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アナタは異世界で何をする?  作者: 鉄 桜
第一章・幼年期から青年期まで。
26/64

番外編~はっぴぃにゅういやぁ~

皆様。新年おめでとうございます。

昨年は様々な事がありましたが今年はそれらを見返すほどに素晴らしい年にしましょう。

今年度も鉄 桜をよろしくお願い致します。


そんなわけでお年玉話しをお一つ降下します。

テーマは”シュール”です。(え?)

では短いですが新年一発目をどうぞ!


皆の感想&評価&ネタ提供が作者の力になっております。

お気に入り登録数も増えて作者は狂喜乱舞しております。

評価得点よりも読者数が増えるほうが嬉しいですよね。


 


 


 これはとある新年を迎えた時のお話しである。

 …………。

 ……。


 冬。今日も今日とてアオイとエーデルは工房(アトリエ)に来たがその日は部屋の隅に設けられた和風セット(畳、炬燵、蜜柑など)に移動するとすぐに寛ぎ始めた。

 仲良く向かい合うようにして炬燵に入った二人。

 気温調整された室内だがその一角だけがとてもぬくぬくしている。


「明けましておめでとうございます。マスター」

「うん。明けましておめでとうございます。今年もよろしく、エーデル」

「幾久しく、私のほうこそよろしくお願い致します。マスターの従者として相応しい働きをしてご覧に入れます」

「大袈裟だってもう。そういえば父さんと母さんはどうしたの?朝から姿を見ないんだけど」


 アオイは炬燵の上にある蜜柑を取りながら思い出したように聞いていた。

 エーデルは急須とお揃いの湯飲みを二つ用意するとお茶を淹れながら答える。


「お二方でしたら早朝から“外”へ出ていらっしゃいます。何か急用が出来たとの事でしたが」

「そっか。年を越えたばかりだと言うのに忙しい事だね。一体“外”で何があったのやら」

「申し訳ありません。なにぶん突然の事でしたので詳細はお聞きしておりません。私もアーフから伝えられただけですので」


 申し訳なさそうにエーデルは淹れたばかりの緑茶をアオイに差し出しながら言った。

 アオイは『ありがと』と一言言うと落ち込むエーデルの顔を見て苦笑した。


「あっ、いいのいいの。少し気になっただけだし謝らなくていいって。いつもの事だしね」

「マスター……」


 寂しそうに笑うアオイを見てしまったエーデルは思った。

 本人はこう言っているが内心では悲しい寂しいと思っているのでは、と。

 折角の新年の初日なのに両親が仕事を優先したために孤独感に苛まれているのでは、と。

 とんでもない勘違いである。

 転生前のアオイは正月を炬燵の中で昼日中ぬくぬくするのが大好きな男だった。寝正月バッチ来いだ。

 寂しそうに笑ったのは初詣もできず初日の出も見られなかった事やお御籤や破魔矢を買えない事。更に言うなら紅白歌●戦がこちらの世界では見られないからだ。

 本当にとんでもない誤解である。

 だがそんな事は知らないエーデルは自分の考えを信じ込んでしまった。アオイ限定の真っ直ぐな思い遣りを発揮する。

 良くも悪くも彼女エーデルはいい女なのである。


「マスター、今日のご予定はいかがなさいますか?」

「特に無いかな。新年くらいはゆっくりしようかなって思ってたくらい」


 神妙な表情で聞いてくるエーデルに気になりながらもアオイは答えた。

 蜜柑を数粒食べると緑茶を飲む。ホッと一息。

 冬に炬燵。蜜柑にエーデルの淹れた美味しいお茶。最高だとアオイは思った。


「それではマスター、パーティーを開きましょう。参加者はマスターと私、シブリィとクスィ。シブリィ達の事もありますので場所は農業区画の広場が良いでしょうか」

「な、え?エーデル?突然どうしてそんな事を?」


 思わずきょとんとしてしまった。アオイはエーデルがなぜパーティーをしようなどと言い出したのかがわからなかった。

 怪訝に思ったアオイがエーデルをよく見ると彼女の表情はいつも通りだが少々活き活きしているように思えた。


「折角の新年の初日なのですから景気良くと考えたまでの事です。他意はありません」

「そ、そう。そっか。まあのんびりしようと思ってただけだから今日はエーデルの言うようにしてみようかな」

「では?」

「いいよ。パーティーしよう。楽しくなるといいな」


