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1/12 届かないもの
昨日よりも少し色褪せた空を目の前にお気に入りの歌を流して、私は車に乗っていた。
軽くその歌を口ずさみながら、思い返す。
私は、自らの価値相応で満足できない人間だろうなということを。
異性だって、才能だって、人付き合いだって、それほど自らに価値はない。
なのに、望んでしまうのは自分の価値よりもさらに高みで。
幼い頃を思い返したら、今はずいぶんと妥協してきたつもりなのに、思い浮かぶものは遠く、どう考えても私相応ではない希望。
叶わない希望を望むのは辛いから、やめればいいのに。
その瞬間、視界の横で猫が家の塀とコンクリートの小さな隙間を抜けた。
また歩き出す猫を見ても、やはりそこを抜けたとは到底思えない大きさのがあるのに、その猫は飄々と抜けていった。
猫は本当に液体だったりするのかな、なんて。
私も飄々と予測を抜けられる猫になれたらな。
なんて。




