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アナタは異世界で何をする?  作者: 鉄 桜
第一章・幼年期から青年期まで。
9/64

第3話・小話

途中挿入投稿。

魔法の授業編です。イングバルドとアオイのマンツーマン授業。

忘れた頃に読み返してみると一話が一年毎に進むので大雑把に過ぎると思い物語の補強に投稿なりなり。なり?

この程度でどれくらい物語に厚みを追加できるか甚だ疑問ですけどねっ。


 


 


 これはアオイが7歳になり暫く経った頃のお話し。

 その日のアオイは施設の一室で母イングバルドの魔法講義を受けていた。


「それじゃあ始める前に少しだけ確認するけど、アオイちゃんは魔法について知識はあるのよね?」


 黒スカートに白ブラウス、黒パンプスというスーツ姿のイングバルドがレトロな黒板を背にアオイへ細渕の伊達メガネをくいっと指で持ち上げながら話し始めた。


「それなり、かな。アーフに聞きながらそこそこ基本を覚えた後は興味のある部分を中心に、って。全部独学だから所々が抜け落ちてるかも」


 こちらもレトロな机と椅子に座ったアオイの服装はいつもの如く白い民族衣装風なのだが、その胸に『一年一組あおい・るめるしえ』という名札を下げている。付けている本人はとても、とてもとても嫌がっていた。


「そこそこ?へえ(アーフが教えたなら基礎は十分って事よね)……なるほど、まだ年齢的にはあれだけど一応は基礎部分ができてるわけだ。ふーん」


 視線が痒い。痛いではなく痒い。イングバルドのジトッとした目にイヤな予感がしつつもアオイは躊躇うように内心でタメ息をつく。


「……なにさ?」

「べぇつぅにぃ?一番に魔法教えるのはママだったのに、なんて思ってないわよぉ?召喚術とかいきなり危ない事するなんて呆れてもいないわよぉ?」

「もうそれって色々ブッチャけてるようなものじゃないかなあ……」

「あれ?なにか、言ったかしら?」

「イエ、何モ言ッテマセンヨ?」


 拗ねていたはずのイングバルドが据わった目でぎょろり、残念ながらアオイに逆らう気概などなかった。答える声もふるふると震えていた。


「さてと、冗談はここまでにして講義に入るわよ。準備はいい?」

「大丈夫!バッチ来いだよ!」

「ばっち?まあいいわ。とは言えいきなり実践なんて危ないから最初は座学ばかりだから気を負わなくてもいいわ。ただし基礎は大事だからここを疎かにすると後々響いてくるから真面目に聞いて覚えてね。わかった?」

「はーい!」


 魔法などなかった元地球人のアオイは魔法というファンタジー技術を前にキラキラと目を輝かせている。ついこの前召喚術を無断で行使してしまいイングバルドにシコタマ怒られた事は遠い記憶の彼方へ押しやられているようだ。

 教える側としてはやる気が溢れてるのはいい事なのだがイングバルドは仕方ないなぁと呆れるとともに小さく笑ってしまう。


「返事だけはいいのよねえ。この前の召喚契約もそうだけど腕白というか好奇心が旺盛というか、本当に誰に似たのかしら」

「母さんと父さんを足して二で割ったからこうなったんじゃ」

「なぁにぃ?何か、言ったかしら?」

「サー!早く魔法を教えて欲しいなって言いました!サー!」

「さー?いえ気にしたら負けね。そう、そんなに教えて欲しかったのね」

「そうそう!あは、あははは……はあ」


 相変わらず一言多いアオイは性懲りもなくイングバルドに威圧されて別の話題に即時転換した。威圧による恐怖からかアオイの背中は冷や汗がダラダラだ。

 そうして始まったイングバルドの“魔法講義~~基礎編~~”をアオイは切り替えた思考と気分と好奇心から楽しそうに学んでいく。


「魔法とは魔法師がマナを体内で変換した魔力を世界に捧げる事で一時的に世界の理を歪めて異なる現象を発現する技術。簡単に言うと魔力を代償に火を熾したり水を生み出したりするのね」


