第11話
いつもよりも長くなってしまった。
それでもいいという方のみ少々お付き合い下さいな。
では、どうぞ。
皆の感想&評価&ネタ提供が作者の力になっております。
どうも、ついに一五歳になったアオイ・ルメルシエだ。
昨年は白騎士を始めとした三機の強化服と強化外装を完成させた。そして思い付きから始まった次の開発計画は今年の今日、今まさに目を覚まそうとしている。
今、工房にあるのは三機の生産ポッドだ。エーデルの身体を生産した時にも使ったものとほぼ変わりがない代物だ。
ただし前回との違いが二つある。特殊強化ガラスの中には何も入っていない事が一つ。もう一つはそれぞれの生産ポッドの両サイドにある生体ナノマシン溶液が、別種のナノマシンで満たされているという事だ。
俺はエーデルの渡してきた設計図の一部を変更しただけで残りは全てエーデルに任せた。これらの機材も彼女が手配して用意したものだ。中には特殊な機材もあるのになかなかの手際だ。
それにしてもなぜにこうも立て続けに開発に勤しんでいるのか。それもこれも思い出せば一年ほど前の事だ。
…………。
……。
「――軍団シリーズ、ですか?」
「そう!どうかな!?きっと今の状況に適していると思うんだけど!どうかな!?」
人手が足りないなら増やせばいいじゃない、と単純に考えた事だ。さっきは“軍団シリーズ”なんて大仰に言ったけど今のはただの思い付きだった。仮名称とも言う。
「マスターのお作りになられるものなのですからそれはきっと素晴らしいものなのでしょう。ですが軍団シリーズとは一体どのようなものなのでしょうか?いえ、『軍団』という言葉から察する事はできるのですが……」
「あー、ごめん。軍団シリーズって名前はただの思い付きなんだけど。要するに“沢山の人手を容易に確保できたらすごいよね”って話しだから難しく考えないでいい」
そうだな、例えば……チェスや将棋の駒のように役目を与える、とか。
騎士は防衛や攻撃など武官の役目を担い、僧侶は情報や諜報など文官の役目を担い、城は建築や生産など工兵の役目を担い、兵士は数と汎用性を駆使してそれぞれの補佐や勢力としての役目を担う。残りの王や女王の役目はまだ思いつかないから次回へ持ち越しだ。
とりあえずこれらからどれか三つを作成する。どれにするかは未定だけど。
ただの思い付きだけどこんな感じかね、とまだ構想段階のそれをエーデルに説明した。
「なるほど。つまりは機能を限定した簡易機械人形を大量にお作りになって作業の円滑化を図ると――いえ、私のマスターがそのような安直な事をするはずがありませんね。すると何か別アプローチによる手段が……(ぶつぶつ)」
なんかエーデルがすっごい考え始めたー……。なにこれ?何かを検索しているのかエーデルの周囲に無数の空間ウインドウが展開されたり消えたりしている。
この後もエーデルは『増殖?それとも分裂?いえ、まさかの侵食でしょうか?』や『発想を変えて機械人形ではなく生体兵器でしょうか?』やら、更には『マスターはナノマシン工学に強い関心を寄せられておられますから……』などと小声で呟きながら思考の奥深くに潜っていた。
そこまで悩む必要はないと思うんだけどなぁ、なんて今のエーデルを見ると言えないよ。
本当に言えない、まさか最初にエーデルが『簡易機械人形を大量に~~』を素で考えていましたなんて言えない。なんか今も止まらずに真剣に考えてるし……。
こ、声掛けづらいなぁ。
「あ、あのぉエーデル、さん?そこまで難しく考えなくとも、ね?あれ、エーデルさーん?ちょっとー?」
なんとなく“さん”付けになってしまったのはエーデルのただならぬ雰囲気に気圧されたから、なんて考えたくないな……。
当のエーデルはといえば声をかけてもまるで気付いてないかのように検索を続けている。それもやがては一つの空間ウインドウを残すと落ち着くに至って。
「――該当条件に一件ヒット。……なるほど、これなら。流石ですね、マスター」
「え?」
全く覚えのない賛辞に驚いてしまった。まだ何を作るとも決めてないのにそれは少し早すぎたから。
そんな戸惑う俺の事はお構いなしにエーデルは先程ヒットしたという項目を映し出した一つの空間ウインドウを眺めている。その気にならなくとも一瞬で情報を取り込めるのにアナクロにもわざわざ目視にて読み勧めていた。
「まさか、このような数の暴力を体現したようなものを用いようなどとは。……少々原始的ではありますが、マスターのそんな所も私はお慕いしておりますよ。とても、素敵です」
「え?えっと、ありがとう?……いや、そうじゃなくて、なんか物騒な事考えてない?数の暴力がどうのって今……!」
そんな物騒な意図は俺にはない、ないったらない。確かに『人手が足りないなら増やせばいいんじゃね?』と考えたのは認めるけど断じてそんな危険一辺倒に考えたわけじゃない。
なのにエーデルは数の暴力が云々などと言う。やはりエーデルは母の影響か変に誤解しているように思えてならない。
なんとかしないと……と、内心で頭を抱えているとエーデルは自信ありという風に堂々としている。
「大丈夫です。隠さなくともよろしいのですよ。マスターが何を考えているのか、今の私は細部に渡り理解致しました。ええ、驚きました。マスターがまさか……いえ、これ以上の言葉は僭越に過ぎるというものでしょう」
いかにもこれ以上口にするのは恐れ多いというようにしてエーデルは口を閉ざした。だけどその目にはありありと畏怖の心が見て取れた。
なんだろう、今この瞬間に俺とエーデルの間に何か途方もない誤解が生まれてる気がする。
やはりエーデルと母の関係を一部制限する事も考慮するべきかな、なんて苦悩していると彼女は複数の空間ウインドウを再度展開すると流れるような手際で作業し始めた。
尤も機械人形全般に共通して思考制御だから傍から見るとただ立って空間ウインドウを見ているだけに見える。
「それではマスター、肝心の設計図はどう致しましょう?既存のモノは既に登録されておりますので、後は生産プラントに入力するだけなのですが」
「はぁ……ぇ?」
あれ?なんか知らない間に俺の考えとして計画っぽいのが動こうとしてる?
気のせいかもしれないけど、なぜかこのまま事態を見過ごしていくと何か取り返しの付かない事になりそうな気がしてならない。
どうしよう……。
「マスター?どうかされたのでしょうか?私に何か不備でもありましたか?」
「い、いや、不備とかそういうのじゃなくて――」
と言いかけて少し閃いた。不安ならエーデルの言う設計図とやらを自分の目で確認すればいいじゃないか、と。何か物騒でダメなものがあったならその都度修正してしまえばいい。
なんだこう考えると簡単な事じゃないか。
「――とりあえずその設計図とらやらには一度しっかり目をちゃんと通しておきたいんだけど。いい?」
「承知致しました。――なるほど、更に改良を加える、と。あの程度の機能では物足りないと、そう申されるのですね。……マスター。貴方様は恐ろしくも頼もしいお方なのですね」
「頼もしい、は嬉しいけど恐ろしいは失礼だな。俺はそんな怖がられるような事はしてないって」
なんか、また余計な誤解が生まれた気がするなぁ。
…………。
……。
なんてやり取りがあったわけだ。ただの思いつきなんてものは口にするものじゃない。
それにしてもあの時のエーデルは何かに驚愕していたようだけど今でもその意味がわからない。下手に聞こうとするとなんだかその瞬間にいらないものまで呼び込んでしまいそうな気がして怖くて聞けなかった。
あれ?今のオカルトっぽくないか?
