第52話
気付いた時には空は白っぽく、既に夜は明けていた。
ツバサはミスティ湖に沿うように、苔が敷き詰められた陸地に横たわっていた。
全身水浸しで、体のあちこちが痛む。幸い、炎は剣のお陰で直撃は防げたようで、しかもすぐに湖に投げ込まれたお陰で、ひどい火傷も負っていないようだった。
首を横に傾けると、視界に心配そうな表情を浮かべるモカが映った。左半身が赤く腫れているところを見ると、ツバサが湖に飛ばされた後、連中と戦って殴られたのだろう。
モカはツバサの意識が戻ったことに気付き、嬉しさのあまりツバサの顔全体に両手を広げてくっ付いた。
「ほ、ほか、ひきへきはい(モ、モカ、息できない)」
モカが横にちょこんと降りてから、ツバサはゆっくりと上体を起こした。辺りは静かで、僅かに揺れる水の音しか聞こえない。
そこに、リリアはいなかった。
ツバサは唇を噛み、横に置かれていた剣を杖替わりに立ち上がった。そして、その剣をマライレットに向ける。
「オリオ」
剣とマライレットが光り、リングに引き寄せられるように剣が収納される。
早く教会に戻って、リリアが攫われたことをみんなに伝えなくてはならない。
それにしても、ミスティ湖に沈んだはずのツバサがどうやって陸地に上がってきたのか。その疑問を抱きながらも、ツバサは弱々しい体でできるだけ早く歩いた。




