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第78話

 カランカランとカフェの扉が開く音がして、サリーを駅まで送って行ったチャーリーが戻って来た。そのままディノの前の椅子に腰かける。


「僕のこと信じてくれた?」


 チャーリーはにこにこしながらディノに目を向ける。対するディノは呆れたように溜息を一つ。


「随分と粗い仕事ですね。サリーさんが信じてくれたからいいようなものの、普通の人なら信じませんよ、そんな話」

「そうだね、普通の人は、ね」


 意味が解らないといったようにディノは眉根を寄せる。


「彼女の家はひどく貧乏だ。父親を早くに亡くし、母親は病弱。しかも六人兄弟で彼女は最年長。だから彼女は僕の話を信じざるを得なかった。ゼノン君に交換条件を持ちかけられたと仮定して、彼女が望んだものは十中八九お金だと思ったよ」

「……リサーチ済みだったんですか」

「当たり前でしょ」


 胸を張るチャーリーに、今度は先ほどと違った種類の溜息を一つ贈る。


「これで分かったね。やっぱりゼノン君は地下書庫でクロードの資料を読んで〝人魚の涙〟の詳細を入手していたんだ」


 サリーの話によると、ゼノンは地下書庫に足を運び、お金と交換に資料を無断で閲覧することを口止めしたらしい。これでゼノンが黒だということが確定した。しかも〝人魚の涙〟がどのような代物であるかを知った上で求めているとなると、彼の目的はセルバーンの独立の可能性が高い。


「父は、セルバーンの湖を調べてる団体が〝人魚〟と〝人魚の涙〟を探すためだと、とある伝手から仕入れ、それは確かな情報だと言っていました。それってチャーリーさんの情報ですよね?」

「さあ?」


 チャーリーは含み笑いながら、惚けてみせる。しかしディノは更に質問を重ねた。


「水の中に人魚を探すのは分かるんですけど、どうしてクロードの作品である〝人魚の涙〟まで水中にあると思ったんですかね?」

「十五年前、誰かが水色の宝石のようなものをミスティ湖に投げ入れたのを見たって人がいたらしいよ。それが〝人魚の涙〟だったのかは分からないけど、時期と場所がドンピシャだからね……。調査団も最初はミスティ湖を中心に調べてたみたいだけど全然見つからなくて、他の湖やセルバーン周辺の海まで範囲を広げたってわけらしい」


 チャーリーは言い終えると、やや前のめりになりながらディノをまじまじと見つめた。


「そんなことより僕が気になるのは、君がゴーガルテンのターゲットになっていたことだよ。君……何かした?」


 何かしたかと問われても、ディノには何の自覚もない。ゴーガルテンという組織を知ったのだって、ツバサから昨日の夜に電話で情報を貰ったからだ。


「ん……?」


 ディノから無意識に声が漏れた。それと同時に、焦燥がじわりじわりとディノの胸中を埋め尽くしていく。


「まさか――」


 ディノはハッとして口を噤んだ。


 ツバサの近くにゼノンに繋がる者がいる……!?

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