表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/217

97話 改造、金色の竜人船

 財宝に潰される夢を見て、飛び起きた。もう、朝か。今日は炎雷丸にアカリさんが来る予定だ。移住の打ち合わせだと思う。自分の支度を整えたら、出迎えの準備をするか。――四人で甲板に出た。


「来客の対応を考えていませんでした」

「大型飛空船の中にいると、声が届きませんよね」


 サクラさんは困った顔をしている。そして俺も同様だろう。


「甲板にいれば、人が近付くのは分かるが……」

「それだと急に人が来たとき、やっぱり困るよ」


 今まで利用していた停泊所の格納庫だと、魔導通信機があった。しかし、ここは整備されていない停泊所。そんな便利な魔道具はない。

 アカリさんなら魔力量ですぐに分かる。だけど大きな力を持たない人では、気付くことが困難だ。


「とりあえず結界の感知能力を高めます。人が触れたら、すぐに分かるでしょう。ただ他の連絡手段も考えるつもりです」

「入口に魔導通信機を設置するか?」

「そうしましょう」


 ピヌティさんの案は実行確定だな。


「それと、入口が分かりにくいと思う! 通路を開かなければ、壁にしか見えないから!」

「言われてみたら、慣れないと入り方に困りますね。これも対策を考えましょう」


 分かりやすく入口と表記して、魔導通信機を用意しておけばいいかな。そんな話をしていると、結界に人の反応があった。魔力の様子からして、アカリさんで間違いないだろう。毎度おなじみ風魔法で連絡し、甲板まで来てもらった。


「すみません。少し時間を、お借りします」

「構いませんよ。今日は予定もありませんので」


 強いて言えば、休息を取るのが予定か。俺は水竜の素材で、飛空船の強化をするつもりだったけど。これは後でもいいしな。ちなみに素材は格納庫に落ちていた。水竜の鱗を発見したときは、その場で酒盛りをしたくなるほど喜んだ。


「アカリ殿の用件は、移住の件だろうか?」

「それもありますけど、他の用事もあるのです。ヤマトさんに、渡す物があって来ました」


 俺に? なんだろうな。アカリさんは自前の異空間倉庫から、一片の羽根を取り出した。金色に輝く羽根。秘めた魔力は、水竜の鱗に匹敵している。


「まさか守護聖獣の素材!?」

「レッサーキンシの羽根と呼ぶそうです」


 気になる名称だな。神話や伝説の生物と似ている魔獣に対し、レッサーの名を付けることが多い。ただし姿が類似しているだけで、ほとんどは強い力を持たない。場合によっては、蔑称で使われてしまうことも。守護聖獣の名前として適切かは、疑問が残る。


「……もう少し神聖な名前でなくて、大丈夫でしょうか?」

「守護聖獣様が、自身で名乗られたのです。村長に伝えたら、微妙な顔をされましたよ」


 話を聞くと守護聖獣の存在は半ば伝説で、名称までは伝わっていなかったらしい。先日の託宣で、初めて名前を聞いたとか。


「そのレッサーキンシ様は、どうされました?」

「浄化を続けたことで、大きく力を失ったそうです。今は力を取り戻すため、故郷の聖地に戻られました。いつの日か、カナトビ島に帰還されるでしょう」


 結界を張り直さない理由の一つかもな。守護聖獣が島へ帰還したとき、入るのに困らないようにと。


「さて本来なら伝承に(なら)い、この羽根で武具を作り授与するつもりです。ただヤマトさんであれば、素材のまま渡した方が活用できると考えました」

「ありがたく、飛空船強化に使わせていただきます!」


 これは予想していなかったな。財宝よりも嬉しいかもしれない。なかなか金では買えない素材だろうし。


「良かったね、ヤマト君! 売ったら、いくらになるんだろう?」

「マリア! 失礼ですよ!」

「あ! ごめんなさい、アカリさん!」


 サクラさんの叱責(しっせき)が飛んだ。マリアさんは、頭を下げて謝罪をする。自分の失言に気付いて、反省しているみたいだ。

 目の前で守護聖獣の素材を売る話をしたら、さすがに怒ると思う。そっとアカリさんの様子を窺うが、気分を害した顔は見せていない。とりあえず、一安心だな。


「価格は分からないそうですよ。ただ売るときは魔獣狩り協会を通すといい、そう仰っておりました」

「ずいぶん親切な守護聖獣殿だな。それと人間の組織も知っているのか」


 ピヌティさんが、感心したような声を上げた。少し呆れが混じっている気もするけど。聖獣は自身の素材を売ることも、想定していたのか。託宣の内容は、おおまかな部分だけ聞いた。とはいえ伝えきれないことも、きっとあるだろう。


