第19話
セルバーンに着陸し、キャンパス・シップは約一ヶ月間この地に滞在する。
ツバサたちカノン班は私服でセルバーンの南側から入国した。特に手続きはない。待機している入国審査官にWGSの学生証を見せればそれで終わりだ。
「付いて来て」
カノン班は初めての土地でリリアの背中を追うしかない。彼女は、動きやすそうなハイカットスニーカー、白い太腿が露わになるほど短いショートジーンズ、オフホワイトのTシャツ、その上になぜだが紺色のフード付ケープを纏うという出で立ちをしていた。
寒くないのか? とツバサはリリアの格好を見ながら思う。ここは北西に位置するからか、夏だというのに少し肌寒い。
入国してすぐの場所は、灰色の石畳に広がるバスターミナル。様々な方面へバスが出ているようだ。
本来であれば、まず中央に位置するケントロ地区へ向かい、セルバーンのプレジデントに挨拶をするところだが、極秘任務という特殊な扱いから、カノン班は直接バアル地区へ向かう。
バアル地区行のターミナルを探して乗る。臙脂色のバスだった。
車内には誰もいない。自由時間を与えられているWGSの生徒たちが向かうのは、華やかな中心部。最初からバアル地区などという何があるかも分からない場所へ行くのは、カノン班くらいのものだ。
しかも需要の少ないバスは何本も出ていない。出発までに二時間ほど待ち、それから漸く臙脂色のバスが動き始めた。結局その間に乗って来た者はゼロ。
バスに揺られながら、窓の外を見つめる。水が多い場所だと聞いていたのに、最初のうちは水はどこにもなく、ただ灰色の石畳をブロロロロという何の変哲もない音を立てて進んでいるだけだった。だが暫く走っていると、日光に反射してきらきらと光る水が視界に映るようになった。
幅広の水路が道の両側に設置されており、道から建物の入口へは簡易な橋が架けられている。ガーデニングの文化があるのか、住宅街を通った際は、赤や黄色、白などの花々が各家々の庭に咲き誇っていた。
バスの心地良い揺れが眠りを誘い、ツバサは知らず知らずの内に目を閉じていた。




