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西方辺境領の大まかな歴史と、姫の誕生祭と重なる慶事

つづきです。

 大体100年ほど前まで、西方辺境地に別の国があった。つまり独立国があった。


 そこにドラゴンがきて、めちゃくちゃになり、国が滅んだ。

ドラゴンが生んだ政治的空白地帯、そこに当然、王国が兵を進めた。早い者勝ちである。

 ドラゴンもどこかへ行って、残りは地元の小豪族の集まりみたいなもんだから、ウハウハやぞ。俺は歴史に名を残す。と、当時の王様は前のめりでフガフガ。

楽そうな侵略戦争に略奪、凌辱、楽しむぞ!と兵も浮足立つ。


 王国軍は西方辺境地へ入ると、さっそく、大規模な賊と戦となり、蹴散らす。この賊は新たな王を自称していたが、これは本当にただの賊で元貴族でもなかった。それほど、当時の西方辺境地は荒れていたのだ。


 兵を率いていた王様は有頂天で追討戦を指示し、自らは近くの村に兵を進め、本陣とした。

 王様は村の屋敷を接収し、そこで寝ることにした。

村長は亡国の貴族だった。王様は村長を殺した。抵抗したので。

そのあと亡国の貴族の未亡人で遊んだ。その女を泣かせながら、王様は頭を悩ませた。新領地をどう差配するか。いやー、困ったなぁ、うれしいけどデカすぎるし、親族にやるにもいい年頃のやる思い当たらんし、どないするかな。


 翌日、王様が朝食をとりつつ、配下と談笑していると、なにやら喚き声が聞こえた。

屋敷の扉が乱暴に開き、北方領の使者が飛び込んで来た。援軍求むだ。旗でわかる。

 王様は西方から手を引くことにした。急使いわく、北方蛮族が大軍で砦に攻め入ったそうだ。去年、族長と和平を結んだはずだ。融和派の族長が殺されたのか?何なんだ、クソが。

 王様が軍をまとめるよう指示を出していると、別の急使が来る。

続報は、北部国境の砦は抜かれたそうだ。ああ、クソ、蛮族ども、醜く、毛だらけの人間以下の化け物どもが!と喚きたいが王様は歯を食いしばり、奥歯を噛み折った。血を飲み込み。大声で撤退を指示した。本陣から十数人の伝令が駆け出した。伝令は追撃している領軍に追いつかないといけない。大急ぎだ。


 王様が信頼する将軍は、王様の「頼む」の一言で、手元のスープと黒パンを掻き込み、少数の騎兵を連れ、王旗を掲げて北へ向かった。王の代理として、少数の援軍で北部領主の信頼を得るため、将軍は陣頭で戦った。その後、7日間で、将軍は7回の勝利をし、戦死した。


 西方辺境地へと侵攻が始まる前に、王様はいくつかの現地勢力と連絡を取った。

撤退を決めたのちに、やっと連絡を返してきたやつらもいた。

 その内に、亡国の王子からの使者も来た。王様と面識のある、というか、娘をやった聡明な王子と娘が生きていたことを喜び、使者を走らせ、爵位をあたえ空白地も丸っと与えた。兵も貸した。指揮権をやった。追討戦で西方の奥地(王子の拠点近く)にいた王領の兵だ。


 王様は撤退してくる味方に、自国との国境付近の西方辺境地を焼く、つまり、近所の村を略奪し、物資を補充するように指示し、援軍を編成しながら北へ向かった。物資を補充した地方領軍は北へ向かったり、領地に戻ったりした。後者は後に、領地を没収された。


