第13話
「俺たちに任務!?」
ラックは若干動揺しつつも、有り得ないと言わんばかりに言葉を紡ぐ。しかし、ボルドー教官の顔に笑みは見られない。一言でラックに返答する。
「そうだ」
ツバサは唾液を喉の奥へ流し込み、ボルドー教官を真っ直ぐに見据える。
わざわざボルドー教官が冗談を言うためにカノン班を集めるはずがない。となると、彼の言っていることは本当。しかし、意図が解らない。
「任務の内容はー?」
カノンが机に座ったまま問いかける。ボルドー教官は特にそのことを注意することはなかった。彼はカノンを一瞥し、その場の全員に向かって話を進める。
「内容の前にまず伝えることがある。この任務は極秘扱いの特別任務だ。学園内外を問わず、誰かに悟られることは決して許されない。そこを今すぐ理解しろ」
特別任務?
ツバサは眉を顰め、首を傾げる。
「任務はセルバーンに到着後開始される。内容はセルバーンに存在する〝ある物〟を持ち帰ることだ」
ボルドー教官が教卓の右下にあるボタンを押した。すると蛍光灯の光が消え、デジ板にセルバーンの地形と詳細が映し出された。街は外部モンスターの侵入を防ぐため、クリアウォールという名の半透明な壁に囲まれている。街への入口は東西南北の四カ所。北と西は海に面しているため、船での受付となる。どちらかといえば東西に長い形状だ。
「〝ある物〟はバアル地区にあるミスティ湖に存在するとされる」
ボルドー教官が白く細い棒で、デジ板の左側を示す。セルバーンの中心から北北西、海側である。
「そこに沈んでる物を取って来い」
まるで放ったボールを犬に取りに行かせるような調子で言うボルドー教官に何も思わないでもないが、ツバサはそこに言及することもなく、ゆっくりと右手を上げた。ボルドー教官の鋭い視線がツバサに刺さる。
「その〝ある物〟とは一体……?」
折角恐ろしいボルドー教官に勇気を振り絞って質問してみたというのに、彼から返ってきた回答はツバサの予想だにしないものだった。
「さあな」