僕のいる世界。
僕がいるこの世界には、ほとんど人間の姿などない。
時人に捕まれば、命は無い。
「時人は人間の敵」
いつもそう聞かされて僕は育った。
地上という世界を知らないまま。
大昔、時人と人間の間で大戦争が行われた。
その結果、勝者は時人だったらしい。
時人に負けた人間は、地上に出ることを許されなくなった。
地上の世界には時人が住み、人間は深く狭い地下の世界に住むようになった。
無断で地上に出た人間は、即射殺されたと聞いた。
僕は、そんな地上を知らない。
青い空が永遠と広がり、光が溢れていたと聞いた。
いつもそんな地上の話をしてくれるのが、僕のお爺ちゃんだ。
子供が週に一度だけ集まっては、出ることを許されない地上の話を聞いていた。
僕は毎日、お爺ちゃんから聞いていた。
集まらない日は、僕がお爺ちゃんから聞いた話をみんなに聞かせるんだ。
それが日常茶飯事となっていた。
「レイ!地上へ行こうぜ!」
地上のことしか考えないサイ。
この男はいつもそう言って来る。
「はあぁー。サイ、いつも言ってるだろ。地上へは行っちゃいけないんだ。」
最近は毎日言って来るので、飽き飽きしている。
「爺さんがいいって言ってくれたんだ!」
「お爺ちゃんはそんなこと言わないよ」
地上の話はしてくれるが、行くことは絶対に許されないことだ。
だからお爺ちゃんがそんなこと、言うはずなかったんだ。
少し前までは。
「でも、本当に言ったんだよ!な、行こうぜ!」
こいつはいつまでそんなことを言っているんだか。
「言ったのは事実じゃよ、レイ」
「あ、お爺ちゃん!」