表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/217

96話 移住決定、ギントビ島の住民

「夢幻島に移住ですか。理由を教えてください」

「守り人の役目は、結界を維持することでした。大罪の欠片を外に出さない、それが目的。しかし状況は変わりました」


 エンバー・Pの欠片を、回収したからだな。俺は話の続きを促す。


「瘴気の大元が無くなった今なら、カナトビ島を浄化することも不可能ではありません。元の姿を取り戻せるかもしれないのです」

「ギントビ島で生活したままでは、駄目なのでしょうか」


 今の暮らしを捨てることになる。一から生活基盤を整えるのだ。どう考えても、大変だろう。


「私たちでは、結界を通過できません。導きの(さい)が必要となります」

「しかし結界を消滅させ、張り直すことは可能です。そのときに新しい鍵を用意するのは、どうですか」


 この方法も大変ではある。しかし一度だけ行えば、後は保守すればいい。総合的な労力は、比べ物にならない。


「できれば、あの結界は維持したいと思います。何代も前の聖女様と守護聖獣様が、協力して張ったものと伺いました。私たちの都合で、勝手に消すのは忍びないのです」

「承知しました。夢幻島の移住の件、進めていきましょう。俺たちにとっても、ありがたいことです」


 結界は守護聖獣も関わっているのか。だから通過することが、できたのだろう。それはともかく、移住の方法を考える必要があるな。


「ありがとうございます。頂いた財宝は、移住のために使う所存です。ヤマトさんが必要な物は、ご自由にお持ちください」

「それなら魔法薬の半分と、夢幻島の生活では活用しにくい換金物を頂戴します。よろしいでしょうか?」


 特に前半は譲れない。サクラさん達の生命に関わることだ。アカリさんは、村長を見た。


「もちろん構いません。守護聖獣様が認められたヤマト殿には、財宝を自由に扱う資格がございます」


 無事に村長から許可をもらった。助かる。ただ気になるフレーズが聞こえたな。守護聖獣様が認められた、というのが分からない。感謝するとは言っていたから、そのことだろうか。


「疑問に思ったでしょうから、補足しますね。先日のことです。守護聖獣様から、託宣を(たまわ)りました」


 そして静かに内容を語り出す。厳粛な雰囲気で、思わず背筋を伸ばしてしまう。表情も怖いくらい真剣だ。


 遥か昔に守護聖獣は大木と同化し、島の浄化を続けていた。しかし水竜に宿った欠片は厄介で、どんどん島の瘴気は増えてしまう。なんとか水竜の動きは封じたものの、自身も大木から移動することはできなかった。


「そんなとき俺たちが来て、欠片を回収したのですね」

「その通りです。欠片を支配したことに、たいそう驚いていました。感謝の念を忘れぬようにと、仰せつかっております」


 まあ、俺に不利益な話ではないか。


「夢幻島の開拓とカナトビ島の浄化は、両立できそうです?」

「当面は無理だと思います。浄化要員は、私を含めて数名しかおりません」


 数名とは、ずいぶん少なく感じる。しかし島の人口は、そんなに多くないはず。専門の魔法教育機関もなしに、数人がいるだけでも大したものだな。


「瘴気は周囲に影響を与え、どんどん増えていきますからね。確かに少人数では、困難でしょう」

「ですので、まずは夢幻島の開拓を手伝わせてください。少しずつ浄化要員を増やして、いつの日かカナトビ島を復活させます」


 気の長い話だけど、不可能ではないな。新たに発生する瘴気より、浄化する量が増えれば達成は可能だ。やっぱり一朝一夕には、いかないだろうけど。


「聖女様とヤマト殿のお力添えで、希望が生まれました。村長として、厚く御礼申し上げます」


 結果として、島の助けになったのなら良かったと思う。


「聖女として、私も力を尽くすつもりです。いずれはカナトビ島に常駐して、浄化作業を続けましょう」

「そこから先は時間を掛けて、瘴気を払っていくのですね。一日に千の瘴気が生まれるのであれば、一日に千五百を浄化する」


 険しい道だろうけど、真っ暗闇ではない。俺も応援したいと考えている。いつか真のカナトビ島を見る日まで。




 話がまとまった気分だけど、まだ財宝の確認は終わっていない。魔法薬の半分は貰うと確定した。後は換金物や魔道具、そして武具か。要相談だな。


「見てください、東方の刀もありますよ」

「回収しているときに、サクラさんが興味深そうに見ていた刀ですか?」

「気付いていたなら、声を掛けてください!」


 あまりに目が本気だったから、話し掛け辛かったのだよな。


「我らの祖先が島に着いたとき、すでに刀鍛冶師の夫婦が住んでいたと伝わっています。その弟子たちの作品でしょう」

「無人では、なかったのですね」


 未開空域とはいっても、誰かしら人がいることもあるか。


「カナトビ島やギントビ島の名称は、その二人が付けたと聞きました。そして子孫の一部は、東方に帰ったとの言い伝えもあります。島で発展した鍛冶技術を、外に広めるため旅立ったとか」

