ドラゴンは姫の生誕祭にやってきて、名づけた。
短めです。
ドラゴンが住む山がある西方辺境伯領。春のある日。
姫の3度目の生誕祭の際にドラゴンはやってきた。
辺境伯領の人々は、自分たちの信仰する山の神が現れたので例年以上に盛り上がり、酒を飲み、狂乱した。
ドラゴンは祭り(人間の狂乱)が好きなので、魔法で小さく(体高3~4mくらいに)なって一緒に肉を食ったり、祈られたり、雄たけびを上げるなどした。ドラゴンの「ぐがおおお」の後、人々も「ぐがごおおお」と叫ぶ。中には魔力を込めて叫び、倒れるやつもいる。まともでない人間だ。けれど、ドラゴンはそういった人間の振る舞いが好きなので、この祭りにおいては正しい振る舞いである。
ドラゴンの近くに立派な服装の男がいた。辺境伯である。
「我が主、ドラゴンよ。私はこの地を治めるアランと申します。盟約を結んだアランの孫です」
「アラン、良い祭りだ。気分いい」ドラゴンは辺境伯の名を知ったので声をかけた。
ドラゴンは専用の酒樽に首を突っ込んで酒を飲んでいる。酒だ、酒だ。
「我が主よ、一つ望みを叶えていただけますか?」
あ?とドラゴンは思った。が、気分がいいのでとりあえず酒を飲み干すことを優先した。ごぶごぶ。
ドラゴンが酒樽から首を抜くと、子供のが乗った神輿がわっせわっせと運ばれてきた。
「猛々しく、寛大な我が主よ、私の娘に名をつけてくれませんか?」
アランは口の渇きを覚えつつ、落ち着いた調子を崩さず願いを伝えた。
ドラゴンは花まみれの娘(この地方は春の祭りで花まみれになりがち)を眺め、言った。
「花子」ドラゴンは白い小さな花が気になっていた。ハナコが握っている花。
アランはドラゴンの視線の先をみて、頷く。良い名だ。さすが我らのドラゴン。
アランは娘を抱き上げた。ドラゴンを前にして堂々と花を口にいれ、もぐもぐしてる姫を。
「マルグリット(ハナコ)!ドラゴンに祝福されし姫!みな、マルグリットを祝福せよ!」
ドラゴンは、ん?と思ったが、目の前に捧げられた焼き豚を丸かじりしていた。
「マルグリット姫!万歳!この地は祝福され、永遠の繁栄が約束されたぞ!」
アランは涙を流し、叫び、姫に頬ずりし、イヤイヤされていた。
また、家臣は声をそろえ、歓声を上げ。領民は祝福を叫び、姫を一目見ようとわあわあ駆け寄り、酔ったやつが暴れ、慌てた護衛の兵に斬られたりした。
それでも人々の興奮は収まらず、マルグリット姫はすごい、やばい、祝福されている。3歳児だがすでにオーラが違う。青い瞳から底知れぬ知性を感じる。艶やかで淡く白い金髪、日に照らせれ、風にそよぐあの髪を見よ!見ろよ!地上で最も美しい姫様になるぜ!おい!やべぇな!ああ、それに、この混乱の中、花を食っているのは肝が据わっている。大将の器である。姫将軍の指揮下で戦いてぇなぁあ、などと妄言が飛び交う。
おらが街の姫様はすげえんだ。と人々は誇らしく思い、感激し、酔い、テンションが上がり、辺境伯の主都にあるドラゴン教会と呼ばれる建物にに駆け込み、二次会のノリで、司祭や修道女に食べ物や金銭を渡して共にに騒いだ。司祭のドラゴンの鳴きマネは大変上手で、盛り上がった。
ドラゴン教会は70年ほど前(この地域が落ち着いてきた頃)、やってきた正教の高僧(司教位)がドラゴンを見て、驚愕し、話して、感激し、優れた学識によって地元のドラゴン信仰と正教の教えを合わせた正教の新派を唱え、熱心に広めた。もちろん正教からすれば、異端であるがこの地の人々は気にしていない。
地元民はドラゴン教と呼んでいる。ドラゴンもドラゴン教が良いと思ってる。
マルグリット紀3年 姫は名を授かった。
その数か月後の夏、側妃が男児を出産した。
2/9 修正




