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飛空船創造スキルで大冒険! 2008年版七つの大罪と共存して特能獲得  作者: 石上夢悟朗
第三章 中型飛空船対抗五島制覇大競争の開催
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59話 中型船大レース、三日目・決着

「救助に向かいますか!?」

「レースを続けます。シルドさんは、諦めていません」


 焦る心を抑え付けながら、サクラさんに答えた。理由は知らないが、シルドさんは一人で対応しようとしている。棄権用の信号弾を捨てたのが、その証拠だ。何より不用意に近付いたら、爆発を結界内に留める恐れがある。他の人間を巻き込まないようにだ。


「ピヌティさん! 剛壁防御丸の様子に、注意を払ってください! 特に操縦士です! わずかな変化でもあったら、教えてください!」

「了解した!」


 もうすぐ剛壁防御丸に追い付く。最善の方法を求め、必死で考えを巡らす。高速思考術の最大活用だ。


『猪鹿蝶号は、剛壁防御丸から距離を取りました! 救助隊には連絡を入れています!』

『到着には数分かかるそうだ!』


 実況のラナさん達が救助要請を出してくれたのか。だけど到着まで数分。持つのか? 剛壁防御丸は落ち続けている。爆発が先か、墜落が先か。どちらも危険には変わりない。


「シルド殿が気絶した!」

「レースは中断! 救助に向かいます!」

「はい!」


 強く返事をしたサクラさんを見ながら、最大出力で結界を張る準備をしておく。爆発に巻き込まれる恐れは、多分にある。


『風雷号が剛壁防御丸に向かっています!』

『助けに行ったのか!?』


 風雷号を剛壁防御丸の近くまで移動させる。だが結界に阻まれて、それ以上は進めなかった。ソウルスキル・剛壁防御は、気絶しても効果が残るのだろう。何度か声を掛けるが、意識を失ったままだ。少し強引だが、結界に強い魔力を流し込む。


「シルドさん! 目を覚ましてください!」

「君は、ヤマト? 早く逃げるんだ! これは僕に任せろ!」


 やっと意識が回復してくれた。気絶した原因は、魔力切れだろう。急がなければ、また魔力を使い意識を失うことになる。


「TB・O・リッチの欠片なら、俺が対処法を知っています! 全ての結界を解除してください!」

「欠片の存在を、知っているのか――分かった。剛壁防御、解除!」


 その瞬間、声が聞こえた。


 ――人を変えろ、人を喰らえ、人を超えるのだ――


 いつか、聞いた声だ。だけど惑わされない。慌てずに欠片の場所を探る。発見! 飛空船の動力部だ。魔力を船全体に、張り巡らせる。よし、捉えた!


「欠片にすぎないお前は欠片に返れ!」


 解呪魔法により、剛壁防御丸とTB・O・リッチの欠片を分離。即座に異空間倉庫に回収。


 ――仮の主。三つの主。我らを集めよ。さすれば汝は真の主となるだろう――


「欠片の呪縛が解けた!」

「急いで風雷号に! もうすぐ爆発します!」


 欠片は飛空船の機能全体を、強化していた。その強化で魔力許容量も上がっている。欠片を失えば、許容量が下がる道理だ。船が爆発する、直前。


「倉庫、開け!」


 異空間倉庫魔法で、剛壁防御丸を収納。倉庫内で爆発すれば、こちらに影響はない。シルドさんは、無事に乗り移ったみたいだ。一安心だな。レースは放棄することに、なったけど。


『凄いです! ヤマト選手、シルド選手を無事に救出しました!』

『まさか中型船を丸ごと収納するとは。倉庫内なら、爆発しても安全ということか。魔導師ならではの発想だな』




 さて、後はここからだ。


「ヤマト、ありが――」

「――話は後です! 風雷号、発進!」


 説明している余裕は無い!


『風雷号、再びゴールに向かって動き出します!』

『いや、だが、レースはもう……』


 これからは加速あるのみ!


「レースは放棄しました。だけど全力で完走します! 構いませんか?」

「猪鹿蝶号から目を離さん。変化があったら、すぐに教える」

「残った魔石、全部使っちゃおう!」


 ピヌティさんも、マリアさんも賛成してくれたようだ。サクラさんが近付いてくる。どうしたんだろう?


「ヤマトさん。昨日、言ってましたよね。『最初にゴールするのは俺たち』だと。実現させましょう。私も協力します!」


 ドマさんに言った言葉だな。あ、そうか! サクラさんの協力があれば、まだ実現可能だ。俺は彼女の身体を抱き寄せる。そっと口付けた。――そして、風雷号を加速させる。


『ああっと! ヤマト選手が、サクラ選手にキス!? 羨ましい! そして突然の加速! 愛の力が、速度を上げたのでしょうか!?』

『感情を力に変えるスキルも存在するが、今回は違うだろう。聖化粧術に伝わる命力増幅だ。そして魔力合一を発動。結果が、あの加速力だ』


 状況把握が的確だな。解説席から、そこまで分かるのか。正解だ。さらに今回は次がある! 増幅された魔力を、飛空船の隅々まで送り込む。


『現在、トップは猪鹿蝶号。次いで風雷号です! ゴールまで一直線。風雷号、残り2万メートルを切りました!』


 予選第一競技も、2万メートルだったな。あのときの再来といこうか。ここから逆転だ!


