た俺は、精一杯愛想よく祝辞を述べる。
「楽にしてください。」
聞き覚えのある声に驚き、見ると、学園で同級生として過ごした、アレス・エルフォードと婚約者だったカトレア嬢がいた。
「なっ、どうし…て」
驚く俺に、苦笑しながら
「おどろかせてしまいましたか。私は、アレックス・エル・ガーディニアです。成人するまでは、王族として人前に出ず過ごす慣習から母方の姓を名乗っていました。まさか学友が祝いに来てくれるとは。大したもてなしはできませんが、どうぞごゆっくり。」
アレス-いや、アレックス殿下はエスコートしていたカトレア嬢を座らせると、お茶の用意を二人で始めた。
「どうぞ。お口に合いますかしら。」
カトレア嬢は優雅な仕草でお茶を勧めてくれる。
「ひとつお聞きしても。」
「答えられることなら何でも。」
俺の言葉にアレックス殿下が頷く。
「カトレア妃は、幸せですか。」
「ええ、殿下は、なにもないカトレアを必要と望んでくださいました。」
カトレア嬢は華のような笑顔でアレックス殿下を見る。
彼女を見る殿下の表情はどこまでも優しい。
学園でアレスと名乗っていた時のように。
大使館に戻ると、同行していたアルデリック侯爵子息が、
「伯爵、まさかあの女が隣国の皇太子妃など許されないでしょう。帰国しだい陛下や父に報告してアリアへの罪を明らかにすべきだ。。」
憎々しげに吐き捨てる。
それをみて俺は、彼が醜く見え、自分もまた、カトレア嬢にそう見えてたのだろうと知った。
旧友夫妻との懇談であの頃の自分が如何におかしかったか、カトレア嬢をきちんと見ることが出来ていれば彼女を傷つけることも、両親を悲しませることもなかったのだと受け入れることができた。
だが、彼は家族だったにも関わらず、彼女を見ることもせず、まだアリアの夢から醒めていない。
「アリアは私を愛してなどいなかった。カトレア妃も同様だ。だから、アリアは私が王族でなくなったら冷たくなり、姿を消した。カトレア嬢は、愚かだった私を見限ったがあの時までは婚約者として支えてくれていた。私がきちんとカトレア嬢を見ていれば、アリアに惑わされなければ穏やかな家庭を築けたのだ。」
今、わたしの心はとても穏やかで清々しい。
もし、愛を得る機会が有れば、今度はきっと旧友夫妻のようになりたいと、心から思った。
来月の試験とか私生活が忙しい事もあって、なかなか掲載できませんが、よろしくお付き合いくださいませ。
アレックス殿下サイドを書こうと思っています。
作者の中での策略者は彼です。
でも、作者の性格と文才の無さのせいか、小者くさいですが。
よろしくお願いいたします。