エピローグ. 幸せ
リーフとキルシュ団団長の戦いから、3ヶ月の時が流れようとしていた。森にはすっかり青葉が茂り、太陽に照らされて輝いていた。
「それじゃ、父さん、母さん、行ってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
エリサは家を出て、まずハンスの家へ向かった。
「おや、エリサちゃん、こんな朝早くからお出かけかい?」
道中、道ゆく村人に声をかけられた。
「うん、ハンスと、リーフと一緒にピクニック。山に登るんだ」
「山に? 3人だけで大丈夫かい?」
「リーフがいるから大丈夫」
「おや、そういえばそうだったねえ」
エリサはハンスの家にたどり着いた。彼女が扉を叩くと、ハンスが荷物を持って中から出てきた。
「おはよう、エリサ」
「おはよう」
「リーフはまだいないの?」
「うん、これから宿屋に向かうとこ」
エリサたちは宿屋へ向かった。村の広場で世間話をしていた村人の二人組は、彼らを見かけると、彼らについて話し始めた。
「あの二人、どこに行くんだ?」
「リーフ君と一緒にピクニックに行くそうだよ」
「へぇ、よく親が休みをくれたな」
「リーフ君が仕事を手伝ったんですって」
「なるほど納得だ。アベントロートは一人で百人分の戦力を持つって聞いたが、あいつは百人分の仕事もこなせるからな」
リーフはあの日から、宿屋に住まわせてもらっていた。リーフが窓からエリサたちを確認すると、荷物を持って宿屋から出てきた。
「おはよう、ハンス、エリサ」
「おはよう。……あれ、リーフ、それ持っていくの?」
エリサはリーフの腰につけた剣を指差して言った。
「山は危険なところだからね。大丈夫。元キルシュ団の俺が、しっかり守ってあげるよ。さあ、行こうか」
リーフはエリサの尽力もあり、すでにほとんどの記憶を取り戻しているようだった。エリサたちは村を出て、リーフの先導で目的地に向かった。
「それで、どこにいくの?」
エリサが尋ねた。山に行きたいと言い出したのはリーフだった。
「見たい景色があるんだ。村の人から、それが見える場所があるって聞いた。ちょっと遠いみたいだから、疲れたらすぐに言って。足を挫いたら大変だからね」
道中はなかなかの険しさだったが、リーフの助けもあり、三人は目的の、見晴らしの良い場所まで辿り着いた。平野を遠くまで見渡すことができた。
「わー! きれい!」
エリサは荷物を置いて、両腕を広げて喜んだ。
「あれが『果ての壁』……」
「あれを見たかったの?」
「うん」
彼方には天をつくほど巨大な山脈が延々と続いていた。
三人はその場所で荷物を置き、昼食を取ることにした。
「うわ! すっごく美味しい。このシチュー」
リーフは驚いた様子で言った。
「前にも言っただろ? エリサの母さんは村一番の料理上手だって」
ハンスが言った。
「うん、本当だね」
リーフがそう言うと、エリサは誇らしげに鼻から息を吐いた。
「……あの時も、こんな感じだったよね」
「あの時?」
エリサがリーフに尋ねた。
「俺がエリサとハンスに出会った、一番最初の日。こんな風に緑に囲まれた中で、二人は俺の話を聞いてくれた」
「うん、そうだったね」
「二人は俺の話聴くの辛そうだったけど、それでもずっと付き合ってくれた。だから、二人にはこの話をしておくべきだと思うんだ。俺の一番重要な記憶の話を」
不意に爽やかな風が流れて、リーフの髪を揺らした。
「一番重要な、記憶……? そんなものがあったの?」
「俺が山賊たちを斬ろうとして、エリサに止められた後、思い出したんだ。……しっかり聞いてね?」
エリサとハンスは頷いた。そして、リーフは話し始めた。
「フリッツ、貴様!」
ギンが突き刺されたのを見たリーフが叫んだその時、雷がリーフに直撃し、体が輝き始めた。それを見たフリッツは驚いた。
「それは、まさかあの時の……!」
リーフは剣をフリッツに向け、稲妻の如き速さで突っ込んだ。フリッツはそれを剣で受けたが、彼の剣が折れそうになっていることに気づいた。受け切れないと思ったフリッツは攻撃を躱そうとしたが、急に体が重くなり、逃げられなかった。足元を見ると、ギンが最後の力を振り絞って足に噛みついていた。
「お前……!」
ついにフリッツの剣は折れ、リーフの剣はフリッツの胸を貫いた。しかし勢いがあまり、リーフとフリッツとギンはそのまま崖下に転落した。
リーフは気がつくと崖下に倒れていた。どうやら気を失っていたようだった。そして、すぐそばに、横たわるフリッツと、ギンがいた。ギンは事切れてもなお、フリッツの足に噛みついたまま離れていなかった。