「他に何か、お言葉を賜りましたか? 聞いたこと以外であったら、ぜひ教えてください」

「そうですね。しっかり睡眠を取るようにとか、今から湯治に行くが温泉はいいものだとか、拾い食いするときは浄化魔法を使うこと、などをお聞きしております」


 温泉か、いいなあ。いや、そうではなくて! なんというか生活に密着した託宣だと思う。


「アカリさん、拾い食いをするのですか? お止めになった方が、よろしいのではないでしょうか」

「しませんよ! 人聞きの悪いことを、言わないでください!」


 サクラさんの質問も、わりと失礼な気がする。本人は心配して、言ったみたいだけど。とりあえず話を進めよう。


「ところで移住の件について、お聞きしたいことがあります」

「なんでしょうか?」

「まずは移住希望者の人数を教えてください」


 これを聞かないと、何もできないからな。


「それなら最初は300人の移住を、お願いします」

「けっこうな数ですね。……最初は?」

「あまりに希望者が多くて、何とか300人まで絞りました。様子を見ながら、次回の移住も頼みたいのです」


 そんなに希望した人がいるのか。ちょっと意外だ。


「出発の時期は、どうしましょうか?」

「十日の猶予を頂けると、ありがたいですね」


 さすがに早過ぎると思う。新天地に向かう、重大な引っ越しだ。しっかりと準備してほしい。


「余裕を見て、十五日後に出発としましょう。その間、俺たちはスンシュウの町で用事を済ませるつもりです」

「お心遣い感謝します。それと居住地ですが、本当に大型飛空船を借りても大丈夫なのでしょうか?」


 昨日、作業の合間に話した件だな。無理をすれば、500人くらいは暮らせると伝えた。家が建つまでは、その船で暮らすことになる。


「問題ありません。今なら大型飛空船の二隻くらいなら、同時に運用できます」

「それなら、いいのですが」


 しかも水竜の鱗や守護聖獣の羽根で、さらに飛空船創造スキルが強化されるはず。それからも細かい話を続ける。アカリさんは、正午前に帰った。これから別の仕事があるらしい。




 俺たちは簡単に昼食を済ませると、炎雷丸から降りた。


「これから飛空船の強化を始めます。それに合わせて、改造も行うつもりです」

「大物の素材が二種類か。楽しみだな」

「あたしも気になる!」


 ピヌティさんとマリアさんは、すでに記録を取る準備が完了している。強化したら操作実験を行うのが、恒例だからな。


「竜人船も変化しますよね。どうなるのでしょうか」

「改造の方向性は、考えました」


 異空間倉庫を開き、複数の魔物素材を取り出す。道中で入手した分も、含まれている。だが目玉となるのは、やはり水竜の鱗と守護聖獣の羽根だ。


「飛空船、強化!」


 素材が魔力に変わり、炎雷丸に流れていく。身体と飛空船が熱くなる感覚。油断すると気絶しそうなくらい、膨大な魔力が動いている。制御するのも、かなり困難だ。暴走の危険に冷汗を流しつつ、なんとか強化を終える。


「成功です」

「さっそく乗ってみよう!」

「いえ、まずは送還と召喚を試してみます」


 申し訳ないけど、マリアさんの提案は却下させてもらった。召喚速度にも変化がある気がしたのだ。何度か送還や召喚を繰り返した。


「思った通り、召喚の速度が上がっていますね」

「戦闘中にも、乗り換えやすくなるな。いいことだ」


 次は人型飛空船を確認しよう。この島なら格納庫に行かなくてもいいか。


「召喚、竜人船トライバスター!」


 目前に現れる巨大な存在。見慣れた形ではあるけど、以前と違う点が一つ。全身を黄金色の輝きが包んでいる。今までの竜人船は、赤色を主としていた。それを、金色に変えたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