69話 創造、大型飛空船
「大型飛空船、創造! 魔力よ集いて船となれ!」
いい手応えだ。昨日、超解飛空船図鑑超完全版改を熟読した甲斐があるな! 自分で自分を褒めたいほどの出来だ。目の前に出現したのは、フェリーを基にした大型飛空船。190メートル程の大きさで、フェリーの中でも最大級となる。また200メートル以上だと、巨大飛空船と呼ばれるようだ。
「ヤマト、魔力は大丈夫ですか?」
「問題ありませんよ、バイオレット様。最近、魔力量が増えてますので」
ちょっと信じられないくらい、魔力が向上している。数ヶ月前とは段違いだ。タイミングを考えると、TB・O・リッチの欠片が怪しい。そのことをバイオレット様に相談してみた。
「大罪の欠片は魔力の塊ですから、十分に考えられますね。他の二つも影響していることが考えられます。またヤマト自身の力が上がり、欠片から引き出せる量も増えたのかもしれません」
「安全に使えれば、いいのですけど」
結論は出なさそうだ。この話は、いったん置こう。それより飛空船を確認するか。みんなも中が気になっているようだ。この場にいるのは五人。風雷号組とバイオレット様だ。他の人たちは、それぞれ作業に出ている。
「さっそく乗ってみたい!」
「マリア、落ち着きなさい。説明を聞いてからにしましょう」
サクラさんが、マリアさんを窘めている。よく見る光景ではあるが、サクラさんも興味深そうに飛空船へ視線を向けていた。
「この飛空船は後方からも側面からも、乗れるようになっています。緊急時などは、俺が風魔法で全員を運ぶつもりです」
「この大きさの船だと、互いに連絡も取り辛いだろう。対策はあるのか?」
当然の疑問だよな。特にピヌティさんは、魔獣に気付くのが早い。速やかに情報を伝達する方法が気になるのだろう。
「魔導無線機を使います。あとは魔導放送機ですね。定期船でも使われていて、信頼度も高いでしょう」
「ありがとう、了解した。後で使い方を教えてほしい」
「ええ、もちろんです」
これも訓練が必要だよな。
「魔獣との戦闘は、どこで行います? 前方の甲板でしょうか?」
「基本は、そうですね。飛空船の操作に慣れたら、こちらにも風刃翼を付けるかもしれません」
これは魔力と要相談だな。魔力量が増えたとはいえ、無尽蔵にあるわけではない。考えなしに改造は危険だ。
「後は移動しながら説明します」
まずはフェリーの後方を開き、中に入る。本来なら乗り物用の通路だが、案内も兼ねて進んで行く。
「ここは停泊所でしょうか」
「飛空船や馬車、魔導式自動車などを停める場所みたいですよ」
小型飛空船などは、長距離の移動が危険だ。大型飛空船で目的地の近くまで行くことは、それなりにあるらしい。それから施設の説明をしながら、船内を歩く。ただ飛空船創造スキルだと、船内の設備が使えるとは限らない。
売店はあっても、商品は無い。ゲームコーナーは、ただの広いスペースだ。食堂も材料は無いが、設備はある。食材を持ち込めば、料理は可能だ。大浴場やランドリーは使える。マッサージルームは使えなかった。シアタールームや、ビデオルームもある。ここは帝都ガンベルで貰った、魔導放映機が使えたな。手持ちの録画映像は、中型船大レースの記録だけではあるけど。
他の施設も同じような感じだった。船内を回り、一つ気付いたことがある。
「生活に密接する施設は使えますが、娯楽や遊びに関しては制限が大きいようです」
「ステータスカードの表示だと、娯楽の階級が低いと言っていましたね。何か関係があるのでしょうか?」
「現状では分かりません。別の原因が、ある気もします」
これについては保留だな。今は使える部分を堪能しよう。
「ヤマト君。空いている部屋には、訓練場があるといいな」
「あ、いいですね。射撃場も作りますよ」
「ありがと!」