「……よく、頑張ったな。もう、離してもいいぞ」
リーフはそう言うとギンの顎を優しく掴み、フリッツの足から離してあげた。リーフは、アッピ村でギンと出会ってからの日々を思い出した。思い出が蘇るたび、涙がこぼれ落ちた。
「何泣いてんだ。チビ助……やっと目を覚ましやがったか」
フリッツの声にリーフは驚き、慌てて剣を構えた。フリッツが目を開けていた。
「待て、俺はもうお前を殺すつもりは無い。というか、もうほとんど動けねえ。お前がばっちり急所を刺してくれたからな。俺の全ての力を使ってもこうして話すのが精一杯だ。それに、お前の一撃で俺と『奴ら』とのコネクションが切れた。……こんな方法があったとはな」
「何を言っている?」
リーフが尋ねた。
「つまり、俺がお前を襲ったわけを全部話せるってことだ。だから、聴いてくれ」
フリッツの真剣な眼差しを見て、リーフは頷いた。そして、フリッツは話しを始めた。
「俺はある者たちの命令を受けて、ずっとお前の命を狙っていた。奴ら曰く、お前が生きてると世界が大変なことになるそうだ」
「は? なんだよそれ」
「俺もどういう理屈かよく分かってねえ。連中は胡散臭いし、今でも半信半疑ってところだ」
「それなら、なんで奴らの命令を聞いた?」
「……これを見ろ」
フリッツはペンダントを首から外し、蓋を開いてリーフに渡した。蓋の中には、本物と間違うほど精緻な女性の絵があった。
「この人は……?」
「薄々感じちゃいたが、『向こう』のことは何もかも忘れているみたいだな……そいつははお前の本当の母親だ。名前はリノバ。もうこの世にいないがな」
「え?」
「昔、俺とリノバは互いに互いを愛し合う関係だった。だがある時、あいつは勝手に俺を捨てて、別の男と結婚しやがった。そいつとの間に生まれた子がお前だよ。まあ、俺は俺を捨てた女になんかもう興味はなかったが……問題は、昔あいつと仲が良かったってだけの理由で、俺がお前の逃亡の協力者と思われたことだ。奴らはお前の場所を吐けとか言って、俺に拷問をかけた。
……そのうち疑いは晴れたが、俺は自由の身にはならなかった。監視のついた状態で、永遠とこき使われるようになった。それで、奴らから受けた命令の一つに、お前の抹殺があった。……要するに、俺は立場上、奴らの命令を聞くしかなかったんだ。俺はある時、お前の痕跡をたまたま見つけて、ついにお前を見つけた。この後俺が何をしたかは、さっきも言った通りだ」
「俺の父さんと母さんを殺した……」
「正確には、狙っていたのはお前一人だったんだがな。俺はお前を家ごと潰して、殺そうとした。別に迷いはなかった。お前はリノバが俺を捨てて産んだ子で、その後もお前のせいで何度も酷い目にあった。しかも、当のお前は幸せそうにニコニコしていやがって……俺はむしろやる気満々だったね……だが、あの時は予想外のことが起きた。突然雷が降ったと思ったら、お前が家から飛び出してきて、俺の移動用のペンダントを奪って逃げやがったんだ」
「移動用のペンダント?」
「それも覚えてねぇのか……? まあ、つまり、俺は完全にお前に逃げられたってことだよ……それから6年後、俺は奴らの命令をこなしながら、世界を彷徨っていたが、俺の次の任務はキルシュ団の監視だった。近年そこの傭兵たちが力をつけすぎているとかいう理由でな。だから俺はわざとレヒルに捕まって、内部に入り込もうとした。そしたら、お前とばったり出くわしてしまったってわけだな」
「入団試験で俺に近づいてきたのは、それが理由……?」
「まあな。だが始めは、お前が俺の追っている奴だという確証が得られなかった。最後に顔を見たのはだいぶ前だったし、何より、お前の『力』が弱まってて、あの時の痕跡を感じなかった」
「力?」
「ああ、つまり……雰囲気と言った方が分かりやすいか? とにかく、確証も無しに殺すことは出来なかった。そして、確証が無いまま死なれる訳にもいかなかった」
「だから、俺を助けた」
「そうだな。ま、それで今に至るというわけだ」
「ちょっと待って」
「ん?」
「その『確証』が得られたのはいつだったの?」
「……お前がアベントロートになる直前くらいだ」
「じゃあ何で! その後もずっと俺を助けたんだよ! フリッツがいなきゃ死んでた場面が、何度もあった!」
「……お前あいつに似すぎなんだよ」
「え?」
「リノバだ。顔は似てないが、ちょっとしたことでウジウジし始めるのとかな。でも、そんな奴がこんな戦いに身を投じていると思うと、俺は、何というか、居た堪れなくて、つい、手を貸してしまった」