…………。
――はっ!?この世界がファンタジーだった!それもSFファンタジー!こうして考えると下手なオカルトよりもよっぽど質が悪いな……。
「マスター、最終工程は既に完了しております。起動致しますか?」
「う?ああ、そうか。そうだった、うん。それじゃ起こすとしようか」
「了解致しました。これより起動シークエンスに入ります――」
エーデルの宣言と同時に目の前にある三機の生産ポッドが碧く輝きだした。
淡く優しい光が点滅を繰り返す三機の生産ポッドには溶液が満たされておりその中ではヒト型が漂っていた。
時機に目を覚ます……。
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽
軍団シリーズ。
この仮名称に特に意味はなかった。だけど軽い思い付きで言った『人手が足りないなら増やせばいいんじゃね?』という条件を元にエーデルがデータバンクから探し出してきた“モノ”を見て考えを改めないといけなくなった。
エーデルが探し出してきたものの名前は“恐怖”。特殊ナノマシン集合体。虫型、細菌型、獣型、鳥型、ヒト型、更には合成獣型など特に決まった形状を定められていないという変わった特徴を持つ最凶の存在だ。
たった一つの特殊ナノマシンだけでも “恐怖”は周囲の物質を半無限に侵食して半無限に分裂し半無限に増殖する。一つが二つへ、二つが四つへ、四つが八つへ……。それを繰り返して無限に増えていく。そして“恐怖”に侵食されたものはその全てを分子単位で分解されて骨一つ、肉片一つ、血の一滴に渡りボロボロに崩れ去ってしまう。そうして無限に増えて無差別に周囲のものを食い尽くすという、まさに最凶の存在だ。
最初、エーデルにこの資料を渡された時は内心で血の気が引いた。こんなものを作ろうとするとか正気じゃない。これは無差別殺人を可能にするとかそういうレベルの話しじゃない。これはもう大規模虐殺、無差別殺戮という狂気の御業だ。
それでも資料を最後まで読み上げた。で、最後の行になんて書いてあったと思う?なんと『尚、使用の際はご注意下さい。使用範囲はゴミと害虫に特定される事を強く推奨致します』だってよ。
…………っ。
どうよ?どう思うよっ?つまりっ、これはっ……っ、掃除機とか殺虫剤の役目で作られたって事だっ!危ないって!何考えてんだ、これ作ったヤツは!?一歩間違えばこの惑星が死の惑星になるだろうが!!どんだけ物臭なんだよ!?掃除くらい自分の手でやればいいじゃないか!馬鹿じゃないの!?バカじゃなくて馬鹿じゃないの!?ねえっ!?
ふぅふぅ、ふぅふぅ……!
それで作成者は誰かと探してみれば、そこには“イングバルド・ルメルシエ”とあった。しかもオマケのつもりか知らないけどその後に『新妻でっす♪いぇーいっ♪』と走り書きのようなものがあった、わ、け、で……っ!!あ、あの母はあああっっ!!またか!?またなのか!!こんなもの作るなんてどんだけ破天荒だったのさ!?物臭なのに破天荒って何!?今の母性愛溢れる母とは随分と印象が違うんだけどっ!?
はぁはぁ、はぁはぁ……!
――ん、こほんっ。
色々と思う所があるけど思い出したくもないので永遠に横に置いておくとして、なぜにエーデルはあんなものを探し出して尚且つ勧めてきたのか。あれか?数が多い云々で決めたのか?それとも『兵器にしたら有用じゃね?』と考えたのか?……半無限に増殖するとか無駄に多いし、制御を誤ったらと考えると無駄に危なすぎる!
そんな危ないものは流石に使えない、という事でアイデアだけ参考にして同じくナノマシン技術を使用するけど別アプローチで詰める事にした。あの“恐怖”、いや今は“恐怖(笑)”とは別種のナノマシン集合体を作る事にした。なにより不定形ナノマシン集合体よりもヒト型を基本にしたほうが何かと都合がいい。
そんなわけで仮の開発名だった軍団シリーズが本格的に動き出す事になった。なってしまったよ……。
“恐怖(笑)”に使われてるナノマシンの設計をちょこちょこっと弄って軍団シリーズに転用して、エーデルほどではないにしても成長する人手をコンセプトに作り出した。
あらかた出来上てからちょっと考えた。折角ヒト型をしているのだからここは前回の雪辱を晴らすためにも男性型の執事を目指そうか、と……ゴメン、半分は嘘だ。そんな風にもう『こいつ頭湧いてんじゃね?』と思えるくらい変なテンションだったのは忘れたい記憶だな。あれは興が乗って徹夜したのがそもそもの間違いだったんだ、うん。
それでそんなキチガイな計画はなんとか踏み止まって『さて、どうしようか?』ってなった時にエーデルが自分に任せろと言いだした。彼女もなぜか今回はやる気に満ちていたようだったから折角なので任せてみる事にした。
仮に何か不都合が生じても元は不定形ナノマシン集合体だ。問題があればその都度修正すればいい、と気軽に考えていた。
そう、その時の俺は『なんとかなるなる。はははっ』と楽観していたのがいけなかったのかもしれない。今俺の目前には毎度お馴染みの内心で頭を抱えるような光景が広がっていたのだから。
神よ。アナタはそんなにも俺の事が嫌いなのか?
