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アナタは異世界で何をする?  作者: 鉄 桜
第一章・幼年期から青年期まで。
24/64

番外編・クリスマス~あっ、砂糖吐いた(嘘)……~

めりぃくりすまぁす!!

オリジナル初めての記念作品です。

尤も最初に書いたのは年越し作品でしたがね。(え?)

もう年末です。皆様も今日は良き日になるといいですね。

ではどうぞ!


皆の感想&評価&ネタ提供が作者の力になっております。


 


 


 惑星ミッドガルド。アース大陸の南西に位置する地下施設“家”がある。

 その地下の一角にある工房(アトリエ)でアオイがいつもの開発作業をしていた。

 エーデルも助手としてあっちへこっちへ忙しなくだけど静かに動き回っている。


「クリスマスか……」


 そんな時に呟かれたアオイの一言。

 哀愁の篭った声に作業の手を止めたエーデルは妙に気になった。


「マスター。“くりすます”とはなんなのでしょうか?」

「え?あー、えーと。確かとある世界の宗教だったかな。年に一度に行なわれる聖人の降誕祭だった、はず」


 食いついてきたエーデルにやや引きながらもアオイは記憶もうろ覚えになっている知識を引っ張り出した。

 大分説明を端折ったがそれも仕方ない。何の因果かこの世界に転生して数年が経っているのだから。

 加えて言うならアオイはそこまで宗教に詳しくも無かった。元日本人らしく無神論者だからとも言えるがこの男は特に宗教を苦手としている。

 それというのも生前にしつこいくらいに宗教の勧誘にあっていた事も関係している。毎年自宅まで何度もしつこいセールス並みに来たら誰でも辟易するだろう。

 だが本人は歴史好きと言う。意味がわからない。偏屈の素質を持っていた。

 どうでもいい話か。

 それでもエーデルはアオイの説明を聞いて目をキラキラさせて感心している。


「他世界ではそのようなお祭りもあるのですね。マスターは博識でいらっしゃいます」

「そんな事無いって。説明も大分端折ったし。それに俺の知るクリスマスはお祭り騒ぎのバカ騒ぎであって、本来は静かに祝うものだったはずだ」


 思い出すのは日本のクリスマスだ。色々な国の様々な特色を取り入れた日本がクリスマス一色に染まっていた。

 サンタの着る赤い服と深々と降る雪の白に彩られた街。

 様々なクリスマスアイテムの数々をライトアップする光。

 ケーキ店の前で売られるクリスマスケーキ。

 店の前や広場に立つサンタの格好をしたアルバイトの人。

 クリスマスプレゼントを買い求める恋人や家族。

 思えばあれはお祭り騒ぎする理由が欲しいだけだったのかもしれない。企業の陰謀と言ってもいい。日本人の特色とも言えるが、まあ今となっては関係のない話しだ。

 内心で苦笑するアオイにエーデルは更に疑問を投げかける。


「バカ騒ぎ?静か?どちらにしてもお祭りなのですからよろしいのではないでしょうか」

「まあね。どちらかというと騒げる理由が欲しいだけだった気もする。恋人同士で一夜を過ごすなんて理由もあったような――」


 時が止まったような錯覚がアオイを襲った。気温も下がるような威圧感。

 威圧感の正体はアオイの説明を聞いていたエーデルからだ


「マスター」

「え?」


 エーデルがアオイを呼んだ。久しぶりに聞いた平坦な声色だがその内には隠し切れない期待の色があった。

 呼ばれた当の本人はなぜ自分が威圧されているのかがまるで理解できていない。精々がなにか気に障る事を言ってしまったのかと思うくらいだ。

 エーデルはアオイの正面に来ると肩に手を乗せて至近に寄っていた。


「その部分、最後の件ですがもっと詳しく説明をお願い致したいのですがよろしいですね。……間違えました。よろしいですか?」

「え?え?お、俺も詳しくはわからないよ?それでもよかったらだけど」

「構いません。マスターの知る限りの知識をご説明頂ければそれで」

