第55話
『否定しないってことは俺の予想は当たっちゃってるってことか。まさか本当に人魚がいたとはね……。実は今回の任務、俺たちの班以外も、場所は違うけど、任務の内容は同じだったんだ』
「〝人魚狩り規制〟……、湖の監視だよな」
『そう。俺たちの班はドロマ地区の湖監視だったんだけど、今日そこに行ったら誰もいなくてさ。いつもは何だかんだで、拘束できなさそうな清掃活動装った白々しい団体とかいるんだけど、今日は人っ子一人いなかったんだ。他の班にも訊いてみたら、みんなそうだって言うからさ。明らかにおかしいだろ? それで思ったんだ。どこかで人魚を捕まえたから、奴らは姿を現さなくなったんじゃないかって』
「……で、残りのおれの班にも事情を聞こうと連絡してきたと」
『その通り! ツバサたちが任務与えられてるとしたら、それは非公式だってことでしょ? かなり怪しいじゃん。一つの班だけ別の動きをしているとすれば、それが本命でしょ。俺たちの班は囮ってことだね』
囮――それはそちらに目を向けさせるための罠。セルバーンはバアル地区から目を逸らせたかったのか……?
『ツバサの班にその任務与えたのって誰?』
「ボルドー教官」
『ボルドー教官!?』
ディノの驚きに眉を顰めるツバサ。次のディノの言葉を待つ。
『ボルドー教官ってセルバーンの出身なんだよ』
「!?」
通常各国がWGSに依頼できる内容は三つまで。今回はセルバーンから既に三つ受けている。ツバサたちに与えられた任務は非公式と言えど、WGS自体は承認していて、ただ公になると他国に言い訳が立たないからとか、そういう理由だけで公式から外れたものとなっているのだと思っていた。しかしボルドー教官がセルバーンと繋がりがあるとすると、WGSを通さず、個人的にセルバーンの依頼を受けた可能性がある。更には、セルバーンは四つ目の依頼などしておらず、ボルドー教官の独断でカノン班に任務と偽って依頼した可能性すらある。とすれば、正式にWGSに話が通っているのはディノたちの班を含む三つだけということも考えられる。
ラックと恐らくはダイスも険しい表情をするツバサを不思議そうに眺めていた。
「ディノの任務地ってドロマ地区だったよな?」
『そうだけど?』
「そこってさ、二日前〝人魚の涙〟って宝石見つかったよな?」
『ツバサよく知ってるね……ってそう! そのことも言いたかったんだ!』
ディノのこの反応。やはり、とツバサは思う。WGS生の着任日に〝人魚の涙〟が見つかった。人魚狩り規制が任務の内容だっただけに、偶然にしてはタイミングが良すぎると、ツバサの中で引っかかるものがあったのだ。




