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飛空船創造スキルで大冒険! 2008年版七つの大罪と共存して特能獲得  作者: 石上夢悟朗
第三章 中型飛空船対抗五島制覇大競争の開催
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60話 情報交換、TB・O・リッチの欠片

 中型船大レース終了から数日、まだ俺たちは帝都にいた。魔導通信販売機の権利書発行に、時間が掛かっているためだ。レースの翌日は、完全に休みを取った。次の日から、魔獣狩り協会と魔獣退治組合の依頼をこなす。


 そして今日は、休暇の予定だった。しかし飛空船発着場の受付から、シルドさんが来ていると連絡がくる。今は格納庫の休憩室で、来訪者を待っていた。ピヌティさんとマリアさんは、タイミングが悪く二人で出掛けている。話を聞くのは、俺とサクラさんだけだ。


「数日ぶりだね、ヤマト。突然の訪問、迷惑を掛けて済まない」

「お気になさらず。今日は、予定もありませんので」


 シルドさんが格納庫に現れる。きっと大罪の欠片について、教えてくれるのだろう。サクラさんが、お茶を用意してくれた。静かに差し出す。


「どうぞ」

「ありがとう」


 さて、情報交換といこうか。


「欠片を異空間倉庫に収納したのだろう。おかしな声は、聞こえなかったのか?」

「聞こえましたよ。ただ俺が持っている限りは、問題なさそうです」


 そして夢幻島と七つの大罪に、密接な関わりがあること。大罪の欠片を集めると、島の支配者に近付くことを伝えた。一緒に開拓の話をすると、強い興味を持ったみたいだ。


「よく分かったよ。次は僕の話を聞いてもらおうか。ただ何から話せばいいのか」

「それでは欠片を入手した状況から、教えてください」


 大罪の欠片は、七つ全てが夢幻島にあった。しかし六つの欠片が、外に持ち出される。何百年以上も前の話だ。どうしてシルドさんが持っていたのか、入手経路が気になる。


「あれは先祖代々、受け継がれていた物なんだ。僕の家系は結界術師の一族で、ある滅びた王国に仕えていた。国の滅びた原因が、TB・O・リッチの欠片。国王から受けた最後の命令が、欠片を封じ続けること」

「それで欠片を持っていたのですか」


 納得しかけたが、シルドさんは首を横に振った。


「ただ話は少し厄介でね。一年ほど前に、欠片を紛失してしまったんだ。家の使用人が欠片を勝手に持ち出して、商人に売り払った。事情を聞いたら記憶があいまいで、そのときの状況も覚えていないと」

「もしかして欠片の影響を、受けていたのでしょうか」

「おそらく、そうだと思う」


 本当に厄介な話だ。


「それで僕が探索に出たけど、商人は別の人物へ売っていた。欠片の行方を追っている内に、一人の魔獣退治屋が購入したと聞く。その退治屋は欠片を持ったまま、迷宮に入った。途中で格上の魔獣に襲われ、荷物を捨てて逃げだしていたと判明」


 聞いているだけで、苦労したと分かるな。広い世界で、一つの物を追っているのだ。簡単には、いかないだろう。


「そのとき魔獣は欠片を取り込み、迷宮内を彷徨(さまよ)い始めたみたいだ。僕は魔獣を見つけ、討伐に成功した」


 そこでシルドさんは言葉を止め、ため息を吐く。


「だけど旅の魔獣狩人が、先に戦っていてね。横入することに、なってしまった。焦りもあって、気を遣う余裕が無かったんだ。あの嫌な声を、一刻も早く封じたかったし。結局、交渉して欠片だけは渡してもらった」

