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第68話

 ツバサとモカの手当てを終え、カノン班は情報収集のために街に繰り出した。薄暗かったがリリアを連れ去った者の顔や雰囲気は憶えていた。それを頼りに街中の人に声をかける。聞き込みなんてそう簡単に成果を上げられるようなものではないと思っていたカノン班だが、嬉しい誤算があった。リリアを連れ去った連中のことを大抵の人間が知っていたのだ。


「バアル地区ってセルバーンで最も治安が悪いって言われてるのは知ってるかい? そいつらはさ、バアル地区でも有名なノエール反対派の過激連中さ」


 時計塔の前でツバサが声をかけた、買い物籠をぶら下げて三角巾を被った古風なおばあさんの話だ。


「セルバーンが敗戦後、ノエール領になったことに対して恨みを持っているということですよね? 過激というのは具体的にどういう……?」

「ノエール国のいいこと言ったり、今の社会が昔より良くなったと言ったりしている奴らを無差別にバットで殴ったり、時にはナイフで刺したりしてたんだよ! でも逃げ足が速くてねぇ……。未だに捕まえられずに野を駆け回ってるってわけさ。全く恐ろしいったらありゃしないよ」


 ツバサはおばあさんの話を聞いて、顎に手を当てる。


「彼らが人を傷つけるために使っていたのは、バットとナイフだけですか?」

「それだけあれば充分だろう!」


 何を物騒なことを言うんだこの子は、とでも言いたそうな目を向けられ、ツバサは慌てて両手を振った。


「いやそういう意味じゃなくて! 例えばスペルカード使うことってありませんでした?」


 おばあさんは眉を顰め、暫く考える様子を見せてから、首を横に振った。


「なかったと思うよ。そんな話聞いたことない。あんたも考えてみなさい! あんな連中がそんな高価なもの、手に入れられるわけないだろうよ!」


 その他にも色んな人に訊いてみたが、皆似たようなことしか答えなかった。リリアを連れ去った人物はスペルカードを入手できるような資金的余裕はなかったということ。しかしツバサが襲われた時、彼らは確かにそれを持っていた。それはつまり、どこかに彼らのパトロンがいるということだ。


 彼らの行方についても訊ねてみたが、目撃証言は一つも挙がってこなかった。夜中という時間のせいだろう。

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