「――おぅふ、これは、えー……?」
生産ポッドから出てきたのは三体のヒド型ナノマシン集合体、軍団シリーズだ。三体とも共通してアンドロイド特有のキラキラと輝く銀髪と金の目をしている。
軍団シリーズの彼女達はそれぞれがそれぞれの魅力に溢れた可愛らしい女の子だ。そんな彼女達が今俺の目前に横並びに立つとそれが当然のように跪いていた。
ある意味でエーデルの時以上に混乱した。だからというわけじゃないけど跪く彼女達を前にして何もできないで居るとまるで何かを察したかのように真ん中の子が最初に言葉を発した。
「お初にお目に掛かります、閣下。レギオンが武、“騎士”になりますッ」
閣下、と呼んだこの子はキリッとした動作と言葉で自身を騎士と称したように実に堂々としており力強い武人を思わせる名乗りだ。
挨拶の時に面が上げられて、そこに見た彼女はエーデルよりも尚長い髪。その目には鋭い光を宿しており固く結ばれた口元が意志の強さを感じさせる。
スラッとしたスマートな身体であり、全体的に見ると俊敏さに優れるチーターを髣髴とさせる。
全体的に見て勝気そうな女の子だった。
「ご機嫌麗しゅう、陛下。レギオンが知、“僧侶”にございます」
陛下、と呼んだこの子は柔らかな物腰で自身を僧侶と称したように超然と、そして凛然とした聖人を思わせる名乗りだ。
次に名乗り出た女の子は肩まであるウェーブが掛かった髪。優しそうな大きな目は深い知性の光を宿している。
穏やかに微笑む口元が春の木漏れ日を思わせる。騎士の子よりも出る所は出て引っ込む所は引っ込むという外見年齢の設定から考えるととても悩ましい身体をしている。
聖職者のような清廉な中に時々覗く娼婦のような妖艶な色が垣間見える不思議な女の子だった。
「えとえと、初めましてっ、王さまっ。レギオンが兵、“兵士”なのですっ」
王さま、と呼んだこの子は先の二体よりも少し戸惑いながら自身を兵士と称した。二体に比べて小柄な身体だけど名乗った時の声色には兵士である事にこの子なりの誇りを思わせた。
首に掛かるくらいのボーイッシュな髪型、クリっとした可愛らしい目元をしており小さな口元と合間って小動物のような印象がある。だけど何事にも一生懸命に務めようとする雰囲気から弱いとは思わせない確かな芯の強さを感じさせる。
「む、むぅ」
さて、ここまでは可愛い女の子が現れた、とだけ思えるだろう。だけど一つ、いや二つ問題がある。それぞれの外見年齢が騎士、僧侶、兵士の順に言うと一二歳、一四歳、一〇歳くらいだった。成長する事が前提とは言えこれはいくらなんでも設定が若すぎる。
そしてもう一つの問題。実はこれが一番の問題だと個人的には思っている。それは彼女達が、裸だという事だ。裸、スッポンポン、どう言ってもいいけど今の彼女達は跪いている事からオパーイの桜色のポッチやデルタ地帯なごにょごにょが丸見えだった。
驚きで固まってしまい目を逸らす事もできずに居て『羞恥心ってなんだろね?』と疑問に思うくらい今の彼女達は一層の事清々しいまでに堂々としているから更に動揺した。
また、これがエーデルの仕業だと考えると頭痛がしてきた。彼女に一任したのが自分自身だとしても『これはどうなの?』と言葉にせずには居られない。流石に起きたばかりの彼女達を前にそんな事は言わないけど、こんな風に頭を悩ませるのはもうお約束になっているくらいには慣れてきていた。
そう、何かあれば『大体エーデルのせい』で事は通るくらいには。
だからこそここで俺は慌てない。内心はひどく混乱しているけど表面上は至極冷静だ。ちょっとあれだけど虚勢を張ろう。
一応は前回で学習しているから対応は心得ていた。
過去、エーデルの時は慌てるだけで無様を曝してしまい殆どを母に任せる事になってしまったけど今は違う。
こんな事もあろうかと一つの道具を持ってきていた。
それは亜空間格納庫の機能を持った腕輪だ。俺も持っているこの銀色のシンプルな腕輪にとある機能を追加して用意していた。
新たに追加した機能、それはナノマシン技術を用いたコスチューム機能だ。
これは登録された衣服データを元に瞬時に着替えられるという地味にすごいアイテムだ。しかも構成された服は装着者の体格に合致される仕組みを持つという嬉しい仕様だ。
設定によっては防具にもなるのだから衣類に関してはほぼ万能と言えるだろう。
「とりあえずこれをあげるから服を着ようか。というか着て下さい。目のやり場に困るから」
「はッ。閣下の仰せの通りに」
「承りました、陛下」
「あう、王さま困るのですか?」
そういうわけで早速彼女達に腕輪を渡して使い方を教えた。兵士のこの疑問は敢えてスルーさせてもらった。
コスチュームを纏うには登録された服を『着たい』とイメージするだけなので初心者にも易しい簡単仕様だ。それに機械人形の彼女達なら腕輪に容易にアクセスできるので操作も可能だ。
で、三体が三体ともに身に纏ったのは当然ながらメイド服なわけでして。
「むむっ。これは些か装甲が薄いような。スカート装甲はいいですがやはり防御面で不安があります」
と、騎士な子が言った。それはメイド服だ。一般的な給仕服だ。決して鉄板も入ってないし鎖帷子もない。防具ではないのだよ。でも、この子ならそのまま改造してしまいそうだなぁ、なんて思ったのは内緒だ。
「シンプルな装いなのですね。これもよろしいとは思いますが少々華がないのは寂しいかと。多少手を加えてもよろしいでしょうか?」
と、僧侶な子が言った。手を加えるのはいい、と了承した。スタンダードな給仕服な訳だから華はないのは当然じゃないかな。俺は可愛いと思うのだけど。……あっ、エーデルも自分で弄ってたかも。
「わあっ、可愛いのですっ。でもでももう少し裾は短いほうが動き易いと思うのですよっ」
と、兵士な子が言った。でもスカートの裾を短くするのは認めない。裾の短いメイド服など認めてなるものか。あれはただのウェイトレスだ。絶対にメイド服じゃない。今は小さいからわからないかもしれないけど、いつかわかってくれるよね……。
因みに今回登録してあるのはメイド服と執事服の二点だけだ。思いっきり趣味に走ってるけど気にしたら負けだ。好みがわからないから最初だけでも俺の好みを前面に押し出したかったんだ。
反省はしているけど後悔は微塵もしていない、などと内心で力説しているとトテトテと一番小柄な兵士の子が目の前に来ていた。他の二体も服について話していたのだけど今は意識半分で不思議そうに兵士の子と俺を見ていた。そんな二体に見守られるような形で兵士の子がモジモジと手を胸元で拱いている事から何か言いたい事があるのか、または聞きたそうにしているのだと察した。
とりあえずしゃがんで目線を合わせた。立ったままだと見下ろす形になって子供から見るとどうしても威圧するように見えてしまうからな、小さな子供とお話しする時の鉄則だ。
「どうした?」
「えとえとっ……あのっ、王さまはこういうのが好きなのですかっ?」
ドキッとした。兵士の子がスカートをちょこんと摘み上げて聞いてきた。しかも可愛らしく小首を傾げてだ。ドキッとせずに居られようか。
他の二体も今着ているメイド服について考えていた手をピタッと止めてチラチラとこちらを伺っていた。が、それはともかくとして兵士の子の外見が一〇歳の可愛い女の子だからかとても癒される。ちょっと気を抜くと頭を撫でてしまいそうだ。
「あ、ああ。好きだよ。君にもよく似合っているし可愛いと思う」
「っ、えへへっ。じゃあボクはこのままにするのですっ」
「…………ぉぅ」
なにこの可愛いの。向日葵のような満面の笑顔と子供らしく胸元でぎゅっと手を握る姿が愛らしい。このまま部屋にお持ち帰りして愛でちゃダメか――なんて考えてないよ!そんな犯罪っぽい事考えてない!……本当だって!