「あーうー」


 もう少しで唇も触れ合いそうなほどに接近したエーデルにアオイはドギマギしながら洗い浚い白状した。勿論暈すべき部分は置き換えて説明したが。

 とは言ってもあくまでうろ覚えの記憶でしかないために大したものではない。

 それでもエーデルは真剣にアオイの説明を一言一句聞き逃す事無く聞いていた。

 そのまま十数分ほど続いた説明も終わるとエーデルは緑茶を淹れてアオイを労いながら今説明された事をまとめていた。


「――なるほど。極論ですがクリスマスとは恋人達が過ごす聖なる夜なのですね」

「簡単に言えばね。細かい部分は違うだろうけどそんな感じだった」


 アオイは受け取った緑茶をふぅふぅと冷ましながら口をつけてホッと一息吐いた。

 どうでもいいがアオイは疑問に思った。エーデルはなぜにその部分を強調して覚えたのかと。

 他にも説明したのに結局落ち着いたのがリア充の話しに落ち着くとはあれか?恋人も居ない自分に喧嘩売ってるのか?俺だってこんな子供の身体じゃなければ恋人くらい欲しいよ!!

 内心で心の底から絶叫するアオイは理不尽な思いに苛まれていた。


「十二月二五日という事は一週間後ですか。ふむ……」

「なに?どうしたのさ?」


 空間ウインドウを展開してカレンダーを確認すれば確かに後一週間で地球で言う所のクリスマスだ。

 突然だがこの世界、惑星ミッドガルドでは地球の暦と殆ど変わらない。

 春夏秋冬。一月から十二月。一月は三十日前後で一年は三百六十五日だ。地球と違うのは衛星の月が二つある事だけ。

 エーデルが知らなかったようにこの世界にクリスマスはない。故に祝う必要もないためにアオイには関係ない。

 それでもエーデルは意外なほどに真剣に黙考していた。

 考えが纏まったエーデルは顔を上げた。


「いえ、その日までに贈り物をご用意しなくてはと思いまして」

「は?いやいや、いいって。今からじゃ大変だろうしさ。エーデルにも迷惑でしょ」


 アオイはドキリとした。

 美人のエーデルからプレゼントが貰えると思ったら心臓が一瞬だけ跳ねていた。

 同時にふと思い出しただけのクリスマスの事でそんなに真剣に考えなくともいいとアオイは内心で慌てふためいてもいた。

 エーデルはそれにも関わらず作業に使用していた工具や素材を保管していく。

 まるでこれからの予定が今できたという風だ。


「マスター。お気遣いは有り難いです。嬉しくも思います。ですが私はマスターの従者として。いえ、エーデル・シュタイン個人として是非ご用意させて頂きたいのです」

「え、あ、ありがとう?」


 真剣に真っ直ぐに目を見て言われたためにテレたアオイは思わずお礼を言ってしまった。

 もう一度顔が触れ合いそうな至近だった事も関係している。

 精神が身体に引張られているようだ。とても初々しい反応をする。


「ご了承頂きありがとうございます。それでは私はここで失礼致します。贈り物をご用意致ししなければなりません」

「え?あっ、ちょっとエーデルっ」


 そう言うとエーデルは足取りも軽く工房から出て行った。

 置いて行かれたアオイは少々呆然としてから頭を掻いた。


「行っちゃったよ……」


 嘆息一つ。さてどうするかとアオイは考える。

 助手を務めていたエーデルが居ないなら作業効率も落ちる。仕方ないので作業をいい所で切り上げて和風セットのスペースへ行って炬燵でぬくぬくする事にした。

 炬燵に入ってホゥッと一息吐いた。

 エーデルが何を用意するのかわからないが少し楽しみになったアオイだった。


 


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 


「――で、自室でクリスマスパーティーすると?」


 一週間後。エーデルに告げられたのがこれだった。


「はい。本来でしたらマスターのお話にあったように星空の望めるホテルなどがあればよろしかったのですが現状では無理ですので次善策としてマスター(恋人)の部屋に致しました」


