第66話
エルイの言葉に、ゼノンの目がスッと細められる。
「その鑑定が終わるのはいつですか?」
「分かりません」
「その鑑定はどこで?」
「鑑定士の事務所で行っています」
「ということは今〝人魚の涙〟は議会にないと?」
「その通りです」
「その鑑定士に〝人魚の涙〟を持ち逃げされたらどうするんですか! 高額で売り飛ばされでもしたら、行方を掴むのは困難ですよ!?」
「そこは問題ありません。信頼のおける鑑定士に依頼していますし、監視役として私の知り合いを一人置いています。それに報酬も充分に払うと約束しています」
「その鑑定士の事務所はどこなんですか!?」
「それは言えません」
「何で!」
「ここで発表してどこかから情報が洩れ、鑑定士の事務所から〝人魚の涙〟が盗まれたら、それこそ元も子もないからです」
「――っ!!」
いつの間にか椅子から立ち上がっていたゼノンが、悔しそうに歯噛みする。怒りを鎮めるように両拳に力を込め、ゆっくりと椅子に腰を下ろす。
「……解りました。でも仕事に期限は付き物です。それは鑑定士であろうと変わらない。こちらはきちんと対価を支払っているんですよね? いつまでに回答をいただけるのか、その鑑定士に問い合わせて教えて下さい。僕はあまり詳しくありませんが、そもそも鑑定というのはそんなに時間がかかるものなんですか?」
「鑑定期間の相場は分かりませんが、手がかりや用途が分からない以上、本物かどうか鑑定するのは時間がかかるものなのだと思います。期限については問い合わせてみましょう」
「お願いします……」
苦々しい表情でゼノンが言い、その場に静寂が降りる。司会は議員たちを窺い、誰も発言する様子がないと判断すると、次に〝人魚の涙〟を公開すべきでない、という意見について訊ねたが、発言した者はいなかった。そのまま討議は終了した。