あ、あー、ダメだなぁ。他の二体が『ビクっ!!』みたいに反応していそいそと服飾データを弄り始めた。
これは変な誤解が生まれたかもしれない。俺はロリコンじゃないんだって。本当に勘弁してよ、子供から『寄らないで下さい。この汚物がっ』みたいな目で見られたら俺、年単位で引き篭もるよ?マジで。――などと軽く絶望しかけて鬱にもなりかけていると兵士の子が少し目を潤ませて心配そうにしていた。
「???王さま、どうしたのです?お腹が痛いのですか?」
「っ、いや、なんでもない。三体とも、悪いけどちょっとの間だけここで待っててくれる?」
可愛いなぁ、愛でたいなぁ、という気持ちは一旦横に置いておく。このままだといつまでも眺めて愛でてしまいそうだ。それでは話しが進まない。
とりあえず今は今回の元凶であると思われる、と言うか十中八九間違いないと確信しているエーデルにちょっと個人的なお話しをしないといけない。
今も工房内の一角で空間ウインドウを無数に展開して三体の稼働状況に走査を掛けて異常がないかを洗い出しているエーデルだけど、フフフ……逃がさないよ?なんでこの容姿に設定したのかちゃんと聞かせてもらうからな。
「了解です、閣下。この場にて待機しておりますッ」
「陛下の仰せのままに」
「え?え?あっ、はいっ。ここで待ってますっ」
本当にいい子だなぁ、この子達は。素直で、なによりも可愛らしいし。妹か娘、ちょっと行きすぎだけど孫を見ているような気持ちにさせる。ちょっとほんわかした。
――さてと、ちょっとエーデルを問い詰めるかなっ。
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽
作業中のエーデルに『ちょっと話しがある』と言って工房内の隅に連れて行って防音効果付きの仕切りをした。要するにここはコタツのあるあの癒しスペースに連れ出したわけだ。
向かい合ってコタツに入ってぬくぬくとしながらエーデルの尋問を始めた。エーデルはササッと物音一つ立てることなくお茶の用意をして急須から緑茶を茶碗に注いでいた。
差し出された緑茶を片手に、勿論だがもう片方の手には蜜柑を装備している。
「――それで一体どうかなさいましたか、マスター?」
さも連れて来られた理由がわからない、といった風のエーデル。事実彼女はわかってないのだろう。きっと純粋な善意のつもりだったのだろうから悪意はない、はずだ。
だけどそれとは別にちゃんと問い質す事はしないといけない。俺が求めたのは“人手不足の解消”だ。それなのに出てきたのはまだ十代の小さな子供だった。これはちょっと問い詰める必要があるだろう。純粋に人手を求めるなら頑丈な大人の男性型を用意すれば事は済むのだから。
「どうかなさいましたか、じゃないっ。何あの子達はっ?女の子じゃないかっ」
「何か問題がありましょうか?私はマスターのお好みを反映させたと自負していたのですが」
「素晴らしい!ありがとう!」
我が事ながら一切の躊躇が見られない言葉だった。割と好みの子達だったから気が付くと礼を述べていた。本当に可愛いと思ったから男なら仕方がない。言ってから我に返ると途端に凄まじいまでの羞恥心が襲ってくるけど……。
最後にエーデルに一言だけ――実にイイ仕事だった!
「恐悦至極です。お喜び頂けたなら私も喜ばしく思います、マスター」
「うん。……あれ?いやいや、そうじゃなくて、なぜに人手云々の話しをしておいたのに男性型じゃなくて女性型?差別する気はないけどパワー不足とかさ、そういうのって大丈夫なの?」
「なるほど、そのようにご心配をされておられたのですね。把握致しました。ですがご安心を。あの子達の外見と性能は比例しませんので優劣はありません。マスターの要求性能は満たしていると断言致しましょう」
あー、言われてみれば確かに。現にエーデルのような機械人形にはそういうのは無縁だ。予想外の事態だったから、つい取り乱した事でそういう事実を忘れていた。
「エーデルがそこまで言うなら大丈夫なんだろうけど。それにしても、その、外見年齢の設定が少し若くないか?可愛いとは思うけどさ」
……可愛いから大きな問題とは思わないけど(ボソッ)。
父と母以外には機械人形や保護した魔物くらいしか遊び相手や話し相手が居ないからレギオン達のような子はある意味で大歓迎だ。
あっ、別に寂しいわけじゃないからな!ちょっと友達が増えて嬉しいな、って今になって思っただけだ。それだけだ、うん……。
「――お嫌いでしたでしょうか?」
「大好きです!」
何も言うな。俺も言ってから『ああぁぁあ、男ってバカだよなぁぁ』って今思いっきり実感してるから。
身体が一五歳の子供とは言え精神的にはいい歳だから若くて可愛いおんにゃのこを見るのは好きなんだよ。目の保養になると考えるのは男として当然じゃないか。
緑茶を啜り蜜柑をパクパクと食べて、また緑茶を飲む。あぁ、ホッとするー……。
「然様ですか。……マスターは若ければ若いほど、一層の事幼い女の子がお好きだったのですね。理解致しました」
「???――ッ!!多大な誤解が巻き起こった!?違うって、誤解だ!!」
とんでもない誤解だった。最初は何を言ってるのかわからなかったけど、まさかエーデルまでも俺の事を疑うなんて思いもしなかった。何度でも言うが俺は断じてロリコンではない。ただ、可愛い女の子や綺麗な女性が好きなだけだ。
「大丈夫です。大丈夫ですよ。ご無理をなさらないで下さい。例え幼子がお好きだとしても、私だけはマスターのお傍に居りますから」
「心に痛いくらいに優しい眼差しで見守られている!?だから誤解だって言ってるでしょが!大体あの子達の外見年齢はそこまで低くない!」
「本当、でしょうか?ご不満だったのでは?」
いや、十代前半だから若い設定だけどね。本当はそこまで騒ぐほどイヤなわけじゃない。それでも、譲れない部分はあるわけで……。
「変な誤解されたほうがよっぽど不満だって!だったら今はあの姿でいいよ!」
ロリコン疑惑とか……そこだけは認めるわけにはいかない!断固として!
