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第3話
呆れを押し殺し、ツバサは目の前の男を足で蹴り飛ばしながら、カノンの方に体を捻る。
「今のこの状況、明らかにこっちの分が悪いよねー。それにラックンが言ったように、相手は異様に強い。片や、ボクたちの体力は減る一方。これらの戦況を考慮して導き出されるプランDはー……」
「プランDは……?」
ツバサはゴクリと唾を呑み込む。一拍置いてカノンは声高らかに自信をもって宣言した。
「てっしゅー!!」
「………………」
「なにボサッとしてんのー? さっさと逃げるよー」
カノンはハンドガンを数発発砲し、敵と距離を取ったその隙に一人でさっさと出口へ向かって疾駆してしまった。逃げ足が異様に速い。
「だと思ったぜ! ったく、ウチの隊長様は何でも強引なんだよ!」
ラックは毒づいてから、眼帯の男に向かってハルバードを大きく振り回す。そしてツバサに目を向けた。
「ツバサ、俺たちも行くぞ!」
「はい!」
左手フックの男に一撃を喰らわせたツバサは、ピクピクと体を痙攣させる敵を尻目に、ラックとともにカノンを追った。