「フリッツ……」
「でも、お前を狙う奴らが、お前の存在に気づくのは時間の問題だった。お前を殺さなければ、俺はいずれ殺される。俺は死にたくなかった。どうせどちらかが死ななきゃいけないなら、お前の生きる意志と俺の生きる意志、どっちが強いか勝負して決着つけてやろうと思ってな。だから俺は、俺の持ちうる全ての手を使って、お前を殺そうとした。だが、お前はそれを全部打ち破ってみせた。見事だったよ。……もしかしたら、こうなるのが一番良かったのかも知れねえな。これで俺はやっと、奴らから解放される」
「フリッツ?」
「時間が迫って来たみたいだな……俺は多分、もう助からねえ。だから、最後にこれをやる」
「え……ちょっと待ってよ」
フリッツは自分の手から指輪を外し、戸惑うリーフの指へ無理矢理通した。
「それがお前を本当の故郷へと導いてくれるはずだ。最新型だぞ。壊すなよ。……前にも言ったが、やっぱお前、傭兵向いてねえよ。だが、そいつが導く先には、きっとお前の本当にやるべきことが待ってるはずだ。だから、リーフ、これは俺なんかが言えることじゃねえと思うが……精々、生きろ、よ……」
そう言うと、フリッツの頭はがくりと倒れ、動かなくなった。
「お、おい! フリッツ、フリッツ!」
リーフはフリッツの肩をゆすったが、無駄だった。リーフは倒れたフリッツと、ギンの死体を見た。
「どうして、どうしていつもこうなるんだ。どうして……!」
リーフは堪え切れなくなり、天に向かって叫ぶように泣いた。やがてリーフはそのまま倒れ、意識を失った。
「……そして、俺は記憶を失って、ゾンヌ村までやってきたというわけさ」
エリサもハンスも、話が終わった頃には涙で顔がずぶ濡れだった。
「やっぱり泣いたね。君ら」
「当たり前でしょっ!」「当たり前だろっ!」
「ご、ごめん」
「あ、もしかしてその、リーフがずっとつけてた指輪……」
「そう、これがフリッツがくれた指輪。こんな近くに記憶の手がかりがあったなんてね……。フリッツのペンダントも、ポケットの中に入れっぱなしだった」
リーフは指輪を軽くいじると、指輪が光りだし、ある一定の方向を指し示すようになった。
「わあ、何これ。こんな指輪見たことない」
「この先に、リーフの本当の故郷があるのか?」
「フリッツの話が本当なら、そういうことなんだろう」
リーフは指輪を再びいじって、光を消した。
「それで、二人に大事な話がある」
リーフは二人から目を逸らしながら言った。
「リーフ、まさか……」
「俺は、近いうちにゾンヌ村を出ていこうと思う」
「自分の故郷に、行きたいの?」
「うん。……理由の一つは、俺がここに止まっていると、きっと村が危険になるから。フリッツの話では、彼は俺の命を狙う奴らの駒の一人に過ぎなかった。もしフリッツのような刺客にまた見つかったら、大変なことになる」
「でも、だからって……」
「もう一つの理由は、」
リーフはエリサの言葉を遮るようにして話を続けた。
「……俺がもっとこの世界のことを知りたいからだ」
リーフは振り返って景色を眺めながら言った。
「みんなとこれまでの人生を省みて思った。幽霊に、果ての壁、俺の力に、フリッツの力、俺の命を狙う存在……俺は今まで生まれてすらいなかったんじゃないかってくらい、この世界には不可解なことが多すぎる。今、俺の心の中は、どうしようもないくらい『知りたい』って感情に溢れてる。この感情に向き合って初めて、俺は一人の『リーフ』として生きられる気がするんだ。これこそが、俺がやっと見つけた、俺自身がやりたいことなんだよ」
「そっか、それが『リーフ』の見つけた……それなら……私はリーフに着いていく!」
「エリサ!?」
ハンスはひどく驚いた様子を見せたが、エリサはそれに構わずこう続けた。
「私は、あの時リーフに『生きて』って言った。どんな理由があっても、そう言った責任を途中で放り投げるようなことはしたくない」
「……ダメだ」
リーフは顔を険しくしてキッパリと言った。そして、こう続けた。
「俺の旅は……間違いなく苛酷なものになる。特にこれと言った戦闘経験も、野外での生存経験も無い君は、はっきり言って足手纏いにしかならない」
それを聴いたハンスはリーフに続くようにこう言った。
「エリサ……俺もリーフの言う通りだと思う。それに、リーフとキルシュ団団長の戦いの時に起きた、超常的な現象。あれを見た後じゃあとても……」
「でも、それじゃあリーフは……一人で……!」
「……俺はこの世界を信じるよ」
「……え?」
「どんなに絶望に溢れてても、必ず希望は存在する。俺が生き続ける限り、可能性は無くならない。俺はそれを、君たち二人に教えてもらった」