俺がこんなにも力説しているのに当のエーデルはと言えば涼しい顔をして新たに緑茶を注いでくれていた。
ありがとう……。
「それでは問題ありませんね。それにマスターもそこまで言うほどあの子達にご不満がおありではないのでしょう?」
「言われてみればそうかな、可愛いし……大満足だ!……あれ?何の話だった?」
むむむ……?なんだったかね?エーデルの態度や雰囲気からロリコン疑惑は解けたようだけど、何か他に大事な事を問い質そうとしていたような気がするんだけど……むぅぅ、なんだったかな。
その時、エーデルの目がキラリと光った――ように見えただろうけど、生憎と考え込んでいてこの時の俺は気が付かなかった。
「マスター、気をシッカリとなさいませ。軍団シリーズが無事に完成した、というお話でした。お疲れなのでしょうか?」
「え?そう、だった、かな……」
確かに完成して無事に産み出す事ができたから目出度い事には違いないけど……はて?そんな話しだったかね。むむむ、エーデルの言うように疲れてるのかな。ダメだな、この程度で疲れるなんて。これじゃ父と母、特に母の講義には耐えられないじゃないか。
もう少しだけ普段の生活態度を改めよう。食生活とか、睡眠時間とか、色々と。
「それよりもマスター、今はあの子達にお言葉を。きっと彼女達も喜ぶ事でしょう」
「いやいや、エーデル、それはいくらなんでも大袈裟だって」
お互いにコタツから出てこの癒しスペースから三体の許に戻るべく動き出した。
それにしても、と思う。大部分の設定は組んだけど“条件付け”の部分はエーデルに一任していた。何をどのようにしたのかが今になって気になった。ああ、今こうして考えるとどうなるかとても不安になる。
そう言えばなぜにエーデルはあの三種類を選んだんだろう……。
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽
よくわからないうちに少しばかり時間を取ってしまい待たせてしまった。癒しスペースから抜け出した俺とエーデルは一緒に三体の許へ戻った。
そうして生産ポッドの前に戻ると、そこには工房内にあった丸テーブルを一つと椅子が人数分取り出されていて既に話し合いの場が用意されていた。三体ともに椅子に腰掛け、それぞれが空間ウインドウを展開している。
空いた時間で腕輪にアクセスして服飾データを自分なりに弄っていたようだ。エーデルがどのような意図を以ってしたのかわからないけど割と自由意志の縛りが緩い“条件付け”のようだ。
しかも遠目から見えた限りではもう随分と弄り回しているように見える。三体が一体どのような服装にするのか気になる所だけど今はそれよりもする事がある。
「――待たせてごめんね。場まで整えているなんて待ち草臥れたでしょ?」
「そのような事は決して。ご心配は無用に願います。我々も閣下に断らずにこのような勝手をしてしまいました。申し訳もありません」
「はははっ。いいよ、返って用意する手間が省けたくらいだ。ありがとね」
「はッ。恐縮です」
声をかけて最初に反応したのは騎士を名乗った子だった。すぐさま作業をやめて武官らしくザッと席を立つと姿勢を正した。騎士の駒を担うに相応しく生真面目な受け答えだったからそれがまた様になっていてつい苦笑してしまった。
彼女と同様に僧侶の子も席を立つと穏やかな笑みを顔に浮かべていた。
兵士の子もこちらに気が付くと慌てて席を立って姿勢を正していたのだけど、なんか様子がおかしい。よく見ると何かにビクついているようだった。何事かと思い彼女の視線を追うと、そこには……エーデルが居た。
えーと、エーデルさんの目が冷たいです。その目から読み取るに何か気に入らない事があるように思えた。なんか変なプレッシャーを放出してるようにも感じる。
「もう、やめなって。何に気を立ててるのか知らないけど怖がってるじゃないか」
「マスター……。ですが、あの者は事もあろうにマスターを立たせて自分は椅子に踏ん反り返っていました。躾けは最初が肝心でしょう」
もうそんな事言って……。
「エーデル」
「……了解致しました。――そこの兵士、命拾いしましたね。マスターの慈悲に感謝なさい」
「ぁぅぁぅぁぅ……」
エーデル……。最後に凄むのは止めなって、相手は起動して間もない赤ちゃんみたいな子なんだからさ。それに俺はそのくらい気にしないっての。
ほら、兵士の子がチワワみたいに震えてるじゃないか。しかもそのプレッシャーが他の二体にも感染したかのようにビクビクしてる。機械人形なのに顔色もやや青いという不思議。
それでまぁ予想外だったけどやっとの事で場が落ち着いてきた頃、皆が席に着いたわけだけど、その時にもエーデルが『従者が云々~』となりかけたので参った。俺とエーデル、二人だった時はそんな事なかったのに今になってと思うけど『今になったからこそです』と言われた。
正直意味がわからない。
「さ、流石は私達の上位に設定されるエーデルお姉様ですのね。まるで一瞬だけ内部回路が凍りついたようでした……」
「あ、ああ。ビショップの言う通りだ。この身で恐怖を味わう事になるとは思いもしなかった」
「こ、ここ怖かったのですぅぅ。うぇぇんっ、王さまぁぁ」
丸テーブルを囲むように座っている。順は俺から右に回り兵士の子、僧侶の子、騎士の子、エーデルとなっている。つまり俺の両隣に兵士の子とエーデルが居るわけだ。
レギオンは三者三様に恐怖に慄いていた。特にひどいのが兵士の子でえぐえぐっ、と泣き出していた。
隣で小さい子が泣いている姿を見るのはやはり忍びない。
「ごめんな。エーデルが怖がらせるような事して。大丈夫?」
「ぁぅ。だ、大丈夫なのです。それに悪いのはボクなのですよ」
いい子だなぁ、兵士の子はいい子だなぁ。
こら、そこ。なに然も心外ですみたいにしているか。小さな子を泣かせるなんてダメだって、それが身内なら尚更だ。
「何を言うかと思えば。子供がそんな事気にしなくていいって。まったく」
「あうあうっ。お、王さまぁっ?あぅぅ」
ぽんぽんと兵士の子の頭を撫でた。慰めるつもりでしたつもりだけど、今はただただ俯いて小柄な身体を縮こまらせてしまい更に小さく見える。
むむむっ。気に入らなかったのか。あれか?子供扱いしたのがいけなかったのか?……ならば今こそシーちゃんとクーちゃんを虜にしたこのゴッドハンドを繰り出すしかあるまいっ。
「おーおー。よーしよしよしっ」
「はうはうぅぅ」
全力に撫でて愛でた。
愛 で 抜 い た。
それなのに兵士の子は……なぜに更に縮こまるのかっ!?ダメなのか?これでもダメなのか!?前世も含めて年下ならそれなりに効果がある俺の撫でテクに一片たりとも屈しないとは――やるな、兵士の子っ。
一方、アオイとポーンの一連のやり取りを見ていた者達はというと……。
「ぁ、羨ましいです。私も……」
「ぅ、うむ。いいなぁ。私も……」
ビショップとナイトの二体はアオイに撫でられているポーンを羨まし気に眺めていた。先ほどまで武官らしくキリッとしていたナイトまでが素の口調で呟いていたほどだ。
が、そこで背筋に氷柱を刺し入れられたかのように感じる事になる。
「――何か、言いましたか?」
「「っっ!?」」
エーデルのたった一言、然程大きくもない囁くような声によって二体は局所的に寒冷地帯へ叩き込まれたかのように錯覚した。
「な、ななな何も言ってないですっ。ねえっ、ナイト!?」
「あ、あぁ、ああっ、そそそうだとも!な、な何も言ってませんっ!」
「――……」
慌てているのはビショップとナイトだ。すぐさまビシッと背筋を伸ばすと弁明を始めた。その姿は実に必死だ。
