表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

8 幸せの記憶

「どうしてここへ」


ニーナがアレクセイに問いかけた。


アレクセイは息を切らせている。後ろから、キールも部屋に入ってきた。


「僕は最初から間違っていたんだ。僕が君を幸せにしてみせるってね。でも本当は違う。僕は僕が幸せになるためにここにいる。だって、君がいない人生なんて不幸そのものだからだ。だから、僕のことを不幸にするなんて君はいっさい思わないでほしい。この先、どんな辛いことがあったとしても、そんなこと関係ない。僕は少なくとも今の瞬間に幸せを感じている。そして、こう思うんだ。君がもし僕と一緒にいて幸せになれるんだったら、もうそれでいいじゃないかと」


アレクセイの目は真っ直ぐにニーナの方を向いていた。


「一緒に幸せになろう。大好きですニーナさん。結婚してください」


静まり返る部屋。ニーナは考えていた。信じたい。信じたい。信じたい…… その時、トンと背中を押された。振り返るとクリスティーナがうなずいている。彼女の言いかけた言葉が伝わってくる。もう一歩だけ勇気を持って飛び込んでみてくださいと。


「私なんかでいいのなら…… お願いします」


一瞬の間の後、ニーナはギュッと抱きしめられた。温かくて、懐かしくて、そして幸せな時間が彼女に再び舞い降りてきた。


「殿下、ニーナさん困っているじゃないですか。周りを見てくださいよ」


「えっ」


アレクセイはニーナをそっと腕から解放した。彼女はうつむいたまま真っ赤になっている。そして、周囲を見回すと、なんと、公爵邸のみんなが全員見にきていた。窓から見ている者、扉ごしに部屋の中をのぞき込んでいる者。皆、ニーナのことが心配だったのだ。


「す、すまない。思わず……」


と、アレクセイが言いかけたところ、キールとクリスティーナが寄り添って手を握り合っているのを見つけた。


「お前ら、もしかして」


「お二人のことが心配で、互いに色々やりとりをしていたんですよ。そうしているうちに、自然に、ね」


「俺が一ヶ月も苦しんでいる間に……」


「殿下がぐずぐずしているからですよ。だから、すぐにでもここに行けって言っていたじゃないですか」


周りでみんなが爆笑している。公爵邸に再び笑いが戻ってきた。


「さあ、みんな、いいこと。準備よ準備。盛大な宴会のね」


ベロニカさんはパンパンと手を叩くと、みんなに号令をかけた。皆はすぐに持ち場に戻っていった。いずれも幸せそうな顔をしていた。


アレクセイに肩を抱き寄せられ、ニーナは幸せをかみしめていた。肖像画の父も祝福しているかのように微笑んでいる。


今夜はきっと楽しいパーティになるに違いない。



そして、二人はこれからもずっと、このような幸せな時間を一緒に積み重ねていくだろう。


いつまでも、記憶に残るような。

これで、完結になります。


評価⭐️やブックマークしていただけると大変励みになります。


よろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