「あ……」
エリサはそれを聴いて、何かを堪えるように歯を食いしばった後、こう言った。
「……分かった。だったらせめて……村を挙げて送別会をしよう!」
「え?」
「送別会……いいんじゃない?」
ハンスは頷きながら言った。
「いや、俺一人の為にそこまでしてもらう訳には……」
「大丈夫! この3ヶ月間のあなたの働きっぷりには、村の人たちも、山賊も、みんな感謝してる。みんな喜んで準備してくれるはずだよ……もちろんあなたが良ければの話だけど」
「まあ、みんなにちゃんとお別れを言いたいとは思ってたけど……」
「じゃあ決まりだね!」
それから、エリサたちは村に戻ると、人々に、リーフの送別会への協力を仰いだ。エリサの予想通り、皆快く協力を申し出てくれた。送別会は3日後、リーフが村から旅立つ前日の昼から行うこととなった。
そして、その時はあっという間にやってきた。机が並べられた広場に、人がどんどん集まってきて、今までにないほど賑わっていた。
「エリサ!」
「ヨーゼフおじさん!」
エリサは、手を振って広場にやって来たヨーゼフを抱きしめて挨拶をした。3ヶ月前、この二人は騒動が一通り落ち着いた後に会って話をしていた。
ヨーゼフはエリサに、彼女の前から消えた時の真実を話した。
「そうだったのね……でも、ヨーゼフさんが元キルシュ団だったなんて。どうして逃げ出したの?」
「そんな大した理由は無いよ。ただ、ある時を境に、私が斬り殺した人たちの顔がよく見えるようになって、毎晩夢に出るようにもなって……それで耐えられなくなったんだ」
「そっか……」
「すまなかった、エリサ……」
「本当だよ! あの時私、すっごく悲しくて、世界の終わりみたいな気分になったんだからね!」
「すまない……」
「だ〜か〜ら〜、おじさんには罰として〜」
「ん?」
「木のお馬さん作って! 前作ってもらったの掃除の時に踏んづけて壊しちゃって」
「……君はもう大人だろう?」
「良いものに大人も子供も関係ない!」
エリサは歯を見せて笑った。ヨーゼフはその時、昔見せてくれた彼女の笑顔を思い出した。
(やはり、あの時から少しも変わっていない。優しい子だ)
「……また会えて嬉しい」
「ああ、私も、生きてて良かった……」
「エリサ!」
エリサとヨーゼフたちの元へ、ハンスがやって来た
「やあ、ハンス君」
「あ、ヨーゼフさん、いらっしゃい。それでエリサ、準備の方はどう?」
「もう大体終わったかな? あとはもう少し人が集まるのを待つだけ」
「そっか。本当に、よくここまで来れたよな。俺たち」
「どういう意味?」
「いや、ただ、なんとなく、ここにいる人たちがみんな無事なのが、奇跡のような気がして。みんな、エリサの頑張りのおかげだ」
「そうかな? そうかもね〜」
エリサは照れながら言った。
「エリサ、実は俺、君に言っておきたいことがあるんだ」
「何?」
「昔の、ヨーゼフさんのこと……実はあの時、村人たちにバラしたの俺だったんだ」
「え……そうだったの!? なんで!?」
「俺は、ヨーゼフさんに、君を取られたような気がして……」
ハンスは顔を赤くさせて言った。
それを見たエリサはしばらく顔をキョトンとさせて、それから吹き出して、笑い出した。
「あー、おかしい。よくそんなこと今更謝れたね」
「わ、笑うなよ……」
「……もしかして、それを気にしてたから、リーフの件、私に協力してくれたの?」
「まあ、そうなるのかな」
「まあ昔のことは許してあげるよ。私もう大人だし? ……それに、3ヶ月前のことは、ハンスにもたくさん助けてもらったし」
「え? そう?」
「そうだよ。いつもいてくれて安心したし、私がリーフの話聞いて泣いちゃった時とか、『君は彼に負けないくらい立派に生きてる』って言ってくれたでしょ? ハンスがああ言ってくれたから、私がリーフを説得する時、堂々と自分の意見を言えた気がするんだ。だから……おあいこってところかな?」
「エリサ……ありがとう」
「はっはっはっ。これでハンス君の蟠りもとけたようだな。よかった、よかった」
ヨーゼフは二人の様子を見て微笑んだ。
一方、リーフにも客人がやって来ていた
「おーい、リーフ!」
「レヒル!? ミラー!?」
キルシュ団の二人が、広場のリーフの元へやって来た。
「お久しぶりです。リーフさん」
「どうしてここに? まさか俺を捕らえに来たって言うんじゃないだろうな?」
「団長を殴り倒した化け物に手を出そうなんて奴いねーよ。それに、キルシュ団の中ではお前はもう作戦行動中行方不明——ほぼ戦死者みたいな扱いになってる。俺たちがここに来たのはヨーゼフさんから知らせを受けたからだ」
