表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/217

98話 休暇、温泉三昧

「金色に輝いていますよ、ヤマトさん!」

「こんなことも可能なのか。それで色の変化には、どんな意味があるのだ?」

「カッコイイでしょう!」


 ピヌティさんの質問に即答した。あれ? ちょっと反応が薄い気がする。


「……そうだな」

「あたしは、いいと思う。金運が上がりそうで」


 そんな効果はありませんが、マリアさんは悪くない評価だ。


「素晴らしいですね!」

「喜んでくれたのなら、手を加えた甲斐がありますよ」


 サクラさんは、気に入ってくれたみたいだな。いつか細かい配色にも、挑戦したいと思う。


「さて、次の改造を実行しましょう」

「よかった。色を変えただけで、終わりではないのか」

「もちろんですよ、ピヌティさん」


 俺は竜人船に意識を集中する。


「改造、竜人船! 顕現(けんげん)せよ、竜水鱗鞘(りゅうすいりんしょう)!」


 新たに創り出したのは、青色の筒。竜炎牙刀(りゅうえんがとう)を納める鞘だ。取り外しも可能になるよう、調整した。


「居合用の鞘でしょうか!」

「その通りですよ、サクラさん」


 実戦で使うには、十分な訓練が必要だろうけどな。


「それから炎雷丸も改造します」

「やったね!」


 マリアさんが手を叩いて喜んだ。とりあえず操舵室に向かう。竜人船のテストはまた後で行うつもりだ。サクラさんが後ろ髪を引かれている気もするけど、少しだけ待ってもらおう。


「それで鞘の追加と見た目以外で、変わったことはあるのか?」

「主に機動性と魔法防御力が上がりました」


 飛空船内を歩きながら、簡単に竜人船の変化を説明する。三人の質問に答えていたら、あっという間に操舵室へ着いた。


「さあ、どうなるのかな!」

「魔導運航指示盤を追加します」


 つまりナビゲーションだな。導きの賽を参考にして、記録した地点を示す機能を作る。ただ実際にやってみると、なかなか難しい。皆と相談しつつ、なんとか形にした。特にマリアさんの意見を重視している。一番、使用する機会が多いはずだからな。


 それからは竜人船組と炎雷丸組に分かれ、操船訓練を行う。ピヌティさんは甲板で五行クナイが使えるか、そちらの確認もするとのこと。そして日が暮れるまで、訓練を続けた。




 次の日、これからスンシュウの町へ向かうつもりだ。財宝の一部を換金したり、開拓の資材を購入したりする。だが一番の目的は別にある。


「スンシュウに着いたら、長期休暇を取りましょう!」

「ほう、いいな。私は温泉に行きたい」

「あたしも賛成!」


 惜しむらくは、近くに魔獣狩り協会や魔獣退治組合が無いことだな。申請すれば手当が出たのに。


「もしかして、私の都合に合わせてくれたのですか。成人の儀ができるように」

「それもあります。けど単純に、身体を休める時間が必要だと考えました」


 最近、まとまった休みが取れていないからな。


「それと俺が異世界に来てから、もう一年が過ぎたのです。少し羽を伸ばしたいと思います」

「わかりました。それなら私も賛成です」


 ということで休暇が決定した。ちゃちゃと用事を片付けて、バケーションを楽しもう。


「期間は移住に出発する日までか?」

「そうですね」


 厳密にはスンシュウの町を出発する日までだな。未開空域に入れば休む暇はないから。とにかく、そうと決まればスンシュウに急ごう。一日でも早く着けば、その分だけ休暇が伸びる。


「昨日の内に、挨拶は済ませました。準備がよければ、島を出ましょう」

「じゃあ操舵室に行くね! 新・炎雷丸を動かすよ!」

「あ! 済みません、マリアさん。加速能力を確認したいので、最初は俺に操船させてください」

「……うん」


 勢いに水を差してしまったな。ごめんなさい。俺は炎雷丸を操作し、スンシュウの町を目指した。守護聖獣の羽根で強化したおかげか、思った以上の速度が出ている。思ったより早く、到着しそうだな。




 最大速度で飛ばし続け、ようやくスンシュウに到着した。往路よりも半日ほど早く着いている。港に入ったら、炎雷丸の登録を行うつもりだ。

 港の受付で格納庫を使う申請をする。特別枠があるため、優先して使用することが可能だ。今は商団が利用しているみたいだけど、すぐに代表と連絡が付く。受付に来るのを待って、挨拶を交わす。ずいぶんと好意的に接してくれたな。とりあえず炎雷丸を格納庫に置いた。すでに登録は終わっている。


