地上の城にいる、王女様。
「どうして許可が出たの?」
「まあ、色々あるのさ。気にするでない」
お爺ちゃんに何度訊いても、答えは変わらない。
どうして気にしてはいけないのだろうか?
「お爺ちゃん、何かあったの?」
お爺ちゃんは肩をピクンと跳ねらせた。
やはり、何かあったんだ。
「ねぇお爺ちゃん、教えてよ。何があったの?」
「これはお告げなのじゃよ。女神様はレイを選んで下さったのだ」
女神様が、僕を選んだ?
意味がわからない。
「ねぇそれ、どういうこと?」
僕はお爺ちゃんに訊いてみた。
だがお爺ちゃんは、答えようとしてくれない。
「お爺ちゃん!」
一体、この地下世界で何が起きたんだ。
その後、僕とサイ、それから数名が地上へ行くエレベーターに乗った。
全員訳がわからないまま、地上へと足を踏み入れることとなった。
エレベーターで最上階まで来た。
奥には大きな扉があり、その前には人がいた。
身長は170ほどあり、男のようだが、小柄でいて黒いマントを頭から被っている。
「シオン様、あとは宜しくお願い致します」
シオンと呼ばれた人は、コクッと頷いた。
そして、僕たちに向き直り口を開いた。
「我が名はシオン。これからそなたたちを城へと案内する」
城?
「あ、あの!城って何のことですか?」
シオンと名乗った人は、僕に視線を向けた。
「我等の城、シルバームーンは地上世界にある国の一つだ」
シルバームーン。
僕たちが連れて行かれるのは、そこのようだ。
シオンと話していると、奥にあった扉が開いた。
「おや、あなたは?」
どうやらシオンは、扉の向こう側にいた人を知らないみたいだ。
向こう側にいた人物は、僕たちの方へ向くと近付いて来た。
「車を用意しました。すぐに城へ向かいましょう」
「ちょっと待て!道案内はこのシオンが!」
シオンの声を遮るように、話しを続けた。
「姫様がお待ちです。お早くお願い致します」
そう言って男は、僕たちを車に乗せた。
数十分経ち、やっと城と言う場所へ着いた。
「ここが、シルバームーン…」
塀と言われる大きな物に囲まれ、その中は無駄に広い庭と言われる世界が広がっていた。
「うわあぁ~!」
見たことも無い世界に魅了され、僕たちは歩き続ける。
建物の中へと入った。
建物内も無駄に広いと思った。
いや、今まで狭い世界にいたのだから、そう思うのは普通のことか。
案内された部屋へと入る。
そこには、地上ではドレスと言われるキレイな服を身に纏っていた。
僕たちは呆然とする。
「王女様、姫様はどちらに?」
「ああ、申し訳ありません。プリンセスは外せぬ用事が出来てしまいまして、席を外しておりますの」
姫様が外せない用事?
僕たちはどうなるんだ?
「作用でございましたか。では、確かに連れて参りましたので、わたくしはこれにて失礼」
そう言って、シオンともう一人の男は姿を消した。
「何だったんだ?」
僕がそう呟くと、王女様はふふっと笑った。
「色々なことの連続ですみませんね。全く、セレナはどこへ行ったんだか…」
セレナ、それがきっと姫の名前だろう。
「なぜ人間がここにいるのだ!?」
大声を出して、豪華な服を纏う男が顔を出した。
「あ、あなた!違うのよ、落ち着いて!」
「何が違うんだ!?こやつらは人間じゃあないか!!」
必死になって王女様は、男の怒りを沈めようとしている。
「外まで響いてるわ、もうやめなさい」
優しい口調でそう言ったのは、誰だ?
この時はまだ、声がするだけで、姿が見えなかった。