「ヨーゼフさんが?」
「あれ以来あの人とはちょくちょく情報交換してるんだ」
「でも、こんなところにいていいのか?」
「だいじょーぶだって! キルシュ団には優秀な人材がたくさんいるからな!」
「まあ、こっそり抜け出して来たんですけどね……」
ミラーが言った。
「それにしても、俺たちのことはバッチリ思い出したみたいだな。記憶を失ったって聞いたが」
「エリサがあの後毎日俺の話を聞かせてくれてね。そのおかげかすぐに思い出せた」
「エリサってあのエリサちゃんか!?」
「ああ」
リーフはエリサが黄色い声を出していた時を思い出して笑った。
「あの時エリサは俺を匿ってくれてたんだ。彼女がレヒルを知ってたのは、俺から君の話を聞いてたからだよ」
「な……! かぁ〜っ! 俺は彼女に一杯食わされてたって訳か。賢そうな嬢ちゃんだとは思ってたが」
「一杯食わされたっていうより、食いに行ってましたけどね」
ミラーが呆れ顔で言った。
「あ、それはそうと……、実は、もう一人、俺がこの会のことを知らせたやつがいるんだ。彼はまだ来てないか?」
「彼?」
「リーフ!」
一人の青年が、リーフの元へ歩いて来た。
「シュラー! レヒルが言ってたのってまさか……」
「ああ、彼のことだ。3ヶ月前のあの後、彼がキルシュ団の連中にしきりにお前のことを問い合わせていたのを思い出してな。あまりあの事は口外したくなかったんだが……お前が遠くに旅立つって聞いたら、彼にその事を伝えずにいられなかった。事情も大体全て彼に話したよ」
「レヒルさん、俺にリーフの事を教えてくれて、ありがとうございます」
シュラーはレヒルに深く頭を下げた。
「久しぶりだね、シュラー」
「う、うん、そう、だな」
シュラーはぎこちなく答えた。
「どうしたの?」
「……リーフ、ごめん!」
突然シュラーがリーフに向かって土下座した。
「な、なんで謝るのさ?」
「俺、レヒルさんに言われるまで、リーフがあんなに苦しんでたこと、全然知らなかった。それどころか、『頑張れ、頑張れ』ってお前に言い続けて……」
「いや、そんなこと……」
「それだけじゃない! 俺、お前のこと全然考えてなかった。お前がアベントロートになった時も、俺の名を広めてくれる広告塔としか見てなかった! 俺は、最低なやつだ……!」
「自分にそんな嘘つくなって」
「え……?」
シュラーは顔を上げた。
「君が俺を子分にするって言ってくれた時、俺は涙が出るくらい安心したんだ。それに、自分も満足に食べれてなかったくせに、ギンにまで食糧を分けてくれただろ? ——君はその事隠してるつもりみたいだったけど、子供の俺から見てもバレバレだったよ。——そこまでして俺たちの面倒を見てくれたのが、とても嬉しかった。
……そして、キルシュ団に入った後、君はまだ無名の俺に、あの剣をくれた。 あれは素晴らしい剣だ。使えば使うたび、その凄さに驚かされた。あの剣が、戦場に出るようになった俺を、今まで、ずっと守ってくれたんだ。……俺がそんな君のことを恨んでいると思う? 君は昔も今も、俺の命の恩人だよ、親分」
「リーフ……!」
シュラーはそう言って涙を流した。リーフはシュラーの肩を叩いて彼を慰めた。
「うんうん、やっぱあいつにこのことを知らせて正解だったみたいだな」
レヒルは腕を組んで頷いた。
その後、人が概ね集まりきると、エリサの号令で送別会が始まった。広場の机の上に、食事が並べられた。始め、人々は食事をしながら歓談した。村の人たちは一人ずつリーフの元へやって来て、今までありがとうとか、元気でね、とか、実は出ていって欲しくない、とか、様々な言葉を残していった。
「リーフにーちゃん、これ……」
村の子供達がリーフに花冠を持ってきた。
「おお、すごいなこれ。俺にくれるのか? ありがとう」
リーフはそれを受け取って、それを頭に付けた。
「俺、リーフにーちゃんみたいに強くなる! にーちゃんいないあいだ、俺が村を守る!」
「頼もしいな。でも、あまり親を心配させるなよ。お前が死んだら、みんな悲しむ」
その後、若い娘がリーフのところにやって来た。
「リーフさん、実は私、あなたのことが好きでした!」
「え」
「だから、村を出ていっても、私のこと忘れないで下さい!」
「うん、俺も君のおかげで、とても住み心地が良かった。君のことは忘れないよ」
「ありがとうごさいます!」
「ちょっとちょっと〜!」
リーフたちを見ていた、娘たちの集団がやって来た。
(今度は何?)