 次善策も何ももうアオイの自室にはテーブルと椅子が持ち込まれてその上には二人分の料理と飲み物が用意してある。

 十二月二十五日。エーデルに何も言われずに一日も終わったアオイが部屋に戻ったらこの状況だった。

 更に室内はアオイの説明通りにクリスマスらしく装飾されている。

 ここでアオイがふと違和感を覚えた。今のエーデルの台詞の中に気になる部分があった。


「今俺の名前の読み方に違和感があったような……」

「気のせいでしょう。もしや軍団(レギオン)シリーズの開発でお疲れなのでは?」

「え?そうなのかな。なんかそういうのとは違うような気がしたんだけど……」


 疲れていると言われれば否定できない、とアオイは思う。

 この一週間は多くの時間をエーデルとは別行動であったために時間を忘れて作業に没頭していた。

 エーデルと一緒に行動するようになってからは生活習慣も改善されていたのだが――。


「お話しを続けてもよろしいでしょうか?」

「ああ、ごめんごめん。それで?」


 浅い悩みを深く考え込み掛けた時にエーデルの一言でハッとすると思考を振り切った。

 エーデルを放っておいてしまっていた事にアオイは微苦笑してしまう。


「モミの木という種類は見つかりませんでしたので農業区画内に類似した木が無いかシブリィ達に探させ鉢植えに植え替えました。それを装飾し星を象った飾りを乗せてみたのですがこれでクリスマスツリーに見えますでしょうか?」


 何分初めてですので、とエーデルが伺うように見ていた。

 アオイはエーデルの装飾した部屋を見回して確認した。

 戻ってきてから気にはなっていた。室内の一角に装飾された全長二m前後の植木鉢がある事を。

 近付いて更に観察してみた。


「確かに常緑針葉樹の木だし飾りも言ったとおりだ。十分にクリスマスツリーに見えるね。すごいよ、エーデル。話して聞かせただけなのに」

「お褒めの言葉恐悦至極です。ささ、料理も腕によりをかけてご用意致しました。お話にあった鳥の丸焼き、ケーキや飲み物。他にもありますのでどうかご堪能下さいますよう」

「うん。それじゃ、いただきます」


 アオイとエーデル。二人がテーブルを挟んで向かい合い席についた。

 互いにグラスに飲み物を注ぎ合ってから乾杯して一口飲む。料理も食べた。

 全てエーデルが用意しただけあって上等な味わいだった。


 ここに異世界で初めてのクリスマスパーティーが始まった。


 