マリアさんの提案は即採用だ。要領は分かっている。手早く部屋を改造した。細かい部分は、使いながら調整しよう。次は客室を見にいく。この規模のフェリーだと、部屋数が多い。和室もあった。サクラさんが喜ぶだろう。
「次は甲板に出てみます」
「そこなら人型飛空船も置けるでしょうか?」
「置くだけなら、なんとかなりそうです」
ただ全高が20メートル以上だからな。戦闘や視界の邪魔になりそうだ。それに魔獣からの攻撃を受けるかもしれない。試しながら、考えよう。全員で甲板に出た。
「竜人船トライバスター、召喚!」
大型船と人型飛空船の同時使用だ。慣れていないからか、魔力の消費が激しい。だけど、まだ大丈夫だな。
「ここだと魔獣から狙われるのでは? 全ての敵を弾く結界は、難しいだろう」
「やはり、そう思われますか」
ピヌティさんの懸念は、俺が考えていたことと同様だ。完全に魔獣を弾く結界は、魔力の消費量が大きい。停泊して休息を取るときだけ、使うくらいである。そのため移動中は敵を引き込んで、結界の内側で戦闘を行うことが多い。
「さすがに格納庫は、ありませんよね?」
「無いですけど……創りましょう!」
サクラさんの言葉を聞き、格納庫を創り出すことを決める。
「場所は前方甲板の下にします。そのままだと高さが足りませんので、時空魔法で空間の拡大を行うつもりです」
そこなら問題が起きても、大型飛空船に影響が出ないのも助かる。格納庫なら危険物もあるだろうし、安全にも気を配れるな。
「無茶なことを言いますね。可能であれば、それが一番いいでしょうけど」
「やるだけ、やってみますよ。もし駄目なら、次の手を考えるつもりです」
バイオレット様に答えながら、手順を頭の中で確認する。まず、竜人船を送還した。そして意識を集中。今までの中で、最大規模の時空魔法となるはず。間違いなく中級魔法以上の難易度だ。
「空間よ、開け!」
言葉と共に、莫大な魔力が流れていく。向かう場所は、デッキの下。空間が拡がるのを、感覚で理解した。
「成功ですね」
「見た目だと、よく分からないよ?」
「今、甲板を開きますよ」
マリアさんの言うことも、もっともだな。見た目は何も変化していない。飛空船創造スキルを使い、甲板に開閉機能を付加する。これで拡げた空間と出入り可能になった。
「あ、開きました! 中が見えますよ、ヤマトさん!」
「設備が無いから印象は違うが、王都カイスの格納庫を参考にしたのか?」
「そうですよ。手本があると、創造しやすいので」
中に入ろうとして、降りる手段を考えていなかったことに気付く。雰囲気で察したのか、バイオレット様が声を出す。
「私が飛空魔法を使いましょう」
「お願いします」
かなり魔力を消費したからな。正直、助かる。
「休憩室なども、再現したの?」
「下手に手を加えるよりも、忠実に創る方が楽だったのですよ」
それに休憩室があれば、何かと便利だしな。無事に下へ到着した。さっそく人型飛空船を置いてみよう。
「竜人船、召喚!」
格納庫の中央に、巨大な存在が出現する。ただの広い部屋が、格納庫らしく見えるようになったな。
「これで空母型飛空船になりました! この船で東方に向かいますか?」
「ちょっと無理です。時間を掛けて、操縦訓練をする必要があるでしょう」
「あ、そうですよね」
サクラさんが、少し気を落としているみたいだ。大型飛空船で移動したい理由でも、あるのだろうか。
「どうしました?」
「父が竜人船を見れば、喜んだかなと思いまして」
もしかしてサクラさんの人型飛空船好きは、父親の影響かな。
「それなら異空間倉庫から取り出す体で、お見せしますよ」
「ありがとうございます! きっと大喜びですよ!」
そこまで好きなのか。ソウルスキル・飛空船創造のことを話さなければ、見せる分には問題ないな。
「とりあえず、上に戻りましょうか。飛行訓練をします」
「持ち場の確認もしないとな」
ピヌティさんは哨戒について、考えているようだ。その辺の相談も必要か。