 もっと細かく言うなら、とイングバルドは前置きして黒板に手を置くと文字が浮かび上がりスラスラと表示されていく。

 一般的に魔法とは周囲に満ちるマナを魔力へ変換して術式を構築して世界を改竄し介入する技術である。魔力を代償に世界の理を歪めて火や水などを作り出し奇跡を具現化する魔法師は様々な方法で魔法技術を行使する。極一部とは言え世界の改変を可能とする技術は使い方次第では絶大な効果を発揮する存在だ。

 魔法技術、その用途は幅広く農業や工業、医療など現代社会の奥深くに根付いている。


「ここまで話したけど魔法の属性と発動方法について、わかる所まででいいからアオイちゃん説明してみて」

「はい。魔法には基本の火、水、風、土と上位の雷、光、闇からなる七つの属性があってそれぞれに特色がある。ただし基礎魔法には純粋魔法と呼ばれる無属性もあり、こちらはどの性質にも属する事はない。この純粋魔法が属性に数えられない理由は色々あるけど魔法の発動において魔力の使用効率が悪い事が一番に挙がる」


 イングバルドは何も言わずに黙って聞いている。間違いはない証拠と考えアオイは続けて説明に入った。


「次に魔法の発動方法は言霊を媒体にする詠唱魔法スペルキャウト・マギア、魔法処理された紙や羊皮紙に一定の魔力を流しながら書き込んだ呪符魔法(スクロール・マギア)、武具や器物に対して文様と魔法文字を刻み込み永続的に効果を発揮する付与魔法(エンチャント・マギア)の三つが代表的。ただもう一つ固有魔法(ユニーク・マギア)、または固有技能(ユニーク・スキル)と呼ばれるものがあるけどこちらは種族などの先天的なものを言うので後天的なものは先の三つに分類される事がある」


 ここまで説明して一息吐いた。イングバルドが確認するように黙考している。

 わからないところはアーフに教わりながら学んできたのだから全部が独学だ。先程もアオイが言ったように所々で抜け落ちている知識があっても不思議ではないので不安にもなってくる。

 イヤーンな沈黙から数秒、イングバルドは一転してにっこり笑った。アオイも安堵の表情だ。


「はい。よく勉強してるじゃない、大変いい事よ。ママも鼻が高いわ。アオイちゃんが説明してくれた通りに魔法師の魔法は七つの属性魔法と純粋魔法を幾つかの発動方法で行使するわ。一番普及してるのは詠唱魔法ね。自分だけの言霊を媒体にして魔力を世界に捧げて干渉して現象と成す。熟練者になればたった一音だけでも発動可能よ。同時並列思考が使えるなら複数の音で魔法を連続で行使できるわね」

「はい、質問!」


 ビシッと綺麗に手を挙げた。まだ説明の途中だったが我慢ができなかったようだ。表情も一層キラキラと輝いているから尚更だ。


「なにかしら?アオイちゃん」

「連続で行使って?複数の魔法術式を構築して一度に詠唱するって事?」

「それは少し違うわね。正しくは脳内で複数の術式を並行処理して待機状態にするの。そうしてから発動音をもって解凍して発動させるのよ。例えば第一音で火の魔法(フォティア・マギア)、第二音で風の魔法(アネモス・マギア)、第三音で水の魔法(ネロ・マギア)って感じね」

「へえ。なんか歌みたいだね」


 そう言うとアオイは『ラーララー♪』と生前にカラオケで歌っていた人気歌手のサビ部分を口にした。イングバルドはそれを聞いておかしそうにしている。


「あら、その考えは間違ってないわよ。ちょっと古い話しになるのだけど本来の魔法は儀式的意味合いが強いの。今でこそ人間族やエルフ族など多くの種族が魔法を使えているけどそれは純マナ存在の精霊が世界と魔法師の間を仲介してるから世界を改変できるのよ。私たち長命種は仲介とか媒介とかそんな事できないけどね」