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 


 クリスマスパーティーが開始してから二時間が経っていた。

 突然だが少々おかしい事態になっている。


「さあマスター。もう一献」


 アオイの前でしか表情を見せないエーデルが今は嬉々としてアオイにお酌をしていた。


「ぇあ?悪いねー。おとととっ。んぐんぐっ――ぷはぁっ。美味い!料理も美味しいし美人にお酌してもらってると尚美味しいね!」


 飲みきってからアオイが顔を真っ赤にして言った。

 何度グラスを干したのかわからない。

 それだけならともかく今のアオイは明らかに思考がまともではない。


「美人などと。光栄です、とても。敬愛するマスターにそのように思ってもらえるとは」

「もう!エーデルは可愛いなぁ!そんなに可愛いとぉ、ほぉらギュッとしちゃうぞ!」


 隣でお酌をするエーデルにアオイは抱き付いた。

 そのままアオイは無意識にエーデルの身体に回した手が彼女の胸にむにゅむにゅと触れている。形を変えても直ぐにプルンと元に戻る。

 エーデル・シュタインの乳は化け物か!?……などとは言わない。

 アオイが胸に触れる度にエーデルは顔を赤らめて未知の刺激に身体を震わせながた耐えている。


「ぁ、んっ!マ、マスター、そこはっ。お戯れは困ります。これではお酌ができません」

「んんー?ダメ?イヤなら止めるよぉ?」


 そう言うとアオイはピタリと手を止めた。しかし胸は掴んだまま停止している。

 まともに思考できていないにも拘らずこういう時は不安になったようだ。

 この男は事女性関係では肝心な部分でヘタレであった。


「イヤ、などとは言いません。い、意地悪しないで、下さい……」


 対してエーデルは恥じらいながらも『イヤ』とは言わない。

 寧ろ先程から感じているこの未知の快感にもっと身を任せたいとすら思っている。

 アオイに触れられた部分が今も正体不明の熱を持っておりナニかを求めているような焦燥感がある。

 もっと、もっともっと、触って下さい。マスター……。

 これがエーデルの偽らず心だ。


「ええ、そうです。寧ろこれは作戦通げふげふっ、まだ料理も飲み物も残っておりますよ。さあもう一献」

「おっと確かにそうだったぁ!これはうっかりだね!おとととっ。んぐんぐんぐっ――ぷはぁっ!やぱり美人にお酌してもらったジュース(・・・・)は美味しいなぁ!」

「そうでしょうそうでしょう。このジュース(お酒)は美味しいですよね。たんとお召し上がり下さいな。さあもう一献」


 折角のお触りを止められてしまったエーデルは欲求不満の身体を持て余していた。

 まだ酔いが足りないと判断したエーデルはジュースという名目のお酒を素知らぬ顔で注いでいく。

 それほど強いお酒ではないがそれでもまだ子供のアオイを酔わせるには十分だ。

 グラスの中身を飲み干す度に何度も、何度も何度も注いでいた。

 そして今アオイは目をぐるんぐるん回している。

 いい感じに酔いが回ってきたらしい。


「うん!んぐんぐんぐっ――ぷはぁぁっ。美味しいねぇ。あえ?エーデルが二体に、三体増えて?うぇあ?」

「……そろそろ頃合でしょうか(ボソッ)」


 エーデルの目がキュピィィンと光った。まさに獲物をロックオンした肉食獣の目だった。

 エーデルはお酒をテーブルに置くと泥酔状態のアオイのグラスも取り上げた。


「マスター。マスター?」

「んにゅ。えーでるぅ……?うにゅぁ」


 声を掛けるも酔いが回ったアオイは思考が鈍り意識も半ば朦朧としていた。

 エーデルが内心で計画通りだと確信しニヤリと笑んだ。

 後はこのままベッドインしてしまえば、と内心でクツクツと笑っていた。

 注意しておくがエーデルは決してショタではない。アオイならどんなジャンルでもイケる(・・・)だけだ。

 一種の変態とも言う。頭に“狂信的な”が付く。


「大変です。さあマスター、ベッドはあちらですよ。お一人では無理でしょうから私にお摑まり下さい」

「ぅ、ん……」


 先程揉まれた胸がジクジクとした熱を持っていて我慢できなくなっていた。アオイを抱きかかえてベッドへ運びながらもエーデルは身体を擦り付けるように運んでいる。

 それは恰も動物が自分の匂いをマーキングしているようにも見えた。

 するとどうだろう。抱きかかえられたアオイがエーデルの胸をやわやわと触っていた。


「んっ。マスター、そこはむねっ、ぁんっ。そんなに強く揉まないで下さい。気持ちい、ゃんっ。聞いていますか、マスター?」

「ぇ、あ?」


 ただでさえ微熱を持っているのに更に未知の快感を与えられてエーデルは足腰の力が抜けかけていた。

 それでも揉む手が止まらない。

 エーデルは一歩一歩踏む出して歩くが足がプルプル震えている。

 それでも抱きかかえたアオイは降ろさないあたりエーデルの意地のようなものを感じる。


「も、もう直ぐベッドですからどうせなら続きはそちらで――んんっ!?」

「くぅ……くぅ……」

「ぇ……!?」


 だというのに寝ていた。アオイは既に寝ていた。

 漸くベッドに運んで降ろしたと思えばくぅくぅと寝息を立てていた。

 折角話しを聞いた一週間前にイングバルドに相談して『プレゼントは私です♪』という計画だったのに最後の最後に頓挫してしまった。

 エーデルは今絶句して思考回路がフリーズ状態に陥っている。


「え?あれ?マスター?」


 アオイの異世界で初めてのクリスマスは寝オチという終わり方をした。

 お疲れ様、エーデル!君の幸せはきっと来るさ!

 アオイと精霊様(作者)次第だけどな!!







まだ子供のアオイがにゃんにゃんするわけないだろ!!

というわけで寸止めっぽい感じになりました。エーデル的にww

読者はもっとぇろぇろなお話を求めるのかわかりませんが……。

折角のクリスマスですから作者はこれくらいがいいと思いました。

聖なる夜が性なる夜(笑)になってしまいそうで怖くて怖くて。

ではでは。


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