地平線のクオリア
「──ほら、地平線・・・綺麗でしょ」
目の前の彼女は振り向き様に、得意気に笑って見せる。 そんな笑顔の彼女に僕も嬉しくなる。最近の彼女は、いつも悲しい顔をしておりなかなか笑顔を見せてくれなかったのだ
「この景色、一度見せてあげたかったんだ。二人で来れて嬉しいなぁ」
僕もそうだ。彼女と共にこの場所に来て、この景色の美しさを共有する。こんなに素晴らしい事は無いだろう
しばしその美しさに見とれていると、突然彼女の表情が曇ってしまった。あんなに楽しそうだったのに、どうしたのだろう。
戸惑う僕を尻目に彼女は言葉を紡ぎ始める
「──私がここに君を連れてきたのには理由があるの。■■に君と話がしたくて」
あれ、おかしいな。今 一瞬彼女の声にノイズがかかったような?それに、頭が痛い
「私は・・・正直まだ信じられない、君と■■れだなんて」
なんだ?痛い。頭が、痛い。チリチリと痛むこの感覚が生々しくて、気分が悪くなる
「だから今まで逃げてきた。これは何かの間違いなんだって、■■■■■■の君を見て、自分にそう言い聞かせた」
あぁ、痛い。ノイズが走る度、脳が溶けるかのように痛み、時折デジャヴ。その繰り返しに 気がおかしくなってしまいそうだ。
「私はいつからか本当に君が■■■いるんだって。そう思い込んで自分を支えていたんだ」
やめろ、やめてくれ。僕自身が告げられるであろう事実を拒んでいる。受け入れ難き真実を拒絶している
「──でもね、もう大丈夫だよ」
やめてくれ。もう限界だ、言わないでくれ。嫌だ、聞きたくな──
「私は、君の死を受け入れる」
──あぁ、言ってしまった。なんとなく分かってはいた。でも、言わないで欲しかったな。君が受け入れ、僕がそれに納得してしまったらお終いだ。未練が、無くなってしまうから
「私は を忘れ い。君の まで頑 って生き から。心 な で、安 して眠っ ね」
彼女は白い粉のようなモノを風にのせる。
少しづつ意識が遠のいていくような気がした。まだ話したい事もある。彼女を色んな所に連れていってやって、たくさんの思い出も作りたい。何より彼女の笑顔を もっと近くで見ていたい。
でも、それは過ぎた願い。立ち去る彼女の背中に憂いを感じさせる地平線のクオリア。
『私は君を忘れない。君の分まで頑張って生きるから。心配しないで、
安心して眠ってね』
僕の意識は風と共に消えていく。
地平線のクオリア 完
初めまして!波楼七色と申します。地平線のクオリア、お手にとって頂き、ありがとうございます!!
この作品は中学の頃に考えたものでして、友人に見せたところ「良かったよ」「また書いたら読ませてよ!」と、言われ 小説を書くきっかけとなった作品です。今見てみると、改行やらシーンが微妙だったりしますが初心忘れるべからずと言うことで、真っ先に投稿させて頂きました。
今同時に3作品書いていますので、よろしければまた私の作品を手に取って頂けると嬉しいです!!