「リーフにはエリサがいるって言ったでしょ! 何リーフを困らせてるの!?」
「で、でも……」
「あ、そうだ! この際だから聴いてみよっか。リーフはエリサのことどう思ってるの?」
「ど、どうって……」
「絶対二人はもうくっついてるでしょ! 私、エリサがリーフを説得した時、本当に感動したわ〜。まさに『愛』って感じで」
「ちょっと誰かエリサ呼んできて! あの子の話も聞きたいから」
しばらくすると、エリサが引っ張られて来た。その様子を見ていた村の奥様方も集まってきた。そしてなぜかハンスも密かに近づき、聞き耳を立てていた。
「ちょ、ちょっと何? 私忙しいんだけど……」
「ズバリ聞きます! リーフさんにとってエリサさんは、そしてエリサさんにとってリーフさんは、どういう存在ですか?」
「私にとってリーフは……」
「俺にとってエリサは……」
「弟みたいな……」「母親みたいな……」
そこまで言った時点で、二人はお互いに顔を見合わせた。
「母親みたいって何!? せめてそこは姉って言わない!?」
エリサはリーフの首を絞めようと、両手を伸ばした。リーフはそれを両手で抑えた。
「いや、俺は正直に言っただけで……」
「老けてるって言いたいのか!? あ!?」
(こういう関係か……)
周りでこれを見ていた者は、全員納得した。
その次は、男がやってきて、リーフの前で跪いた。
「リーフの兄貴!」
「誰?」
「あっしは3ヶ月前、この村を乗っ取ろうとした山賊でございやす!」
「ああ、あの時の」
「あっしはあの時、兄貴の美しい技にシビれてしまいやした! あの後は数日間、あの時のことしか考えられず、何も手につけられなくなったくらいでさあ」
「多分それは、頭を強く打ったせいだと……」
「明日、兄貴はこの村を旅立つと聞きやした……お願いです! その前に、もう一度だけあの時の感動をこのあっしに味わわせてくだせえ!」
「え、いいの? 痛いよ?」
「ちょっーと待ったー! 話は聞かせてもらったぜ!」
その時、どこからともなくレヒルがやって来た。そして、手を叩いてから村人たち全員に向けてこう言った。
「みんな、リーフが余興をしてくれるぞ! その内容はこうだ! ミラー、あれを」
「はい」
ミラーは2本の木刀を取り出した。
「あ、それ訓練用の。懐かしいな」
リーフは木刀を見て言った。
「見ての通り、ここに木刀がある! そして、リーフにはこれから村の中で剣に自信があるものたちと順番に勝負してもらう! ルールは至って簡単、自分の剣が相手の体のどこかに少しでも触れたら勝ち、逆に相手の剣が自分の体触れたら負けだ。リーフに勝ちたいものはいるか!?」
意外にも多くの村人がやる気のようであった。
「リーフさん、やっていただけますか?」
ミラーがリーフに尋ねた。
「ああ、面白そうだ。レヒルとミラーもやるんだろ?」
「ああ、もちろんだ。そのためにわざわざ木刀を借りて来たんだからな」
「無断でね」
村人たちは机を動かし、広場の真ん中に場所をつくると、その場所で余興を始めた。リーフの最初の相手は先ほどの山賊の男だった。男は甲高い声を上げながら木刀を振り下ろした。リーフはそれを捌くと、あの時のように頭を打ち抜くのは悪いと思い、最高の速度で木刀の先を男の前まで持っていき、それを男の目の前で寸止めした。風を斬る音が、広場に響き、勝負がついた。それを見て興奮した人々は拍手を鳴らした。山賊の男は、頭を殴られなかったものの、大層満足した様子で去っていった。
その後、多くの村人たちが挑戦したが、ほとんど者は一瞬で勝負がつき、全てリーフの勝利だった。中には密かに鍛錬を積んでいたものもいたようであったが、結果は大して変わらなかった。勝負がつくたびに観客たちから歓声が沸き起こったので、リーフはとても楽しかった。
エリサの後押しでヨーゼフも挑戦した。ヨーゼフは、その時の挑戦者の中で初めて、リーフの攻撃を2回防ぐことができ、会場は盛り上がった。しかし、それでもリーフには敵わなかった。
このまま一人の村人もリーフに勝つことができないかと思われたその時、思わぬ剣豪が名乗りを上げた。先程リーフに花冠を上げた少年だった。少年は木刀を持ち上げることにすら苦労している様子だったが、リーフの体が木刀に吸い込まれるかような絶技を見せ、見事に勝利を掴み取った。
そして、村人たちからの挑戦者がいなくなると、ついにミラーの出番がやって来た。
「ミラー、久々に稽古を付けてやるよ」
「はい! お願いします!」