「じゃあアキツ国に、子供たちがいるかも!」


 マリアさんが、感動の声を上げた。その子孫たちは、無事に東方へ着いたのだろうか。もし今でも鍛冶の技術を伝えているとしたら、夢のある話だな。


「直系の子孫なら、この島にいるのですけどね」

「なるほど。ちょっと家系図が気になります」


 きっと長い巻物に違いない。ふと横を見たら、ピヌティさんが短剣のような物を持っていた。じっと見つめている。


「どうしました?」

「ああ、ヤマト殿。気になる武器があってな」


 手にした推定・短剣を見せてくれる。大きさは8センチメートルくらいか。後部が輪になっているのが特徴だな。あ、もしかして。


「これクナイでしょうか」

「ああ! 聞いたことがあるな。親戚に使い手がいたはず。私は一度も姿を見たことがないが」


 たしか登器として使われていた道具だよな。他にも投げたり、穴を掘ったりと色々な用途があったとか。


「今、クナイと聞こえました。危険な物があるのですね」

「え? 危険?」


 まあ武器としても使えるし、安全とは言えないと思うけど。サクラさんは、鋭い目付きで重々しく頷いた。


「苦しむ時間すら無く、あの世に送る。そこから苦無と名付けられました。伝説の暗殺者が使っていた武器です」

「そ、そうでしたか」


 俺の認識とは、全く異なる見解だ。絶対に違うと思うけど、ここは異世界。安易に否定できない。

 そして目の前には、そんな武器が十本もある。五色で二本ずつ。それぞれ緑、赤、黄、白、黒だ。


「宝物庫にあったのだから、特殊な武器なのだろう」

「魔導武器でしょうか」


 魔力の流れを感じる。どうやら色によって、属性が異なるみたいだ。


「おそらく魔道具だと思います。魔力を込めると、色が示す属性の力を扱うことができそうです」

「ほう。面白そうだな。どんな属性を使える?」

「緑が風、赤が火、黄色が土、白が金、黒が水でしょう」


 魔力を感知して調べた結果だ。


「風や火は理解できる。金が分からないな」

「金属を意味していると考えられます。物を硬くしたり、土と合わせ鉱物を探したりが可能みたいです」

「なるほど! ちょっとした魔法使いになれそうだ」


 似たような魔道具はあるが、その中でも群を抜いて魔力の変換効率が良さそう。宝物庫に保管されていただけある。


「ヤマト殿。このクナイ、私が使っても構わないか?」

「大丈夫だと思います。念のため、村長とアカリさんに確認しましょう」


 開拓にも使えそうだけど、必須というわけではない。拠点には代わりの魔道具も結構ある。二人に聞いたら、問題ないそうだ。


「ところで俺たちが扱えそうな防具、見当たりませんね」

「ホントホント! 鎧や盾ばかりだよ!」


 宝物庫には、服系統の装備が無かった。保存魔法と相性が悪く、朽ちてしまったのかもしれない。保存する物の強度により、効果に差が出ると聞いたことがある。

 しばらく財宝の確認が続く。利用できそうな物が多くて、本当に助かる。不要な物は換金して、開拓資金に回すつもりだ。それとサクラさんの見ていた刀だけど、秘刀術には向かなかったらしい。


「使えそうなのは、魔導装飾品くらいだな」

「あ! 良さそうな腕輪がありました。魔法抵抗力を高める効果があります。数も揃っているから、四人で持ちませんか?」

「賛成します。仲間の証ですね」


 サクラさんの考え方もありだな。チームメンバーを示す腕輪。団結力が高まりそうだ。他の二人も同意してくれる。




 日が沈みかけた頃、確認が終わった。すぐに使わない物は、再び異空間倉庫に収納してある。

 それにしても各種魔法薬は、本当にありがたい。全員が貰った腕輪も気に入っている。ピヌティさんの魔道具も、応用が利きそうで素晴らしい。名前が分からないから、五行クナイと呼ぶことにした。そして換金用の宝石も貰っている。今日は良い夢が見られそうだな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