 押し切られたとも言うがどうせ今日は一日暇なのだからそれなら有意義に過ごしたほうがいいと考えた。同時に紅白は無いしとも思った。

 この男何気にとある声優歌手のファンだった。某魔法少女の雷少女が好きだ。具体的に言うと声が好きだったようだ。

 エーデルの声のベースになったのはアオイお兄さんだけの秘密だ。


「マスター。僭越ながら」

「ん?」

「パーティーは『楽しくなるといいな』ではなく『楽しくするもの』だと考えます」

「ははっ。確かに。確かにそうだ。うん、それじゃ楽しくしようじゃない。一緒に、ね」

「はい、マスター……」


 アオイは思った。エーデルは順調に学習して日々成長していると。

 たったそれだけで今日はいい日になると確信していた。


 


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 


 時間はお昼となり場所を移した。ここは農業区画にあるとある森の中にある広場だ。普段はアオイとシブリィ、クスィの絶好のお昼寝場所になっている。

 今はそこにエーデルが加わりパーティーの様相をなしている。テーブルの上には果実を絞った各種飲み物とエーデルがアオイのために腕を揮った料理の数々が用意されている。

 他にも、いやこれは後にしよう。


「そんなわけで“新年が来ちゃいましたパーティー~はっちゃけちゃいました♪~”を始めようと思います!」

「どんどん。ぱふぱふー」

「きゅるるるーっ!」

「わふっ、わぉぉんっ!」


 上からアオイ、エーデル、シブリィ、クスィだ。因みにエーデルは楽器ではなく自分の口でやっている。

 なぜこの場をアオイが仕切っているのか。それはエーデルが料理や会場の準備に追われていた事もあるがこの男がやると決めた時は突っ走るタイプだからだ。

 身内に限るが楽しそうな事はとりあえず手を出すのがアオイという男であった。


「料理と飲み物はエーデルが用意してくれました!ありがと、エーデル」

「きゅーるるー!」

「わふぅぅん!」


 そして感謝も忘れない。本当に身内には細やかな気配りが出来る男だ。身内だけ、というのがあれだが。

 シブリィとクスィもご馳走を前に大喜びだ。

 当初は反目していた二頭は幾度もエーデルと拳(爪?嘴?牙?)を交えながら親交を深めていたようで今ではある程度の友好を結んでいる。

 反目の理由は言うまでも無くアオイに関連した事だがここでは省く。一言で表すなら嫉妬だ。


「恐縮です。皆様のお口に合えばよろしいのですが」

「そんな事ないよ。綺麗に盛り合わせてあるしとっても美味しそうだ。シーちゃんとクーちゃんのご飯だって……うん、まあ新鮮そうだよね。血が滴ってるし……」

「程よい大きさに捌いたばかりなのでまだ新鮮です。下手に調理するよりもお肉をそのまま出したほうがシブリィとクスィは喜ぶと思いまして」


 自信がありますというように大きく豊かな胸を張ってエーデルは言った。

 まだ血も滴る新鮮な生肉。最初に『他にも』と説明を省いた品がこれだった。

 二頭の前には地面に置かれた大皿。そこには数種類の多くの生肉が盛られていた。


「一応聞くけど……何の肉、なの?」

「色々です。若いアルミラージ、雌のアクリス、カラドリオスの胸肉、ズラトロクの霜降り肉。他にもありますが詳しくご説明致しましょうか?」

「い、いやいい。それよりもお茶貰える?ちょっと喉乾いちゃった」

「畏まりました」


 エーデルが緑茶を淹れる様を見ながらアオイは先程彼女が挙げたお肉の種類を振り返っていた。

 アルミラージは耳の短い大型の兎で額に鋭い角がある。少々癖のある肉だが柔らかくて食べ易い。腿肉が特に美味。

 アクリスはヘラジカに似た外見をした草食系の魔物だ。雄よりも雌のほうが肉は柔らかく美味であるために肉食系の魔物によく狙われる。

 カラドリオスは大きなチドリの外見をした雑食の魔物だ。足は細くて肉は少ないが胸肉は癖が無くて食べ易いために小腹が空いた肉食系の魔物がよく食べている。

 ズラトロクはアルパカの身体に山羊の頭を持つ魔物だ。山岳部にて生息するズラトロクは肉質も良く、大変美味である。

 ヒトは食べないがお肉のどれも草食系の魔物が殆どで食べ易い上に美味である事から肉食系の魔物にはご馳走ばかりだ。エーデルは他にもあるような物言いだっただけに何があるのか気になるところだった。