 あと竜族も純マナ存在だけどあれは力一辺倒だから今はいいわ、とイングバルド。アオイの頭の上にクエッションマークが三つほど浮かんでいた。


「はあ。なんかいきなり大きな話しになった気がするなあ」

「そんな事ないわよ。歌う事で世界にマナを満たし続ける精霊やママたち長命種なんかの古い種族が行使する魔法は世界のマナの流れを整えたり生活に役立ったりする身近なものが多いもの」


 まあ攻撃にも使える事は否定しないけどねと小さい声で最後に残したのをアオイは聞き逃した。誰だってハルマゲドンは勘弁して欲しいものだ。


「身近なもの、か。確かにあると便利だよね。俺もシーちゃんとクーちゃんとどろんこになるまで遊んだ時はよく使ってたからわかるかも」


 服や身体に付いた泥や汚れを水の魔法で洗い落として火と風の魔法で乾かして綺麗にしていたアオイには魔法をとても身近に感じていた。


「そうよ、その事もあったわ。本当ならアオイちゃんの歳で魔法行使する事は危険だから本当ならやめてほしいのよね。召喚術の件もそうだしまだまだお説教したいくらいよ」

「うぐっ。あれは本当にゴメンてば。もう無茶はしない……と思うよ?」

「もう、そこで疑問系だから不安になるってわかってる?ママもパパもとっても心配したのよ?」

「あははは……」


 笑って誤魔化す事しかできない。今世において興味の向くままに突き進む事が多くなったアオイには耳に痛い言葉だった。


「まあそれは休憩中にでもお話しするからいいわ。」

「うぇーい……」

「そもそもだけど魔力って何かしら?魔法ってどういうもの?魔法師って?」

「え?え?え?」


 イングバルドは本格的に説明を始めた。アオイは戸惑いを見せるが今までは必要事項を確認していたに過ぎない。ここからが本番だ。


「魔力には大きく分けて正の性質を持つマナと負の性質を持つカルマナの二種類があるわ。この二つの性質は正反対だけどどちらも生命エネルギーそのものなの。多くの生き物はこの二つを内包してるわね」


 正の性質を持つマナだけで存在するものを純マナ存在と呼ばれており、これは精霊を筆頭に竜族が挙げられる。逆に負の性質を持つカルマナだけで存在するものは純カルマナ存在として魔族を筆頭に邪精霊や一部の邪竜とカルマナに汚染された動物が変異した多くの魔物(不死族や魔獣など)が挙げられる。

 魔力とはマナ、カルマナを体内で魔力に変換したものを言うのだ。


「魔法とは魔力を代償にして世界に干渉し歪める事で術者のイメージを具現化する技術よ。車で例えるなら魔法が動力炉で魔力は燃料ね。発生した現象は速度や馬力として考えればいいわ」


 かっ飛ばせアース大陸最速世界一!とハンドルを切るジェスチャーでイングバルドが楽しそうに言い切った。アオイの『なぜに車で?』という言葉は当然の如く流された。因みにイングバルドのいう車とは長命種脅威の科学力で作られた地面から数十cmほど浮かんだ宙に浮く車の事だ。

 魔法に使用される魔力は元となったマナかカルマナで性質が異なる。湖に例えるならマナは澄んだ綺麗な湖で生物も多く穏やかなもの、カルマナは工業汚染されたドブのようにドロドロと濁ったものと考えればいい。

 マナとカルマナ。正負の方向性はあるものの術式を構築して魔法として発生する現象の過程は同様のものだ。違うのは燃料(魔力)の元が違うだけなのだが、それでも一部では優劣は存在するのも事実であり、攻撃的な魔法では負の性質を持つカルマナのほうが威力も強く効果も高い。だからこそ魔に属する者達は総じて高い攻撃力と生命力、そして凶暴性を有しているから古より様々な種族の脅威になっているのだ。

