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その数は三十人はいるだろうか。
男、女。
成人、老人、子供。
それらがずらりと並んで軽自動車のつぶれたところを見ているのだ。
全員が薄ら笑いを浮かべながら。
そして三十人ほどの老若男女みんなが、喪服を着ているのだ。
――なんだ、あの団体は。
こんな山の中に。
しかもさっきまで誰もいなかったはずなのに。
友人も気づいた。
「こんなところに、いつの間にあんなに大勢が来たんだ」
俺は思わず話しかけようとしたが、やめた。
一人一人の薄笑いが、極めて不気味だったからだ。
それは八十は過ぎていると思われるばあさんから、いたいけな少女に至るまで同じだった。
「気味悪い奴らだ」
俺は友人の言うことに同意した。
トラックの運転手を見ると、肉体的よび精神的ショックで、完全にへたりこんでいた。
俺は喪服の団体に目を戻した。
相変わらず不謹慎極まりない笑いをその顔に浮かべている。
そのままお見合いしていると、サイレンの音が聞こえてきた。
救急車だ。
俺は救急車を見た後、ふと喪服の団体に目を移した。
しかしそこには誰もいなかった。
――ええっ?
ほんの数秒目を離したすきに、老人や子供をふくむ三十人ほどが、跡形もなく消え去っていたのだ。
友人が素っ頓狂な声をだした。
「あれえっ、あいつらどこにいった」