 しかし流石に血生臭すぎた。山と盛られた血の滴る肉、肉肉肉。これだけあればシブリィとクスィは大喜びだろうがアオイ自身は生肉ばかり見に入って少々食傷気味だ。

 まだパーティーは始まったばかりなのに大丈夫だろうか。


 この後は楽しいパーティー……になるはずだった。


 


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 


 それが起こったのはパーティーも中頃になった時の事だった。

 シブリィとクスィが生肉を投げて互いに食べるという奇抜な事をやり始めた。

 エーデルは眉を顰めたがアオイが楽しそうに見ている事から敢えて何も言わなかった。

 だが我慢できない事態も当然あった。

 クスィの投げた生肉が放物線を描いてシブリィの居る場所とは別の方向へ飛んでいった。そこには運の悪い事にアオイが居たわけで――。


「あ?だむずっ!?」


 笑っていたアオイに命中して椅子から転げ落ちた。一塊あたり一kg以上の生肉が頭部に強打したのだからその威力は侮れない。

 この瞬間にエーデルの顔から喜怒哀楽全ての表情が消えた。シブリィとクスィは未だ時間が止まったように固まって動かない。

 会場が凍りついたように静まり返る。


「――――……」

「きゅるー……」

「くぅぅん……」


 エーデルが憎しみで相手を殺せるほどに『そこで大人しくしてやがれ』という目で二頭を睨み付けた。その冷たい目はまるで生ゴミを見るような目をしていた。

 萎縮した二頭は自分達に非がある事を理解しているだけにただただ頭を低くして謝るのみだった。

 エーデルは謝る二頭に構わずにアオイの傍へ歩み寄った。しゃがみ込みアオイの頭を胸に抱きかかえる。


「マスター。……マスター?」

「う、うぅん……」


 一度目に優しく二度目に少し強めに声を掛けて意識の有無と怪我をしていないかを確認したがアオイは呻く事はあっても目を覚まさなかった。

 エーデルは自身のセンサーをフルに活用してアオイの身体をスキャンしたが身体の内外に怪我もなければ脳への異常も診られなかった。

 それでも念のためにぺたぺたと触り隅々までアオイの身体を触診した。

 決して役得だなどと考えていないったらない。

 そうして診断を終わらせたエーデルはアオイが気絶しただけとわかり安堵した。

 そうして一安心したエーデルはアオイをもう一度柔らかい草原に寝かせた。気絶したアオイをしばし見詰めたエーデルは徐に立ち上がると――いつの間にか右手に刺々しいスパイクのついたメリケンサックを武装していた。

 自身に搭載された亜空間格納庫から取り出したメリケンサックは護身用と言うには些か以上に危険な代物だ。エーデルの膂力で使用しなくとも十分に撲殺と刺殺が可能な武器だった。


「きゅるるるるるる」

「くぅぅんくぅぅん」


 二頭がビクゥッと身体を硬直させるとガクガクブルブル震え始めた。何をされるのか想像して恐怖を感じたようだ。普段のアオイへの執着振りを知っているだけに余計に怖かった。

 メリケンサックを装備したエーデルは頭を低くして伏せるシブリィとクスィへゆっくりと歩み寄る。一歩、二歩とゆっくりと近付くエーデルに二頭は更に恐怖を募らせる。

 近付いてくる。逃げなくては。だが二頭は動かない。否、動けない。

 それはエーデルの空間操作によるものだ。二頭の周囲数個所の空間を歪ませて固定化していた。伏せの状態で拘束された二頭は文字通り微動だにできなかった。


「きゅるー!?きゅるきゅるっ!!」

「わふんっ!くぅぅんくぅぅん!」

「黙りなさい。私には貴女達が何を言っているのかわかりません。然るに沈黙し潔く絶対の制裁を下されなさい」

「きゅるるーっ!?」

「わふぅーんっ!?」


 この何が起きたのか。それを知る者は一体の機械人形と二頭の魔物以外に居ない。

 ただ言える事は肉を穿つ打撲音が一定間隔で響いていた事とその度に悲痛な悲鳴が聞こえた事か。


 アオイが目を覚ましたのはこの一〇分後の事だった。


 