「まずは基礎からだ。受けてみろ!」
リーフは右から左からと、あらゆる方向から目にも留まらぬ速さで剣を振った。ミラーがそれを全て受けてみせると、観客から驚嘆の声が上がった。ミラーはリーフの攻撃の合間の隙をついて攻撃した。だがこれはリーフに防がれた。
「いいね。なら次は応用だっ!」
リーフはそう言うと、ミラーの前から姿を消した。ミラーは周囲を見たが、リーフは見つからなかった。そうしていると、急に頭が重くなるのを感じ、気がつくと、ミラーの頭の上にリーフが立っていた。リーフは木刀でミラーの肩をつつき、勝負がついた。
「悪いなミラー。この場の雰囲気に当てられて、つい調子に乗ってしまった。首、大丈夫か?」
「平気です。ありがとうございました!」
「本当に強くなったな。これからも励んで、そして……生き抜くんだぞ」
「は……はい!」
「さて、あとは君だけだレヒル。覚悟はできたか?」
「うーん……」
レヒルは肘に手を置いて、考え事をしているようだった。
「どうした?」
「いやな、ここでただお前とガチの勝負をしたとしても、面白くない気がしてな。そこで考えたんだが……向こうの森で俺とお前の剣舞を披露するってのはどうだ?」
「剣舞? なんで森で?」
「お前、森の中では猿並みに素早かったろ。俺はお前に追いつけないのが悔しくてな。少し鍛錬したんだ。それで、お前とやってみたいことがある」
リーフとレヒルは北の森へ移動した。会場の村人たちは、全員二人についていき、森の中に入った。そこで、レヒルがリーフに耳打ちをした。
「なるほど、面白そうだ」
それにリーフは頷き、二人は木刀を持って向かい合った。観客たちはこれから起こることに対して胸を躍らせていた。
リーフとレヒルは、互いに頷いた後、それぞれの背後にある大木まで走り、それを蹴って空中に飛び上がった。そして、空中で二人が近接すると、木刀をぶつけ合ってお互いがお互いを押し返した。そうして大木の幹まで戻ると、二人はそれを蹴って再び空中に飛び上がり、お互いの木刀をぶつけ合った。複数の大木の幹を使いながらそれを繰り返していると、二人はどんどん上の方へあがっていった。観客たちはそんな無茶な方法で上へあがれるのが信じられず、悲鳴に近い驚きの声を上げていた。
やがて二人が枝の上に乗ると、その上を飛び回りながら、木刀をぶつけ合った。木と木がぶつかる音が、小気味良く森の中に響き渡った。観客たちは二人を目で追うのがやっとだった。
「なあ、レヒル」
「なんだ?」
「もう木刀、いらなくないか?」
「ああ、俺も同じこと考えてた」
二人はそう言い合って木刀を腰に差すと、足元のよくしなる枝や蔦を掴んで、振り子のようにして木から木へ飛び移り始めた。二人の体が、森の中で激しく上下に飛び跳ねた。最後にリーフがレヒルの足を掴んで観客たちの上空すれすれを通り過ぎると、二人は高く飛び上がり、同時に地面へ着地した。観客たちは興奮が爆発し、皆飛び跳ねて喜んだ。そして、リーフとレヒルを胴上げした。
送別会は大盛り上がりのまま幕を閉じた。レヒルとミラーとシュラーの3人はリーフの出発の日には来られないので、ここで別れを告げることにした。
「お前がこれから何を成し遂げるのか、楽しみにしてるよ、リーフ。くだらないことで死ぬんじゃねえぞ?」
レヒルはリーフの額を指で突きながら言った。
「それはこっちのセリフだ」
リーフはそれを払い除けながら言い返した。
「俺は死なねえよ。生きる楽しみがまたひとつ増えたからな」
「リーフさん、旅の無事をお祈りしています」
「ああ、ありがとう、ミラー」
「リーフ、実はまだお前に言ってないことがあるんだ」
シュラーが言った。
「え、何?」
「実はあの剣、俺だけの力でつくったものじゃないんだ。上手くいかなくて悩んでた時、親方たちがあの鉱石に興味を持ち始めて、結局みんなで試行錯誤して完成させたんだ。俺は剣が奪われるんじゃないかと心配だったけど、親方たちは試し切りをしたら満足したみたいで、俺に返してくれた」
「なるほどね。確かに、今思うとちょっと出来過ぎな感じはしてたな。でも、鍛冶場のみんなの魂が込められた剣か……君はそんなものを、俺に届けてくれたんだな」
「ああ、あれは間違いなく世界最高の剣だ。きっとこの先もあれが、お前の行く道を切り開いてくれる」
「心強いよ。ありがとう、シュラー」
「シュラー、俺たちがワーゼル市まで送ってやるよ」
レヒルが言った。
「ありがとうございます。それじゃ、リーフ、またな」
