第27話
カノンもラックも満腹となり、食事を終えるとすぐに部屋へ戻ってしまった。勿論ダイスも一緒である。
お世話になっている身であるため、ツバサだけは何もせずに部屋に戻ることが躊躇われ、自ら後片付けの役を買って出た。リリアには、別にいらないわよ! と追い出されそうになったが、マザーが、折角だから、と手伝わせてくれた。
腕を捲ったリリアが皿を洗い、水切り籠へ置く。その皿をツバサが取り、拭く。拭き終わった皿は取り敢えずテーブルの上に重ね、後でそれを食器棚の指定された場所へまとめて戻す。今ダイニングには二人しかいない。
「あ、あのさ、セレティスさんってずっとここで育ったの?」
水洗いの音しか響かない空間で、黙々とリリアの隣で皿拭きを続けることに耐えられず、ツバサは彼女に質問を投げかけた。会話をしていた方が、緊張が和らぐかもしれないという思いもあった。
「そんなこと訊いてどうするのよ」
「どうって……、別にどうもしないけど……。ただ気になっただけというか……。訊いちゃマズかった?」
ツバサは彼女の強気な態度に若干気圧されながら、作り笑いを浮かべる。リリアは鋭い視線をツバサに突き刺すと、再び目の前の皿洗いに視線を戻した。
「……わたし、両親いないの」
水がジャーッと流れる音だけがツバサの耳に木霊する。ぽつりと寂しそうに吐き出された言葉は、いつものリリアからは想像もつかないほど弱々しく、しかし僅かに熱を帯びているように思えた。