しかし、それらを聞いてもエーデル目を細めるだけで沈黙していた。何を考えているのかその冷え切った目からは読み取る事もできない。それが更に二体を不安にさせる。
長いようで一瞬の嫌な沈黙が続いた後、エーデルが一つ嘆息すると漸く場が動いた。
「…………まぁいいでしょう」
「ふぅぅ」
「ふぅぅ」
なんとか見逃してもらったナイトとビショップはアンドから吐息が一つ吐いた。エーデルは実に不本意そうにしている。
世にも怖いのは女の嫉妬心というものか。祟られたほうは堪ったものではない。
それにしてもこいつら本当に機械人形なのだろうか。
長命種が長年積み重ねてきた情報と経験、技術の粋を注ぎ込まれて、更にはエーデルの稼働データの一部も継承している軍団シリーズはどこまでもその動きにヒトらしさがあった。ある意味ではエーデル以上に二体はヒトらしい。
兵士の子を愛でている時に『こほんっ』と小さいけどハッキリと耳に残る咳払いが聞こえた。何事かと思えば左隣に座るエーデルだった。よく見ると騎士の子や僧侶の子がなにやらテーブルに突っ伏してぐったりしている。
エーデルがまた何かしたのだろうか……。
「はぅはぅ~。お顔とお胸がポカポカするのです~……」
「エーデル、どうしたの?」
いや、本当に。なにやら“ぽやや~ん”としている兵士の子を苦り切ったような目で見ているし。
しかし、兵士の子には悪い事をした。こんなにも顔を赤くして、恥かしがらせてしまったようだ。調子に乗って撫ですぎたな。
「マスターは甘いと思います。それでは他への示しが付きません。どうか今後はご自重下さい」
「いやいや、そんな事ないって。大体、他への示しって……そこまで気にしなくてもいいんじゃないかな、なんて……あははは、は?」
確かに色々と手が足りないから助手を欲していたけど別に組織立ったものを作り上げようと考えていたわけじゃない。
と言うかなぜに軍団の内騎士と僧侶、兵士にしたのか。今の状況に不満はないけど個人的には生産職を担う城を優先してくれたほうがよかったのではと思わずには居られない。
「マスター。お言葉ですが半無限増殖する軍団シリーズがある今その気になられれば大規模な組織を作り上げる事も不可能ではありません。――ゆえに再度お願い申し上げます。どうかご自重下さい」
むぅ、ここまでエーデルに言われてしまえば目を背ける事もできない。今の軍団達の容姿からは想像もできないけどエーデルが言うようにそれだけのスペックをこの子達は持ち合わせているのだから。
だけど、だからと言って今更偉そうに踏ん反り返るのは今更なわけで――。
「この子達が可愛いから却下で。俺は可愛いものを愛でる事は絶対に止めない……と思うよ?」
「マスター……ですが」
予想していたのかエーデルの表情に変化はない。それでも彼女は必要と判断して尚言い募ろうとした。
一度キッパリ断れればいいのだけど何かと尽くしてくれるエーデルを相手には少々言い難い。だからこそ今の気持ちを素直に口にするだけはしようと思った。
「因みにその中にはエーデルも入ってる。それでも――」
「こほんっ。それなら仕方ありません。ええ、真に不本意ではありますが仕方ありません」
即答か……。『それでも――ダメなら考えよう』と言おうとしたら手の平を返したように態度が変わった。
エーデルは可愛いなぁ。思わず温かい目で彼女を見てしまう。
「……マスター。何か?」
「イエ、ナニモ……」
最近のエーデルはちょっとだけ母に似てきたように感じる。こうやって凄むわけでもなくプレッシャーを与えてくる所とか特にソックリだ。
ぐすっ。今無性にシーちゃんとクーちゃんに会いたくなった。癒しが欲しい。
「それよりもマスター、この子達とお話されないでよろしいのでしょうか?」
「えっ?ああっ、うん。そうそう、そうだった。新しく加わった皆に話しがあるんだった」
内心で愚図ついていたけどそれもエーデルの催促によって横に蹴っ飛ばした。
エーデルの言うようにこの子達と話しておかないといけない事はそこそこにある。例えば彼女達に割り振る役割やスケジュールの調整、仕事のローテーションなどなど挙げれば切りがない。
――ああ、そう言えばもっと最初に決めておかないといけない事が一つあったのを忘れていた。
「それは一体?……お役目でしょうか?」
「ああ。それもある。だけどその前にもっと大事な事があったのを忘れていた。まずはそれを決めたいと思う」
「それよりも大事な事?それは何なのですか?」
「それは……」
「それは……?」
溜めて溜めて、相手を不快にさせない程度にもったいぶる。そうしているとその間に緊張してゴクリと喉を鳴らした三体が居た。なかなかノリがいいな。
まぁいつまでもこうしてはいられないのでパパッと種明かしをば。
「君達の名前だ」
「はぁ、私達の……」
「名前……」
「なのです?」
お前ら仲いいなぁ……。三体で仲良くコテンと小首を右に傾げる姿とか本当にさ。将来はここにもう三体加わるのか。そうなったらレギオンシスターズとでも呼ぶか。
「そう、名前。いつまでも騎士だの、僧侶だの、兵士だのと呼ぶわけにはいかないでしょ」
あれらは言ってしまえば軍団シリーズの役職名のようなものだ。俺なんて今の今まで兵士の子とか騎士の子とか“~~の子”って呼んでいた。気にしないようにしていたけどいい加減に呼び辛いったらない。それになにより味気ない。
「そんなわけで君達に名前を付けたいと思う。尚、反論は聞くだけは聞くよ」
うん、“聞くだけ”ね。願うだけなら何事もタダだからさ。時と場合によってはいい意味で聞くけどな。
そしてこういう時に率先して動くのはやっぱり騎士の子な訳で、スッと綺麗に手を上げてきた。綺麗な挙手だ。
「閣下。発言よろしいでしょうか」
「はい、ナイト君。何かな?」
「ナイト、君?ぁ、んんっ、失礼しました。名称は簡単に“一号”や“一番”などで賄うのでしょうか?私達の特性上そのようにしたほうが合理的だと思われるのですが」
――あ゛っ?この子は今“なに”を言った?番号が名前とかふざけた事を言ってなかったか?おい? このっ――!!
「ばっかもんがあああッッ!!!!」
「ひゃぅわっ!?か、閣下っ!?」
「なんですの!?なんですの!?何がありましたの、陛下!?」
「わああっわああっ!!なのですなのです!?」
いきなり怒鳴ったりして正直すまんかった。だけど今はそれよりも正しておかないといけない事がある。
番号を名前にするだと?なるほど。量産型ならそれもありだろう。お前らの特性もあるからそういう発想になるもの仕方ない。理解はしよう、だけど納得はしないし出来ない。
やるならせめてお前らにちゃんとした名前を付けた後で増殖した時に個別認証で番号を振れよ。増殖しても意識を共有化しているから意味ないけど。
「そんな番号が名前になるわけがないだろ!!お前ら可愛いんだからそれに合うようにちゃんと考えるに決まってるだろ!!自分が可愛い事ちゃんと認識してから出直して来い!!」
「ッ!な!なな!なななっ!?かわっ、かわ、ぃぃなどとそのような事はっ!?ぅぅ~……」
「ま、まあっ、陛下ったら!うふふふっ、大胆な上にお上手なのですねっ。私達の容姿はエーデルお姉様を参考にされていますから当然でございますね」
「あうあうあう……」
ナイトは堅物なイメージの通りに真赤になって撃沈している。オマケにポーンも撃沈している。これらは想像していた通りの反応だから、まぁいい。だとしてもビショップはどういう事!?何なのそれ!俺はそれ初耳なんだけど!?容姿の基礎データはエーデルを元にしていたのか!