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 


「事情は理解したけど何もここまでする必要はなかったと俺は思うんだけどな」

「確かに“少々”過ぎた行ないだったかもしれません。その点は申し訳ありません」

「いや、“少々”じゃなくて“大分”だから!目を覚ました時に血塗れパーティーとか笑えないから!」


 アオイが目を覚して最初に目にしたのは鮮烈な赤だった。起きたばかりで朦朧とする中で次に見たのはエーデルがアオイに背を向けて何かを殴りつけている所だった。何かを殴ると血飛沫が舞っていたのがアオイには妙に印象に残った。

 が、殴りつけられた何かが弱々しい悲痛な鳴き声が聞こえた事に眉を顰めた。聞き覚えのある声だったからだ。

 徐々に意識がハッキリとしてきてこれはおかしいと思い起き上がり背後からエーデルに近づく。

 ピクッ。

 殴りつける動作のまま制止した。エーデルが気づいた。振り返った彼女の白い頬は鮮やかな赤色が彩っていた。

 エーデルはそのままの体勢で言った。


『おはようございます。マスター。お加減はいかがでしょうか』


 普通だった。それに『大丈夫』と返す。いつものエーデルだ。だがアオイはふと思った。いつもの光景なのにどうしようもない違和感を覚えた。

 アオイは何が気になったのか視線をめぐらせて考えた。そしてエーデルの背後を見て納得した。真赤な何か。シブリィとクスィが真赤な肉塊に変わっていたのだ。

 アオイは声も出ず息をする事も忘れ絶句した。

 二頭ともまだ辛うじて生きているのか胸が上下している。か細くとも息をしている事がわかった。

 アオイは二頭へ急いで駆け寄った。医療スプレーや傷を癒す回復魔法を惜しげもなく使った。魔法を使う際には母から貰った魔法制御の安定化を付加された琥珀色のブローチが砕けそうな負荷を得るほどに尽力した。

 そして現状に至る。更に当の本人と言えば今は小首を傾げて何がいけなかったのかわかっていない様子だ。


「あの程度は日常茶飯事、いつもの戯れです。マスターのお心を煩わせるほどの事でもありません。どうかご安心を」

「できないよ!?つーかもうそれ仕舞おうよ!猟奇的過ぎて怖いって!」


 今もポタポタと血が滴るメリケンサックを握るエーデルに対してお願いするように叫ぶアオイ。

 完全に回復したシブリィとクスィはアオイの背後で今も震えている。大きな体躯を持つ二頭は隠れ切れていない。

 それらを前にエーデルはまたも小首を傾げている。

 アオイに『それ』と言われたものを装備した手を頬に当てる。

 それからアオイへ困ったようにして――。


「???それ、とは?」


 ――聞いた。

 素直な問いだった。子が親へわからない事を聞くという純粋な疑問だった


「わかってねーっ!?」


 それに対してアオイは叫んだ。頭を掻き毟りながら悲鳴に近かいアオイの叫び声を聞いたエーデルがオロオロと動揺している。

 とある年に行なわれた新年パーティーはこうして終了した。

 アオイの新年の印象、それは『赤かった。とっても。フフフ……』だった。その時のアオイがとても虚ろな目をしていたのは見間違いである。たぶん。


 


 皆様も今年度も良きお年をお過ごしされますように。

 フフ、フフフ――。







なぜこうなった……。(こゆい顔でゲンドウポーズ)

当初はシュールなりにキャッキャッうふふふなラブコメを書く予定だったのになぜか流血沙汰に。

作者は純粋な正統派ヒロインが好きなのに!(ドヤ顔)

なぜ作者の書く女の子は少なからず血を求めるのだ!?

おかしくないか!?おかしいよな!?おかしいよ!!

というわけで今年の抱負、と言っても『小説家になろう』内での抱負ですが決めました。

今年の抱負、それは……『正統派ヒロインを書きたい!』です。

あっ、間違えた。正しくは『正統派ヒロインを書く!』です。

心機一転して作者は!(以降長いためカット)

…………。

ちょっと待って。今誰だ?

『プッww鉄 桜がヤンデレ以外書けるわけねーよww』って笑ったのは!?

やれるって!がんばればやれるって!やれる、よな……?

あっ、えっと、今日はここまで!

ではでは。


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