第24話
暫くしてリリアが夕食の用意が整ったからと伝えに来た。カノン班は部屋を出て、反対側の扉から中へ入る。
左側にシンクやコンロ、中央に長方形の木製のテーブル、右側に小さな食器棚が配置されていた。食器棚の奥、部屋の正面にそれぞれ扉が付いている。
テーブルの上には三つセットの細長い蝋燭が二つ置かれており、中央には背の低い花瓶に活けられた青い花があった。
部屋は火を扱っていたからか暖かく、テーブルに用意されたシチューのいい匂いが漂っている。にんじん、じゃがいも、たまねぎ、ブロッコリーなど野菜が沢山入ったホワイトシチューと、拳ほどの大きさの丸いパンが複数、それぞれ白い皿に盛られていた。
カノン班は食事が用意されている前の席に腰かける。ダイスは勿論食べないため、テーブルの上で大人しくしているだけだ。
テーブルにはティーナともう一人、見たことのないシスターが座っていた。最奥のお誕生日席に座っていて、ツバサの正面となる。皺の入った優しそうなおばあさんで、胸元にはティーナと同じく十字架のネックレスがぶら下がっている。そのおばあさんが、ゆっくりと口を開く。
「皆さん、ようこそいらっしゃいました。わたくしはマザー・シュトラスと申します。この度はリリアの護衛ということで皆さんには遠方より足を運んでいただき、誠に感謝しております。何かありましたら、どうぞご遠慮なさらず、何でもご相談下さい。わたくしどもにできることでしたら、最大限協力させていただきます」
穏やかな物言いに、カノン班は会釈をする。
「それではお祈りを致します」
マザーは食事の前の祈りを捧げ、その間一同は手を合わせ、瞳を閉じた。
「――アーメン」
漸く食事にありつける。ツバサは手前にあったスプーンを手に取り、早速シチューを掬う。まろやかな液体が口の中を滑り、喉へ抜けていく。リリアが夕食作りに携わっているかもしれないと思うと、余計美味しく感じ、自然とツバサの顔はほころんだ。
幸せに浸りながら食事をしていると、すぐに頭に何かが刺さる痛みが走った。
「いって!」
モカである。そういえば、モカの主食は冷凍して持って来ていたのだが、すっかり忘れてしまっていた。脳天に爪を立てて自己主張したかと思うと、テーブルの上に降りてきてシチューをじっと見つめ始める。
「どうかしました?」
ティーナに訊かれ、苦笑を滲ませるツバサ。
「い、いえ……。あの、もしよければもう一枚シチューのお皿いただけますか?」
ティーナはモカを見てツバサのお願いを理解したようで、可愛いわね、と言って皿を用意してくれた。そこには鍋からよそったシチューも入れてくれている。
モカは行儀よく桃色の舌で美味しそうにピチャピチャとシチューを堪能し始めた。いつもの主食と違うが、今回は何も言わずに黙々と食している。
おれが作ったものは食べられなくて、美人が作ったものなら食べられるってか?
必死にシチューを飲み下すモカを横目で睨みながら、ツバサは軽く息を吐いた。
「リリア、そういえばあなた、あのこと知ってる?」
ティーナが思い出したように顔を上げ、正面に座るリリアに目を向ける。その発言にリリアだけでなく、ツバサの食事の手も止まった。カノンとラックは気にする様子もなく、ガツガツと食べ続けている。