 話しが逸れた。


「そして魔法師とはマナを代償に世界を一部改変する事を可能とする術者の事ね。ただし一言で世界を改変すると言っても文字通りに直接改変する事ができるのは古い種族だけで今では精霊やママたち長命種くらいね」


 種として誕生した瞬間から本能的に魔法の理や真理を解するものである古い種族は直接世界に働きかける事が可能ということだ。何もない指先に蝋燭くらいの火が灯るイメージをして世界に相応の魔力を捧げてから『火よ』などの力ある言葉である言霊を唱えれば術式に法りその通りに発現する。

 ここで大事なのは“直接的に世界を改変できるのは神代を生きた古い種族だ”ということだ。限りある短い命の人間族や長命だが不死ではないエルフ族、他様々な種族はその昔に精霊が加護を与えた事で“間接的に世界を改変する事ができる”のだ。精霊という代理者を間に挟まなければ魔法は発動しない。魔力など宝の持ち腐れだ。

 そうね、ここでは世界と精霊と人間族、それを会社で例えましょうとイングバルドは黒板にデフォルメされた絵を描いた。妙にコミカルで可愛らしい。

 世界が社長で精霊が中間管理職、人間族が社員や顧客。社員(人間族)が作り上げた事業計画書(術式)上司(精霊)に提出してプレゼン(言霊)して関係書類(魔力)を持ち込む。そうして社長(世界)へ手渡される。それが承認される事で計画(魔法)は動き出す。

 もっと言ってしまえば互換性のないパーツA(世界)パーツB(人間族)変換機(精霊)が取り持って電気(魔力)を流しているのだ。

 ここまでイングバルドが説明してにっこり笑いながら一息入れた。


「――とまあ、ちょっと詳しく説明してみたけどアオイちゃんわかった?」

「一応は。まだ一部穴開き知識だから知らない所とかあったし例え話が多くてちょっとあれだったけど、母さんの言いたい事はなんとなくわかったと思う」


 世界に直接うんたらやでも他は間接なんだやらオマケに長命種はスゴイやらなにかの本で読んだ気はするけどちょっとわからないなとアオイは顔には出さずに悩んだ。まだ自分の事を人間族だと単純に思い込み両親は重度の厨ニ病だと考えているがゆえに理解が追いつかなかった。何気に自身のアイデンティティに関わってくるので無意識に直視できないようだ。


「知識の欠落が?偏ったのかしら。うぅん、アーフが教えたなら完璧だと思ったのだけど」

「え?」

「え?違うの?」

「……うん」

「…………」


 二人の間をとても気まずい空気が流れた。お互いが目も合わせようとしない。そんな中で意を決したのはアオイだった。


「あの、最初に俺は独学だって言ったよね?」

「え?ええ。確かにそう聞いたわ」

「その、ね。基礎をそこそこに覚えた後は興味のある事だけを重点的に学んで、そこでわからない部分をアーフに教えてもらってたから別に教授されてたわけじゃないんだよねー、なんて」

「なんですって?」


 またもや気まずい空気が吹き荒れた。先程が微風なら今回は強風だ。アオイは寒くもないのに怯えた小動物のように震えていた。

 これがとある日の講義風景だった。更に言うならこの日からイングバルドの講義は質と量が倍々で増えた瞬間だった。








これでいくらか物語を補強できたでしょうかね。

詰められそうな設定は詰めて盛りに盛ったつもりなんですけど、うぅむ。

とりあえず後は魔法の実践編と召喚術に関して、それと精霊や悪魔と知り合うお話しを入れればイケるかな……なんて。

物語の前後や部分部分で違和感がありましたら是非ご報告をお願いします。

ではでは。


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