リーフは村を出ていく3人を、手を振って見送った。
そして、翌日、旅立ちの時がやってきた。リーフは支度を済ませると、宿屋を出た。外ではエリサとハンスが迎えに来ていた。
「リーフ、準備できた? 忘れ物はない?」
「ああ、大丈夫。みんなが旅に必要なものを用意してくれて助かった。これで野宿する時も平気だ」
リーフは以前に指輪が指し示した方角の門から村を出ることにしていた。門の周りには、村のほとんど全員の人たちが集まっていた。リーフは、そこで、最後の挨拶をすることにした。
「皆さん! 3ヶ月間、こんな俺をこの村に受け入れてくれたこと、感謝しています。この村に来たばかりの俺は、その言葉の通り、心を失いかけてました。そのせいで、皆さんに、多大なご迷惑をかけてしまいました。しかし、皆さんの温かいお心遣いのおかげで、俺は人を信じる心を取り戻せました。みなさんのおかげで、俺は生きる楽しさを思い出すことができました。皆さんとここで過ごした日々は、俺の最高の宝物です。この思い出を胸に、この先起こるであろうどんな困難も、乗り越えていきたいと思います。今まで、本当に、ありがとうございました!」
そう言ってリーフが頭を下げると、村人たちは拍手で答えた。中には涙を流すものもいた。
「リーフ、気をつけてね」
「……うん。エリサ、ハンスの事、頼んだよ」
「任せて」
「え、逆じゃないの?」
三人は笑った。
「土産話、楽しみにしてるからね。ずっと待ってるから」
エリサがそういうと、リーフは何か言いたげに口をモゴモゴと動かし始めた。
「リーフ、どうしたの?」
「……もし俺が、もう二度とここに戻ってこられないような事になったら、多分俺は、それをみんなに伝えることが出来ない。そして、そうなったらきっと、呆れるほど優しい君たちは、俺のせいで一生心を傷め続ける事になってしまう。だから、だからさ、君たちは俺のことなんて待たないでいっそ……」
「リーフ……それ以上言ったら怒るよ?」
エリサはリーフを睨みつけながら言った。
「うっ……」
「俺も今のはどうかと思う。リーフはエリサがどんな気持ちで君を送り出そうとしたか分かってたよね?」
ハンスが腕を組みながら言った。
「ごめん……」
「いいや、許さない。リーフ、あなたには『呪い』を受けてもらうから」
「の、呪い……?」
「そこを動かないで」
エリサはそう言ってリーフに近寄ると、腕をまっすぐ伸ばしてリーフの胸に触れた。
「あなたは今日から私たちと『競争』を始める。名付けて、『どっちがより幸せになれるか競争』。私たちはこれから人生を全力で楽しんで、精一杯『幸せ』を目指す。これに参加した私たちは、自分の幸せを感じた時、相手のことを感じざるを得なくなる。たとえリーフがどれだけ離れたところに行っても、あなたは私たちを忘れることが出来ないし、私たちはあなたを忘れない、決して」
エリサは、涙を湛えた鋭い目でリーフを見据えながら言った。
「エリサ……分かった。俺、絶対負けない」
「こっちもね」
リーフ、エリサ、ハンスはお互いに拳を突き合わせた。
「それじゃあ、いってきます!」
リーフはそう言うと、村を背にして歩き出した。少し歩くと、村人たちから別れの挨拶と、声援が聞こえてきた。エリサとハンスも涙をこぼしながらリーフに向かって叫んだ。
「リーフ! 負けるんじゃないぞー!」
「絶対幸せになって、リーフ!、絶対、絶対だよー!」
リーフは彼らの言葉に応えて、何度も振り返り、手を振り返した。彼らの言葉が、心に沁みた。心に沁みて、涙が溢れた。涙が溢れて、止まらなかった。
リーフは指輪から差す光を頼りに歩き続けた。辺りはもうすっかり暗くなっていた。周り景色を確認して、再び指輪に目を移すと、リーフは指輪から光が伸びなくなっていることに気づいた。誤って機能停止させたわけでは無いようだった。
(ここが目的地、ということなのだろうか)
一見そこはなんの変哲もない野山だったが、そこでリーフが指輪をいじると、指輪が輝き始め、リーフは光に包まれた。眩しさで目を閉じてから、目を開くと、再び眩しさで目を閉じることになった。そして、今度は慎重に目を開けると、リーフの目に入ってきたのは、……天に届くほどの超高層建築群。その街は全体が光り輝き、その光で夜空の星々を覆い隠していた。リーフの眼前に現れたそれの名は、眠らない街、ヴィジーニエ。リーフの、『幸せ』を賭けた冒険の日々が始まろうとしていた。
後編「ザ・シークレット——最後まで『幸せ』を諦めなかった少年剣士の物語」に続く