『風雷号、さらに加速! 猪鹿蝶号に、ぐんぐん迫る!』

『予選で見せた魔力凝縮解放! 魔力合一と同時に可能なのか!』


 ちょっと無茶をしているけど、大丈夫! でも明日の魔力痛が、大変なことになりそう!


『猪鹿蝶号、残り1万メートル! ここで加速した! 風雷号を引き離せるか!?』

『今の加速を込みでも、風雷号の方が速い。差を縮めている』


 残り5千、あと少し! 残り3千、捉えた!


『残り千メートル! 風雷号、猪鹿蝶号に並んだ! そして鮮やかに抜き去ります! 風雷号、そのままゴール! そして猪鹿蝶号もゴールです! ええと、先頭は風雷号なのですが……』

『途中で気付いたな。勢い任せに、実況を続けていたか』


 魔導掲示板に結果が表示されている。猪鹿蝶号……1着。風雷号……失格。


『中型飛空船対抗五島制覇大競争、優勝は猪鹿蝶号です! 風雷号は、失格ということになりました』

『失格の理由は、飛空船を対象にした時空魔法の使用だ』


 爆発が遅ければ、すぐに離脱できたのだけど。欠片が分離したら、即爆発だったからな。倉庫へしまう以外に、方法は無かった。


「すまない、ヤマト。僕を助けるために、失格になったのだな」

「お気になさらず。後日、話を聞かせてください。主に大罪の欠片について」


 それからシルドさんを、救助船まで送っていく。検査をすると言っていた。




 大会終了までは、控室となる格納庫で待機となる。各チームごとに分かれているため、他の選手と顔を合わせることはない。最低限の点検だけした後は、格納庫内の休憩室で待つことにする。どうやら入賞者が決まったらしい。魔導放映板に順位が出ている。


「1着、猪鹿蝶号。2着、レッシュ丸。えーと。その後は、よく知らない名前が続いています」


 全チームを詳しく知るのは、難しかったからな。詳細が分からない選手も多い。


「大会は、今日の日没までだったか」

「そうだよ。入賞者が決まった日の夜に終了」


 ピヌティさんとマリアさんも、(くつろ)ぎながら魔導放映板を眺めている。飛空船競技会の開催中は、気が張り詰めていたからな。ゆっくり休んでほしい。


「優勝者のインタビューが流れるみたいですね」

「ドマさんが出るんだ。楽しみ!」


 マリアさんが喜んでいる。知り合いが映ったら、気になるよな。


『ドマ選手、優勝おめでとうございます』

『ありがとう』

『優勝賞品を譲渡されると聞きましたが、本当なのですか?』

『間違いないよ』


 インタビューもラナさんの担当か。それより賞品を譲渡ね。お得意様にでも渡すのだろうか。


『魔導通信販売機は非売品で、とても貴重な物と聞いています。どちらに渡されるのでしょうか?』

『渡す相手は、風雷号の代表ヤマト選手。危険な魔獣が生息する島を、真剣に開拓していると聞いた。その一助になったら幸いだ』


 これは本気か? 


「よお! 邪魔するよ!」

「あ、ドマさん! 今、インタビューの放送してるよ!」


 これ、録画だったのか。マリアさんは普通に声を掛けているけど、サクラさんは驚いているような。録画放送は、まだ普及していないのだろう。


「見ていたのか。なら丁度いいな。魔導通信販売機はアンタにやるよ。それを言いに来た」

「ありがたいですけど、なぜ譲渡を?」


 裏がありそうで怖いです。


「アタシらにとっては、絶対に必要な物ではない。あれば便利だけどね。それより傭兵団の名を売る方が利になるのさ」

「なるほど。そういうことなら、遠慮なく頂きます」


 他に何か話がありそうだけど、どうしたのだろう。


「まあ、なんだ。アンタ達を見ていたら、初めて槍を持った日を思い出したよ。ありがとな。また、どこかの空で会おう!」


 口早に伝えると、(きびす)を返し去っていく。ずいぶんと早足だな。俺は去りゆく背中に、声を掛けた。


「ありがとうございました、ドマさん! また、どこかの空で会いましょう!」


 どこかの空で会おう――この地方で、古くから使われている言い回しだ。場所も時間も指定しない、再会の約束。人と人とを繋ぐ、言の葉。良い言葉だな。心からそう思った。

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