 西方に残された王子は勇気があり、顔がよく、人を説得することが得意であった。

声を伝達する魔法が得意で、戦も巧みにこなした。王子は勝ったり負けたり裏切られたり、30年余りをかけ西方辺境領をまとめ上げた。大変な傑物である。


 この亡国の王子というのが、辺境伯の祖父である。

そして、辺境伯の母は、南方の隣国の大貴族の娘である。

この大貴族というのは、南方の隣国の王家の親族である。


 簡単に言うと、辺境伯は南方の隣国の、今の王様のいとこであった。

南方の王様の親戚なので、南方の国境沿いの貴族たちの中には、辺境伯の庇護下に入ろうかな。

など、そんな気持ちを持つやつもいる。少数派の、巧妙な立ち回りをする小領主だ。

 そうでないやつもいる。国は裏切れないよ、けど辺境伯と戦いたくない派だ。

どちらも、強大な大領主と戦いたくはない。

 そして、南方の王からも使者と友好をのぞむ親書が届けられている。

王と同格の扱いである。すごいな。


 そして現在、辺境伯の城。

太陽は高く、風もやわらかい、祝福の歓声が緩やかに流れる。


 麗らかな天気の中、お姫様の生誕祭である。

そこに敵国の貴族を招待し、一緒にお祝いをする。

それは、如何なものか?という、話である。覚えていますか?


 もちろん王様の許可なく、勝手に敵国の貴族と交際するのはまずい。

敵国の貴族と交際とは、つまり、一緒に肉や魚を食べて、おいしいですわ、この肉はよく肥えてますな。豊かな土地でうらやましい。ムム、あれはなんですか?え、タコを食べますの?うちでは、よう食べなませんわ。おもろいですな、川一つ隔てただけで、食文化が違うなんて、ほほほ、あ、国が違いましたか、ほはは、そうでした。ぬほっ。と戯けたことを言うてみたり、お酒を飲んで騒いだり、罪人をぶっ殺したり、デカい庭で立小便をしたり、ボードゲームで遊んだり、負けて盤をぶっ壊したりする。あと、楽しそうに踊ったり、演奏をミスった楽隊の首を跳ねたりする。今日の辺境伯は気分がいいので、演奏をミスったやつを殺さず、指を落とすだけで許してやった。周りの者たちは、その寛大さを褒めたたえた。


 まぁ、そんなことをしていると上司、つまり王様に目をつけられる。心証を害する。よくないことだ。しかし、王様は文句を言う程度で、この地域に軍を向けないのだと皆知っている。なので、ここでは王様は舐められているし、辺境伯のほうが偉いと思っている。


 太陽が海へ沈む。


 城内では、いまだ、バカ騒ぎが続いていた。

お姫様誕生祭の主催者である辺境伯はオキニの側妃を連れて、あほみたいではしゃいでいた。側妃も女児でよかったぁみたいな感じで素直によろこび、次は私の番ですわな、みたいに、立ってるときは辺境伯におっぱいをくっつけたり、座ってるときは太ももをエロい感じに撫でるなどした。みんな浮かれていた。


 そこに山近くの村に送った使者が返ってきた。輝く鉱石と岩塩とともに。

辺境伯は目をかっぴろげ、親族はデカい声を出し、隣国の貴族は内心、落ち込んだ。


 使者は辺境伯に新たに見つかった資源を報告する。

こんな経過である。使者が馬を走らせ、村に姫の誕生を伝えた。すると村人は喜び、涙を流し、喚き、しょんべんを漏らすなどした。そして村長曰く、今日、姫の生まれた日に偶然、山で発見があった。岩塩と金属の豊かな鉱床である。これは奇跡で姫が祝福されている証であると報告。使者に岩塩と鉱石を渡してきたのだった。


 辺境伯は、その村の代官を殺すことに決めたが、今日は祝いの席なので村長の捧げものを喜んだ。塩も鉱石(のちに鉄鉱石であるとわかる)も、たいへん重要な軍事資源である。


 資源が見つかった山は、もともと聖地でもある。以前から神の住む山として地域の信仰の対象でもあった。この地域で祭りが多いのは、信仰対象が祭り好きの神様だからかもしれない。

 とにかく、喜びに喜びを重ねた辺境伯は、喜びすぎて倒れ、寝室へと運ばれた。

賢い側妃は、その後も場を仕切り、さらに酒樽を開け、主なき後も宴は続いた。


2/9 タイトル変更

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