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ドラゴンは鐘の音が好きだ

やっとドラゴンメインですわ

王国の首都で暴れてまっせ

 ある日の、明け方ごろ、ドラゴンは目についた大きな教会をぶっ壊した。

なぜなら、鐘塔(尖塔でもある)がドラゴンより頭一つ高かったからである。空からでも何となく高さがわかる。あの塔、ドラゴンより高くない?と。

なので、ドラゴンは教会の広場に降り、むっくり起きると、その強靭な足腰をいかしたタックルをお見舞いした。

 ガラン、ガランとやかましく崩れる鐘塔。

 ドラゴンはおもろくなって、口を手でふさいだ。

そのため、鼻の穴から炎が漏れた。ぶふっ。

 今更であるが、鐘塔である。鐘を鳴らす塔だ。地球で有名なのはノートルダム大聖堂の双塔。北塔・南塔であろう。1240年、北塔が先に完成した。ノートルダム大聖堂の鐘が初めて鳴ったのは1198年らしいので、別の尖塔で鳴ったのだろう。へぇ、という感じである。とにかく、人間の文明というか、建造技術は、地球の西暦1200年くらいまで進んでいるらしい。


 もちろん、ドラゴンには関係がないので、暴れる。荒れ狂う赤子の如く。力があり余っているのである。

 大きな町の教会でドラゴンは建物を壊すことに夢中になっていた。

大きな町、街だ。国の重要な商業地で活気がある。この街は石造りの建物が建ち並び、商店が軒を連ね、立派な城もある。立場の高い人も多く居る。もちろん、日銭で暮らす酔っ払いや、歯のない犯罪者や、性病の美人や、豚を追うガキやらが無数に居り、そこに住む人は誇りを持っていた。何に?王都の住民であることにだ。

 

 すっかり日が昇ったころ。ドラゴンは教会跡地の瓦礫に、気分よく糞をぶっぱなし、広場で寝ていた。足を折りこみ、お腹を地面につけて目を閉じている。

猫の香箱座りに似た姿勢である。ドラゴンはどこでも寝れる。むしろ、暴れた後、壊したものの近くで寝ることが多い。最強の存在なので。どこで寝ようがドラゴンの勝手なのだ。


 勇ましい人の声や金属音がドラゴンに聞こえた。ドラゴンを追い払おうと兵隊がきたのだ。ガシャガシャした金属音の多さで、今までで一番強く豊かな国の兵隊であるとドラゴンには分かった。今まで遊んできた人の国の中では最も強い。


 しかし、ドラゴンからすると誤差だ。


 例えば健康な85歳のご老人が翌年86歳の健康なご老人になるとする。めでたい話であるが違いが判らない。ご老人も「死が近づいただけやし、祝わんでもええで」なんていうが親族からすれば、祝わないなんてできない。ご老人が1年生き延びた。これはうれしい話だ。だから我々は祝うのである。ご老人の感想はどうでもよろしい。と親族はいうであろう。それはええねん。でも、親族もご老人が去年も今年も年寄りであることに同意するだろうし、1年健康に過ごしたご老人の変化について聞いてみたら、「一緒ちゃう?知らんよ。あんま、わからん」と答えるであろう。

例として適切では無いかもしれんが、ドラゴンからみた人間の兵隊の差というのはこの程度。

 脆くて弱い、死に近い存在。

コケて骨折して、歩けんくなって、気が弱って死んでしまう。か弱い老人と同じだ。

 立派な金属の防具を付けた壮年の男性もドラゴンがつつけば、防具はへしゃげ、骨折、内臓破裂。そして死ぬ。同じだな。

 ドラゴンがいる世界には魔法がある。だからドラゴンは飛べる。

もちろん回復魔法もある。

 けれど、この世界の回復魔法は、擦り傷を治したり、労働の疲れをとったり、二日酔いを治す程度の効果しか持たない。

 大きな外傷、つまりドラゴンによる裂傷、欠損、やけど、骨折、内臓破裂には対処できないのだ。なので兵士は死に、残された遺族は悲しみ、父あるいは夫や息子を連れて行った地方領主やその上の大領主、いわゆる国王を憎んだりする。


 ドラゴンを憎む平民は少ない。だってしゃあないやん、ドラゴンやし。あれはそういう存在だもの。と一般的平民の認識はこのようなものだ。大災害という感じだろう。


 ドラゴンが国を滅ぼしたというが、焼き尽くし、瓦礫の上で咆哮をあげるみたいな感じではなく(まぁ、そういった風景も多々あったが)、ドラゴンがきっかけで国が滅んだといったほうが正確だろう。


 ドラゴンがある地方でおもろがって暴れる。地方の経済が鈍化し、税は集まらず、人は家をなくし、食料を奪い合い、治安が悪化し、目が血走り、殺し合い、なんも対処できない領主にキレ、焼き討ち、民衆反乱。

 領主は上の大領主に助けを求めるが、大領主(国王)もドラゴンが怖い。うちの領地に来てほしくないので、適当に資金援助とか、亡命を援助とかでガッツリ軍を送ったりしない。送ったとて、事態は悪化。ドラゴンがムカつき、さらに大暴れする。そうこうしてるとドラゴンが飽きて別のほうへ飛んでく、するとドラゴン災害地方の領主は助けてくれない国王を恨み、別の派閥に鞍替えしたり、隣国の援助があれば感動し、別の国の庇護下に入ったりする。となると、元居た国と隣国で戦争になる。さらに広範囲で、経済が鈍化し、税収は減り、無理に税を徴収し、人々は食うものがなくなり、目が血走り、キレ、庄屋を焼く、テンションが上がる。一揆じゃい、貴族を殺し、貴婦人を犯す、お姫様も女でござんすなぁ、ぐひひ。となる。末法の世の中になる。国が亡ぶ。みたいな。

 ドラゴンはきっかけで、人々が苦しみ、我慢し、無理になり、キレて暴れて、熱狂して、めちゃくちゃになる。


 そんなこんなで、異世界は争いが絶えないのであった。


ドラゴンはぐうすか眠っていた。


 そういえば、今より少し前、寝る前に大鐘を口でくわえ、街の中心地へ放っていた。なぜなら、ドラゴンは教会の鐘が勢いよく地面や建造物に衝突した際に鳴る音が好きだからである。あほみたいな爆音、どがががーんやぐごごごーんのような馬鹿音を聞くと笑ってしまう。おもろ。そして安らかなお昼寝をする。おお、まさしくドラゴン。気分がよい。ふほっ。


 ずごかーん!ずん、ずどどん。


 ドラゴンの顔面に衝撃が走った。


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