エーデルめぇ、いくら一任してあるとしてもそういう事を俺に何も言わずに進めてしまうなんて本当にもう……ナイスだ!三体とも将来は美人さんになる事は決まったようなものだな。
「と言うわけでナイトの発言でイラッときたから名前は俺の好みと独断と偏見で決める。文句あるか、コラ?」
「あ、ありません。……ぅぅ、閣下を怒らせてしまうなど私は騎士失格だぁぁ」
「私も異存ありません。全ては陛下のご意志のままに」
「王さまが名前付けてくれるのですか?わーいっ。ボク可愛いのがいいのですよっ」
さて、あれだけ言い切ったのだからこの子達に合うようにちゃんとした名前を考えないと。なにやら落ち込んでいるのやらニコニコ笑顔で待ってるのやらやたらと期待さしてるのが居るしな。
ふむ……どうするか。こうして考えてみるとなかなかに悩むものだ。エーデルのように何かの単語から引張ってくるか。それを元に考えるとして……植物、花?鉱石や宝石でもいいな。
エーデルに名付ける時に考えておいた候補がいくつかあったのでそれらの中から彼女達に合いそうな名前を再度選考し直しだ。
ふむむむっ、花に、宝石か――花、宝石……あっ、これいいかも。
頭を悩ませる事十数分漸く決まった。
「うん。ナイトはイリス、ビショップはペルレ、ポーンはリーリエ。それが君達に贈る名前だ」
「イリス。私の名前、イリス。うむっ、今から私はイリスだ!」
「私はペルレですのね。ペルレ……うふふっ。ええ、気に入りましたわ」
「りーりえ?リーリエ……うんっ、今日からボクはリーリエなのですっ」
「それぞれ花や宝石から名前を取った。それだけ君達のこれからが輝いて華やかであって欲しいと願って名付けたつもりだ」
結局は花や宝石から名前を貰った。
最初にイリスの名には『情熱、伝言、優しい心、信頼』の意味がある。武官である彼女には情熱を持って仕事に務め周囲へ言葉を掛ける優しさを持ってもらいたい。そして最後にこれは俺の個人的な思いだけど彼女を信頼するという意味でもある。
次にペルレの名には『抵抗力、防御、免疫力、恋愛、芸術的才能』の意味がある。知略を担う文官の彼女には『抵抗力、防御、免疫力』とあるように内外の交渉や情報操作などで何事にも屈しないように、身内にはその慈悲溢れる可愛らしい笑顔で愛と思い遣りを向けて欲しいと願っている。
最後にリーリエの名には『威厳、純潔、無垢』の意味がある。今の彼女はとても純粋だ。幼く未熟が目立つだけどだからこそ期待する。今後成長する事で何も知らない無垢の殻を破りレギオンの尖兵としての威厳を持ち合わせてくれると信じて名付けた。
安直な名付け方だけどだからこそ名前に籠めた願い事がストレートに表れる。名付けた者として後悔はない。
三体にその旨を隠さずに伝えた。
「閣下ッ……あぁ、閣下ッ!」
「陛下……!私の唯一人の陛下っ」
「王さまぁ、ボクがんばるのですよっ!」
「……ぇー」
向けられる視線がとても篤いっ!?熱いじゃなくて篤い!!
彼女達のこの目はどこかで見た事がある。これは……そうだ、前世の時にテレビニュースで見た覚えがあった。これは、宗教にのめり込んだ信者の狂気染みた目だ。信仰対象を神格化して絶対の指導者として崇める者の目だ。
まさかこの目で見る事になるとは……。
リ-リエはまだマシとしても他二体がヤバイ、目の中に恍惚とした何かが見え隠れしている。この子達は稼働したばかりの機械人形なのに変に感情が豊かとかどういう事さ?
これがエーデルなら話しはわかる。彼女には条件付けがないから枷もなく自由に振舞う事ができる。それこそAIが未発達な内は切欠があれば憎悪や狂気に堕ちる事さえ可能だ。
だけど軍団シリーズの彼女達は……あ?んん?そう言えばエーデルに言われて根幹部分や基礎部分は彼女のデータを流用してたはず、それでエーデルは『自分の事は自分が一番わかりますので』と言って重要部分の粗方を彼女が……お?ちょっ、という事はエーデル同様に条件付けがされてない可能性があるって事?
いやいやいやいやっ、まさかそんな事が――ないと言い切れないのがエーデルだよなぁ。そうなると初っ端から子育て方針を誤ったわけでこのまま成長すると数年後には狂信者が誕生するかもしれないのか……。
(あれ?これってある意味で最悪じゃね?)
そう考えると途端に不安になった。視線を彷徨わせて、それとなくエーデルのほうを見ると偶然にも丁度目が合う。
さっきまで考えていた事を問い質す意図はなかったけどそこは開き直ってとりあえず視線だけで『そこんとこどうよ?どうなのよ?』と問い掛けてみた。
刹那の間見詰め合う。数秒か数分か続いた後に彼女は一つ小さく頷くと口元に微笑を浮かべていた。
(肯定されたーっ!?)
当たらずとも遠からずといった感じだ。今のエーデルの雰囲気からはまるで『いい仕事しました』とでもいうかのように見えた。とても満足しているかのようだったのがこれまた印象的だ。
しかも何事もなかったかのように話しを先に進めようと動き出す始末。流石はエーデル、伊達に母の影響を受けてるわけじゃないという事か。
この時俺は誓った。
なんとしてもイリス達をまともに育てよう、と。狂信者にはしない、と。
「大変良い名です、マスター。この者達をご覧下さい。不満などあるはずもありません。――そうですね?」
「は、はッ!感謝します、閣下!そして先程の私が愚かな発言をした事をここに謝罪します!お許し下さい!」
「え、ええっ!エーデルお姉様の仰る通りでございます!不満などそんなっ、ありえません!」
「あうあうあうあうあうあうあうあう……!!」
それも極当たり前に威圧している所がまた母にそっくりだ。母の言う『所詮この世はパワーよね!』を見事に体現しているように思える。
「ご覧の通りです、マスター。この者達は歓喜に咽び泣いておりますよ」
「いや、ご覧の通りって……えー?」
男なら誰もが見惚れるほどの綺麗な笑顔でエーデルは言ってくる。
ただ気になるのは咽び泣くと言うよりも威圧してくるエーデルが怖くて泣いているようにしか見えないのだけど、これは俺の勘違いか?
