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70話 飛行訓練、大型飛空船

 全員で甲板に戻ってきた。これから大型飛空船の、試し乗りをするつもりだ。初めて、創造したフェリーを動かす。楽しみだな。


「まずは少しだけ、浮かせてみます」

「わあ! 本当に動いているよ!」


 マリアさんが驚きの声を発した。気持ちは分かる。これだけ大きい船だ。一人の力で動かすのは、信じがたいのだろう。


「これだけの高さだと、船底に回られたら対処できないのでは? 私の攻撃手段では、特に難しいな」

「結界に強弱を付けて、甲板に誘導しますか」


 ピヌティさんの攻撃方法は、直刀や道具を利用しての近接戦がメインだ。遠い相手とは相性が悪い。


「大半の魔獣なら大丈夫でしょう。しかし知能の高い魔獣だと、弱点を的確に狙ってきますよ」

「……その通りですね」


 サクラさんの指摘に、少し考えた。やはり対策としては不十分だよな。


「武装は無いの? 大砲が付いてる飛空船、あるでしょ。それを船底に付けられないかな?」

「現状だと、扱える人がいません。側面に大砲が無いのも、同じ理由です」


 専門の訓練も無しに、命中させるのは難しいだろう。威嚇くらいにはなるけど、コストに見合わないと思う。魔導弾は高いからな。


「あ! 竜人船で下に回り込むのは、どうでしょうか? 私とヤマトさんで操作すれば、魔獣に後れを取りません!」

「大型の魔獣なら、それもありですね。ただ小型の魔獣だと、二人で操作するより別に攻撃した方がいいと思います」


 手数が減るのは、できるだけ避けたい。竜人船トライバスターは、対大型魔獣用の切り札だな。


「小型飛空船で下に回る方法もあるのですが、その場合だと大型飛空船の機動力が落ちます」

「フェリーを操作しながら、他の飛空船を動かすのは難しいのですね。修練を積めば、可能になりそうですか?」

「……いつかは可能だと思います。ただ東方へ出発する日までには、間に合わないでしょう」


 バイオレット様の質問に対し、考えながら答えた。


「考えていても埒が明きませんね。フェリーの操縦訓練を続けます」

「残留組の議題にも出しましょう。誰か良い案があるかもしれません」

「よろしくお願いします、バイオレット様」


 さて、訓練の続きだ。


「高度上昇!」

「上昇速度は抑えているのか?」

「まだ最初ですから」


 ピヌティさんへ簡潔に答え、上昇を続ける。だいたい転移門と同じ高度になったあたりで、飛空船を停止させた。


「前進します。少しずつ速度を上げるつもりですので、気を付けてください!」

「わかったよ!」


 全員が甲板に集まったまま、飛空船を発進させる。おそらく俺が操舵室に行くことは少ないだろう。まだ正規の操縦方法は勉強中だ。計器の種類も、よく分かっていない。そして何より、魔獣との戦闘要員が減るのは危険だ。操舵室からの戦闘行動は、かなり難しい。


 そのまま、しばらく飛行を続ける。加速と減速、あるいは上昇や下降など。基本の操作を一通り、試してみた。


「魔力の消費量を除けば、中型飛空船の操作と変わらないですね」

「ならば次は竜人船を使いましょう。発進と格納だけでも!」


 いずれ必要になる訓練だからな。サクラさんの気合も凄いし、試してみようか。


「それでは、竜人船トライバスターに乗りましょう」

「承知しました!」


 デッキを開放。真下に人型飛空船が見える。風魔法を使い、二人で操縦席に乗り込んだ。


「サクラさん、いきますよ!」

「はい! 竜人船、発進!」


 人型飛空船を飛ばし、空に出た。フェリーを見下ろすと、その大きさが分かる。


「久しぶりです。動作の確認も行いましょう」

「分かりました!」


 下の皆に迷惑を掛けないように気を付けながら、動きを試していく。前回より、はるかに動作が向上していた。そろそろ俺だけでも、封印の鎖が切れそうだ。夢幻島を出やすくなったかな。