「それ、噂になりませんでしたか。素材を横取りされかけた人がいる、という話を聞きました」

「ドマさんから聞いた噂ですね」


 サクラさんも覚えていたようだ。噂を流した人も、欠片の影響を受けていたのかもしれないな。


「その通りだよ。偶然、その状況の目撃者がいたらしい。しかも中途半端に、見ていたようだ。噂に気付いたときには、かなり広がっていた」

「魔獣狩人から、説明はしてもらわなかったのですか」


 言ってから、気付いたことがある。旅の魔獣狩人だったな。


「すでに国を出た後だったよ。とにかく、そこで欠片を取り戻したんだ。後はソウルスキルで結界を張って、終わりだと思った」

「でも、そうではなかったのですね」


 ソウルスキル・剛壁防御でも、完全には封印できなかったのだろう。


「三ヶ月ほど前か、欠片の力が強くなった。その頃から時折、欠片の声が聞こえるようになる」

「魔導機械の不調は、その頃から起きたのですか」


 夢幻島から火竜が外に出たのが、三ヶ月ほど前だよな。扉が開いて、TB・O・リッチ本体の力が流れたのかも。


「そうだ。情けないことだが、自分が原因を運んでいると気付かなかった。欠片を意識すると、頭の中に(もや)が掛かるような感覚に陥る」

「精神操作の類ですね」


 大罪の欠片は、負の感情に作用するのだったな。人間である以上、少なからず悪い心は存在するだろう。欠片は全ての人間に、影響を与える恐れがある。


「これは家の問題だと、一人で何とかしようとした。その結果として誰も止める人がいないまま、あちこちで欠片は魔力を吸収している」

「飛空船の動力部に、欠片を設置した理由は何でしょう?」


 危険な行為だよな。


「僕の意思ではないよ。気が付いたら、欠片で船を強化していたんだ。そして疑問に思うこともなかった。飛空船が暴走を始めるまではね」

「きっかけはゴーレムの魔力を、吸収したことですか」


 シルドさんは、はっきりと頷いた。欠片には意思がある。船に魔力を集めて暴走させ、自分を封印している邪魔者の排除に動いたのだろう。


「飛空船の魔力許容量が、限界に近くなった。命の危険を感じたことで、精神操作を退けたのだと思う」

「棄権用の信号弾を捨てたのは?」

「元は家の問題だからね。人を巻き込みたくなかった。それと近くに人がいたら、欠片は新たな依代(よりしろ)を見つけるだろうから」


 このあたりは、想像した通りか。


「心変わりされたのは、ヤマトさんの言葉を聞いたからですか?」

「TB・O・リッチの名前を聞いて、事情を理解していると思った。それで賭けてみる気になったよ」


 あのとき名前が分かったのは、能力からの推測だった。外していたらと思うと、ちょっと怖いな。


「あ、そうだ。俺が欠片を持ったままです。返しましょうか? 家に伝わる物だったのですよね」

「あれはヤマトが持っていてくれ。君に必要なものだろう。正直、肩の荷が下りた気分だよ」


 下りた荷物は、俺の肩に移動した気もする。まあ、いいか。


「ところでヤマトは、島を開拓しているのだろう。僕にも協力させてくれ。七つの大罪を冠する、七体の守護者。どうしても気になる」

「歓迎しますよ」

「この地で後始末をしなければならない。あちこちに迷惑を掛けてしまったからね。終わり次第、合流させてもらう」


 シルドさんが来てくれるなら助かるな。防衛面が強化される。


「相談なんですが、夢幻島を出入りする扉。それに結界術を掛けられますか?」

「お安い御用さ!」


 話を聞く限りだと、扉を通して欠片に力が送られている気がする。俺が通るときにも、同じ現象が起きる恐れがある。


「でもそれだと、私たちが出入りするときに困りませんか。乗っている飛空船が、結界で弾かれますよね」


 サクラさんが提案の欠陥を指摘した。そこは専門の結界術師なら、対策があると期待している。


「大丈夫。結界に自動認証能力を付加するよ。魔力制御を応用して、特定の人物には発動しないようにできる」

「魔力制御の応用ですか」

「個人の魔力を識別して、結界の発動を制御するのだよ」


 高度な魔導技術だったはず。さすがは若くして、魔獣狩り協会の相談役になった人だな。ソウルスキル以外にも、十分な能力を備えている。


「あれ? 魔力制御、自動認証……あ、そうだ!」

「ヤマトさん? どうしました?」

「あ、いえ。なんでも。後で話しますね」


 唐突に声を上げた俺に、サクラさんが心配そうな視線を向けた。慌てて、ごまかす。一つ思い付いたことがある。


「そろそろ僕は失礼するよ。ただ、近い内に顔を合わせると思う。協会に事情の説明もあるだろうし」

「説明は仕方ないですね。連絡があれば、協会に行きますよ。今日はありがとうございました」

「礼を言うのは、こちらさ。命を救われ、使命からも解放された。本当にありがとう。カッコイイ男だな、君は。僕と同じくらいに!」


 深く礼を言って、シルドさんは立ち去る。俺は思い付いたことを、試すつもりだ。




「サクラさん、今から実験をします!」

「実験、ですか?」

「その通り! 雷撃砲に自動認証能力を付けます!」


 よし! さっそく準備だ。まずはボートを改造し、雷撃角を付ける。いきなり風雷号で試すのは、危ないからな。ある程度の距離を取り、ボートの前に立つ。


「いきなり実践だと、危険ではありませんか?」

「大丈夫ですよ! 自信があります!」


 中型船大レースを通し、俺の魔力制御も上がっている。きっと成功するに違いない! 意識を集中し、雷撃角を注視した。いきなり自動での判別は無理だ。まずは手動で魔力を制御し、感覚をつかむ。


「雷撃砲、発射!」


 俺の右手と雷撃砲が接触。十分に魔力を制御すれば、身体に衝撃を与えず通過させることも可能だ! 可能、なんだけど。あれ? 魔力が重い。全身全霊をかけて、魔力を操作! え? 雷撃砲の威力が上がっている? そうじゃないだろ! 


 ――次の瞬間、身体が吹き飛ばされる。気付いたら、背中に衝撃を受けていた。


「ヤマトさん!?」


 格納庫の壁に、叩き付けられたようだ。頭を打たなかったのは、不幸中の幸いか。体が崩れ、地に伏せる。あの一瞬で、魔力を使い果たしたようだ。


「大丈夫ですか!? ヤマトさん!」


 サクラさんの声が、遠くに聞こえた。どこか懐かしい、魔力切れの感覚。やがて俺は意識を手放した。

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