第39話
《……何なのだ? これは》
ダイスと懐中電灯をガムテープでガッチリと固定し、透明のビニール袋を何重かにして包む。更にその袋と長いロープの端を固定。そこに百キロほどの鉛を付ける。
「いくらダイスさんがウォータープルーフとはいえ、さすがにずっと潜ってると心配じゃないですか」
にこやかに笑うツバサに、ダイスの体には悪寒が走る。
《ツバサ殿……? 何を言っているのだ?》
「折角生身の体じゃないんですから、これ以上の適任はいないと思いまして」
ツバサが先ほど閃いた案はこうだ。
ビニール袋に覆われたダイスが重りとともにミスティ湖に沈む。取り付けた懐中電灯の光で水中を照らし、カメラで撮影。後ほど上映会を行う。
この案を思いつき、一度街へ買い物に行き、今ほど戻ってきたのだ。
ダイスには画像再生機能が携わっている。辺りを暗くして、白い壁に映像を映し出せば完璧だ。
「――というわけですから、バッチリ水中撮影して来て下さいね」
ツバサは笑顔を見せ、次いで真顔でラックに目を向ける。
「それではラック先輩、宜しくお願いします」
「任せとけ!」
ラックはボルドー教官から貰ったスペルカードの内、一枚を取り出す。人差し指と中指の間に挟まれたカードは、補助魔法のそれだ。牙が鋭く、筋力が発達した二足歩行の野獣が描かれている。
「ディナミ パーウェ サクティ!」
スペルを唱えると、カードが赤い光に包まれた。カードに描かれた野獣のシルエットがほんの一瞬だけ宙に光で描かれたかと思うと、それはラックの体内に吸い込まれるように消えていった。同時にカードも消滅し、代わりにラックの体が赤い光に包まれる。
「じゃあ行くぞ!」
ラックは足元にある、百キロの重りを付けたダイスを軽々と持ち上げた。
《ララララック殿! おおおお主、やめ賜――》
ダイスの台詞が消えたのと、ラックが、ほらよっ、と言ったのはほぼ同時だった。
ダイスはマッハで湖に向かって放り投げられ、およそ中心で落下。ボチャンという音とともに勢いよく沈んでいった。湖には派手な水柱ができ上がる。
手元にあるロープが凄いスピードで湖へ吸い寄せられる。