 他の皆を待たせ過ぎるのも悪い。ある程度、確認できたら切り上げる。しかしサクラさんは、少し物足りなさそうだな。時間を作り、また一緒に乗ってもらおう。


「ヤマトさん。鞘を創れませんか? 居合術を試したいのですが」

竜炎牙刀(りゅうえんがとう)の魔力を抑える力が必要なので、今は難しいと思います。それと居合術は、俺が挙動を覚えなければ使えないはずです」


 俺が動作を担当、サクラさんが攻撃を担当だからな。


「なるほど。居合術、一緒にがんばりましょう!」

「……できる範囲で、がんばります」


 一緒にがんばろうと言われると、断りにくい。俺も興味はあるから、挑戦はしてみるか。ちょっと予防線を張ったのは、許してほしい。

 とにかく、他の四人と合流しよう。




「お待たせしました」

「凄かったわ! 人型飛空船闘技大会で、優勝できるよ!」

「大げさです、マリアさん」


 人型飛空船闘技大会は、西方で行われる競技らしい。王家直属の人型飛空船部隊が存在しており、戦力を示すための大会だとか。示威行為の一種だな。もし一般人が優勝したら、大変な気がする。


「優勝はともかく、まったく出場する気は無いのでしょうか? ヤマトさんなら、いい結果を残せるかもしれませんよ」

「興味はありますけど、優先順位は低いですね」


 ただ時間に余裕があれば、行ってみたい気もする。


「ところで魔力も減ってきましたので、休憩がてら明日からの予定を確認しませんか?」

「それなら食堂で、お茶にしましょう」


 バイオレット様の提案で、食堂に向かう。お茶も本人が淹れてくれた。気のせいか、腕が上がっているような。


「我々の予定は、依頼と迷宮攻略が主になるな」

「あ、ピヌティさん。そこに行商の準備も加えてください」


 商売も忘れてはいけない。


「そうだったな。マリア、問題点はあるか?」

「ヤマト君の異空間倉庫魔法を使う場合、出入国審査が厳しくなるわ。商品の仕入れよりも、そっちが大変ね」


 個人で魔法を商業利用すると、手続きが煩雑になる。悪用されたら、大変だからな。こればかりは仕方がない。


「カイス王国の同盟勢力内ならば、問題なく進めるはずです。問題は東方へ到着するまでに、別の勢力圏を通る必要があることでしょう」

「そういえば俺の身元は、カイス王国が保証してくれましたね。バイオレット様のおかげです」

「私に宛てた手紙を、配達したでしょう。正当な報酬だと思いますよ」


 魔獣狩り協会を通して、王家からの手紙を彼女に渡したことがある。そのときの報酬は、規定の下限ギリギリだった。王宮の財産から報酬を出せば、必ず記録に残る。バイオレット様への援助と受け取られないように、低い金額だったのだろう。代わりに便宜を図ってくれたみたいだな。


「いっそのこと危険を覚悟で、どこの勢力にも属していない空域を進むか?」

「魔獣のエサには、なりたくありませんよ」


 ピヌティさんも、本気で言っているわけではない。この世界には、どこの国にも属さない空白地帯が存在する。それも結構な広さだ。大半は危険すぎて、管理が難しい空域である。そこを通れば、手続きの回数は減るだろう。よほどの物好きしか、使わないルートだけど。


「とりあえず明日は王都に行って、依頼と商品を探しましょう」

「東方に持っていかない素材は、売却するよね。魔導弾の補充は、その金額から出してもらえるかな?」

「もちろんです」


 消耗品などは、チームの共有資産から出すと決めてある。さて、多少は魔力が回復したな。通信系の確認と訓練を始めようか。それと船内の微調整だな。皆の意見を聞きながら、改修していこう。

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