第32話
「ここ数ヶ月、リリアに付きまとっている人がいるらしいのです。その人物を実際に見てはいないそうなのですが、ずっと見られている気がすると話していました。特に危害を加えられてはいないらしいのですが……。本人は大丈夫と笑っていましたが、護衛をツバサさんたちにお願いしたことを考えると、やはり本人は相当怖かったのかもしれませんね」
リリアを監視している人物がいる……?
ツバサは顎に手を当て、眉根を寄せる。
「あら、もうこんな時間……」
マザーは食器棚の上に設置された時計に目をやり、ゆっくりと立ち上がる。そんなに遅い時間ではないが、シスターは翌朝に備えて就寝が早いのかもしれない。
「ごめんなさいね、お礼に紅茶を御馳走するはずが、話まで聞いてもらってしまって。引き留めてしまいましたね」
「いえ、マザーがセレティスさんをとても大切に思っていることがよく解りました。紅茶美味しかったです。ありがとうございました」
残りの紅茶を飲み干し、ティーカップをシンクまで持って行く。洗おうと思って腕を捲ると、マザーは優しく、私がやるからいいですよ、と微笑んだ。
「それよりツバサさん、先ほどティーナに新聞を見せてほしいと言っていましたね。食器棚の横にありますから、取っていって下さい」
食器棚の右側面に木でできたペーパーホルダーが付いていた。ツバサはそこに収まる新聞を取り、再度お礼を言って部屋を出た。