「今日は休んで、明日の朝に商会長の店へ行きましょう。サクラさんは、一足先に休暇を取ってください」

「ありがとうございます」


 俺はサクラさんを実家まで送る。ご息女を預かっているのだ。菓子折りを持って挨拶に伺うつもりである。

 玄関まで行くと、ご両親が出迎えてくれた。世間話をしながら、父親のムラクモさんに竜人船を見せる約束をした。前に話したとき、興味があったようだから誘ってみたのだ。予想以上に喜んでくれたな。


 家族の団欒(だんらん)を邪魔しても悪い。早々に、その場を辞して格納庫に戻った。炎雷丸の甲板にピヌティさんがいる。五行クナイを、手に取っていた。


「訓練ですか?」

「いいや、感触を確かめているだけさ。ヤマト殿なら触らずに、属性が分かるのだよな」


 わりとハッキリ魔力の違いがある。魔力探知に長けてさえいれば、判別は難しくないだろう。


「分かりますよ」

「私だと少し難しい。触ったときの感覚と合わせて、属性ごとのクナイを見分けるしかない」


 戦闘中にクナイの色を見て確かめるなんて、悠長にしていられないのだな。一瞬の隙が、大きなケガに繋がることもある。


 夕方前に、サクラさんが格納庫に来た。何か用事かな。それとも単に忘れ物だろうか。まさか家族喧嘩ではないよな。


「ヤマトさん。五日後の予定は、空いていますか?」

「大丈夫ですよ」


 その日なら特に用事はない。というか休暇の予定は、全く立ててないな。温泉に行くことは決定しているけど、日付は未定だ。


「それでは成人の儀に、参列してはいただけないでしょうか」

「俺が行っても構わないのですか? 身内の集まりと聞きましたけど」

「父がぜひとも来てほしいと言っています」


 当主の要望なら、断るのも失礼か。


「分かりました。参加させてください」

「ありがとうございます!」


 買ったばかりの正装が、さっそく役に立ちそうだ。そして軽く当日の打ち合わせをする。着付けはサクラさん宅で行うため、少し早めに伺うことになった。話が終わったのは、日が落ちてからだ。俺は彼女を家まで送る。その後は、一人で飲みに出掛けた。明日は商談があるから、控えめにしよう。




 次の日、商会長の店に行った。換金物の買取や、資材・食料などの購入を頼む。開拓に必要と言ったら、いたく感心されたな。昼頃になり、一通りの話がまとまった。帰ろうとしたところで、タツオさんとユリエさんの姿を見掛ける。あ、向こうも気付いたみたいだな。


「ヤマトさん! その節はありがとうございました! おかげで俺たちも、何とか生活できています」

「大したことは、していませんよ」


 まとめて買い取った農具も、すぐ役に立ちそうだしな。いいタイミングだったとも言える。


「ヤマトさんは、島の開拓をされているのですよね。私たちも協力させていただけませんか?」

「二人で話し合いました。お手伝いできることが、あると思うのです」

「家の許可を取るか、成人後であれば構いません。こちらから、お願いしたいくらいですよ」


 手に職を持つ二人だからな。まだまだ鍛冶師は足りない。来てくれるなら、本当にありがたいことだ。ここで話は終わり、二人と別れる。


「うーん、大丈夫かな?」

「どうだろう。上手く生活していくことを、願っておこうか」


 マリアさんとピヌティさんも、二人を心配しているようだ。


「そろそろサクラさんと合流する時間です。行きましょう」

「そうだったね。ちょっと急ごうか」


 これから四人で温泉に行く。町外れに大規模な温泉施設があるらしい。宿泊場所もあるが、俺たちは日帰りだ。気に入ったら、泊まるかもしれないけど。無事にサクラさんと合流し、目的地に向かう。道すがら施設のことを聞いた。混浴ではないらしい。料理も有名で、風呂上りに楽しむ人も多いとか。そして酒。


「ヤマトさん。温泉に入りながらの飲酒は、禁止されていますからね。絶対に行わないでください」

「も、もちろんです」


 危険な行為だからな。理解はしている。


「異空間倉庫の酒類は、預かってもらいましょうか?」

「そこまでしなくても飲みませんよ!」


 話をしていたら、温泉施設が見えてきた。立派な建物だな。この日は、心ゆくまで温泉を堪能した。それだけではなく、休暇期間に合わせてフリーパスチケットを購入する。温泉三昧(おんせんざんまい)の日々が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