イリスなんか俺に謝罪しているようで視線はエーデルに固定しているし、それはペルレも同じくだ。しかもリーリエなんかは余りの恐怖感に耐えかねて怯えてしまってまともに喋れていないじゃない。誕生して数時間の〇歳児の見た目幼女だから見ていてとても居た堪れない。
それらを見て何も言わないのは決して巻き込まれたくないからじゃないよ?見なかった事にするわけじゃないよ?これは、その……お約束だからだ、うん。
それでもやられっぱなしは可哀想だから多少の仕返しはしよう。他愛もないものだけど。
「あー、そうだった。もしも苗字が必要ならエーデルの“シュタイン”を名乗ればいい。――ね?エーデルお姉ちゃん」
「なっ!?」
これは予想できなかったのかエーデルは驚くと頬を羞恥に染めていた。
ふふん、こうやってエーデルの驚いた顔が見られるなら仕返し染みたからかいもいいものだ。
そうして少しの優越感に浸っていたけどなにやらエーデルの様子がおかしい。俯いてブツブツと呟いていた。何かに耐えるように微かに震えてる姿が少し怖い。
「えーでる、おねえ、ちゃん?マスターが私を……おねえちゃん、ですって?……ふふ、ふふふ」
「お、おい?エーデル?おーい?エーデルさーん?」
俯いたまま笑い声を上げ始めたので流石に不安に思い声をかけ続けてるとエーデルは静止画のようにピタッと止まった。
銀糸のような髪で顔が隠されていて表情が読めないために少し不気味だ。
「エー、デル?あの……」
「…………ふふ」
そうして変な沈黙が続いた数秒後に突然ガバッと顔を跳ね上げた。次の瞬間にはそのまま顔と顔が振れそうになるくらい急接近してきた。エーデルの目が何かを期待するようにキラキラと輝いているのがまた不安になる思いがした。
「アリですねっ、マスターっ!さあっ、もう一度『お姉ちゃん』とっ!さあっ!」
「何をトチ狂っているかっ!」
「あぷろっ!でぃてっ!?」
「うわー……」
「あらー……」
「へうー……」
斜め四五度から抉り込むように殴り付けた。あれだ、壊れた電化製品はそうすると直るの原理。実際にはやっちゃいけない方法だけど。
当の本人は殴り付けた時にテーブルにも激突して今も突っ伏している。目の錯覚かもしれないけど彼女の頭からプスプスと煙が見えるように思えた。
痙攣したエーデルが時折りビクッと動く姿をイリス達が見るとなんとも言い難い表情になっている。
まったく、何がエーデルの琴腺に触れたのかわからないけど行き成りどうしたというのか。なぜか『お姉ちゃん』と呼ばれたかったようだけど意味がわからない。だけど彼女がものすごく興奮していた事だけはわかった。
やがてエーデルが突っ伏していたテーブルから起き上がり復活した。少し頭がフラフラしている。
「落ち着いた?」
「はい。ですがどうした事でしょう、最近はマスターに殴られるのがちょっと快感になって気持ちよく――」
「もう一発、いっとく?今なら大きいのやるよ?」
「じょ、冗談ですよ、マスター。そのように拳を振り上げられるものではありません。今直ぐ下ろされる事を強く強く推奨します」
硬く握り締めた拳に雷の魔法の雷撃をバチバチと纏わせてエーデルをにこやかな笑みと共に睨み付けた。
機械人形だから電気が弱点などという事はここの技術力の前ではありえないけど、こういう時は俺の怒りを表すのには役に立つものだ。
魔法の詠唱?はっ、慣れれば父や母のように脳内で術を構成して一音でも発声できれば使えるさ!同時並列思考の演算能力を嘗めるな、ってなもんよ。
身体から過剰に魔力が放出された事で母から貰った琥珀色のブローチがパチパチ光りながら過剰に流れる魔力を制御して必死に安定化を図っている。明らかに今まで行使してきた以上の魔力が垂れ流しにされた事が起因している。
しかも過剰に魔力放出したせいか気分が高揚しているようだ、今なら父にも勝てる気がする。……あくまで気がするだけだけど。
「二度はないからな?」
「イ、イエス、マスター……」
少しだけ強く言い付けた。言い聞かせる時はちゃんと言い聞かせないといけない。ヒトや動物は勿論だけど高度な知性を持った機械人形なら褒めるだけじゃなくて時には叱る事も必要だ。
教育のためには時には拳を振るう事も必要と考えるのが俺だ。
「閣下、すごいです。あの姉上がこうもアッサリと……」
「ええ、本当に。あのエーデルお姉様を簡単に抑えるなんて。驚きです……」
「ほへ?王さまはすごいのですよ?頭を撫でられるととてもあったかい気持ちになるのです」
(そういう事じゃないんだがなぁ……)
(でもそれはそれで羨ましいですわっ)
ザワザワと少し騒々しいなと思ってみたらそこには戸惑、尊敬、驚愕など様々な色を目に宿したイリス達が居た。
しまった、イリス達が居た事を忘れてた。ついいつもの調子でやっちゃった。怖がられてなければいいのだけど……。
「こほんっ。はいはーいっ。ちょっと注目してー。なんかこれ以上はグダグダになりそうだから最後にイリス達に一言ね」
パンパンと手を打ち鳴らして改めて注目を集めた。こうなればもうこの場はササッとお開きにしよう。
……逃げてないよ?イリスとペルレから戸惑いと畏怖の目で見られてるのが気になるとか思ってないよ?リーリエがキラキラ輝く目で見てくるのも気になってないよ?エーデルが涼しい顔で座っているのがなぜか恨めしいなんて思うわけがないじゃないか。
肝心のイリスとペルレ、リーリエは誕生したばかりとは言え長年蓄積されてきた技術情報とエーデルの実動データを持つ。彼女達は自然な動作で居住まいを正していた。これから話す身としてはやり易い。実に気持ちのいい子達だ。
だから一言だけ……
「――期待してる」
「っ!!」
三者が同様に目を丸くして驚いた。
「気の利いた事は言えないけど、これからも成長してくれる事を期待してる。エーデルは……って、えー」
なぜにそんな渋い顔(?)してるのか。
眉間に皺が寄ったり舌打ちしたり目に敵意があるとかじゃなくていつも通りの澄ましたような表情だけど、今の彼女は目を閉じていて身に纏う雰囲気にはなんとなく拗ねている時のような不機嫌さを感じさせた。
「――何かない?あるでしょ?」
「いえ、私からは何もありません」
「そんな、本当に?なんかないの?言ってみればお姉ちゃんみたいなものなんだから先達らしくここは応援の意味で一言くらいはさ」
「……それでは、一つだけ」
しつこいくらいに促した事は申し訳ないとは思ってる。だけどこういうのは一つのケジメだと思うから一言だけでもと思ったんだ。
エーデルはそう言うと閉じていた目を開くとまるで冷徹な女王が下々の者を睥睨するかのように三体を見詰めた。そうしてイリス、ペルレ、リーリエの順にゆっくりと流し見る。この時エーデルと目が合うと彼女達は動揺したようにビクっとしていた。
冷たく見下ろされてるイリス達が緊張からゴクリと喉を鳴らす。
エーデルは一呼吸の間を空けてから静かに口を開いた。
「マスターの期待を裏切らないように。……私からはそれだけでよろしいでしょう」
「…………」
三体が沈黙した。その顔にあるのは恐怖か畏怖か、それとも悲しみか。奮起するのかどうかは彼女達次第だ。
しかしエーデルか。またそうやって威圧するような事を言うのだから。そういうのはもう少し柔らかく言おうよ。それじゃ相手に伝わり難いだろうしヒトによっては誤解させるかもしれないじゃないか。
本当にもう仕方のない子だなぁ。要するにエーデルが言いたいのは『頑張りなさい』って事なんだからさ。
エーデルのわかり難い激励に、それでもイリス達は自分の中で上手く処理して正しく飲み込めたみたいだ。彼女達の表情にはやる気が満ち満ちている。
「白と精霊に誓って、必ずや閣下のお役に立ちますッ」
「右に同じく。私も誠心誠意陛下にお仕えしますわ」
「ボクもボクもっ。せいいっぱいがんばるのですっ」
三者三様でこれからの事に誠意溢れる誓いを立てていた。
メイド服を着た幼女や少女が『これからがんばりますっ』とやる気に溢れる姿は可愛らしいし微笑ましい。
三体のメイド姿である事やリーリエの幼い言葉使いなどはともかくとして場の雰囲気そのものは厳かなものだった。エーデルも表情には出さないけどそんな彼女達を見て少しだけ満足そうにしているのが俺にはわかった。
さて、今日はもう休むとして次は生産能力を有する城だな。
もう一つ、“戦車”の意味も持つルークは力が並外れて高く設定されている。建築時にはその高い膂力を最大限発揮してくれる事だろう。
それに王と女王の事もある。性能的には管理能力や指揮能力など内政や軍政に特化しているからどうするかな。
まだまだ俺の悩みは尽きなかった。……主に原因は大体がエーデルと母のせいだけどな!
因みに後日、エーデルと母によって軍団シリーズの名称がレギオンシスターズへ正式に変更されていた……。
ぐすっ。
レギオンシスターズが爆誕ww
作中で”ルーク”の駒を”城”と表現しました。
通常は”戦車”と訳されますが同時に”城”の意味も持ちます。
当作品では”ルーク”を”城”と表現します。
ではでは。




