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飛空船創造スキルで大冒険! 2008年版七つの大罪と共存して特能獲得  作者: 石上夢悟朗
第三章 中型飛空船対抗五島制覇大競争の開催
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58話 中型船大レース、三日目・開始

 早朝、中型船大レースの再開。風雷号と猪鹿蝶号は、抜きつ抜かれつの接戦を繰り広げている。船本体の加速力なら、風雷号の方が上回っている。だが相手は大量の魔石を使い、加速力の差を補っていた。順調に進めば、今日でレースが終わる。出し惜しみなしの大盤振る舞いなのだろう。


「倹約って言葉を知っていますか! 資源は大切にしましょう!」

「無駄遣いを止めることだろ! これは無駄ではないね。必要な投資さ!」


 こちらも燃料用の魔石は用意してある。しかし潤沢に使える程の数は無い。相手に合わせて使っていたら、瞬く間に枯渇する。一進一退を続け、風切島(かざきりとう)に到着した。


 島内に入ると、目の前に巨大な山が存在していた。チェックポイントは、山の向こう側。あの高さだと、高度制限に引っ掛かるはず。さらに島の上空は、強い風が吹き荒れている。飛空船の結界は、風除けの機能が標準装備だ。そうでなければ、高速での飛行は困難になる。だが上空の風には強い魔力が含まれており、並の結界では歯が立たないだろう。


「ヤマトさん、どうしますか?」

「右に行きましょう! 根拠はありません!」


 サクラさんに答えた後、即座に風雷号を右に進ませた。中途半端に考えるくらいなら、迷わずに進む! 猪鹿蝶号は左に行くようだ。しばしの別れだな。前後に他の飛空船は見えない。風雷号、単独で山間の道を進んでいく。


「正面に魔獣! 数は五!」


 ピヌティさんの声で、前方に意識を集中する。少し遠いが、なんとか姿を確認できた。体長は2メートル弱ほど。一頭だけ二本の角があり、暗い灰色の体毛だ。他の四頭は少し毛色が違い、また角もない。共通の特徴として、前足が長く身体が傾いている。そして大きな翼を有していた。


「あれ、風翼ウマシカだよ! 素早いから気を付けて!」

「特に風魔法を使った突進が、危険だと聞きました!」

「ヤマトさん、来ましたよ!」


 予想より早い! そうか。上手く風に乗って、速度を増している! サクラさんの言葉と同時に風雷号を動かし、なんとか相手の突進を避けた。上空ほどではないが、地表付近も強風が吹いており避けにくい。


「角ありの個体を、集中して狙ってください!」

「任せろ! 爆裂針の出番だ!」


 的確に風翼ウマシカを狙い撃っている。回避のために激しく動く船上から、確実に命中させているのは凄いな。


「倒れた! 残りを殲滅するか!?」

「いえ、他は逃げ始めたようです! 先に進みましょう!」


 さっきの突進を見て、一つ思い付いた。周囲の魔力を感知。魔力を持った風なら、その動きが読めるはずだ。


「見えた! 少し高度を上げます!」

「凄い! 風に乗ってるよ!」


 操作を誤ると、危険ではある。しかし速度は確実に上がっている。ハイリスクハイリターンだな。


「チェックポイント、発見!」


 いいペースだ! あれから魔獣に遭遇しなかったのも大きい。


『剛壁防御丸が、地盛島(ちせいとう)のチェックポイントを通過しました! ほぼ同時に風雷号が、風切島(かざきりとう)のチェックポイントに到着!』

『強力な防御結界を使い、一直線に突き進む剛壁防御丸。機動力と魔力探知を武器に、臨機応変な対応を取る風雷号。両者の差は、ほとんど無いと言える』


 行き当たりばったり、とも言いますが! それはともかく、魔力探知を活用していたのに気付いていたのか。さすが解説者だな。


『猪鹿蝶号も来ました。風切島のチェックポイントを通過!』


 ドマさん達も通過したのだな。わずかに先行しているが、油断はできない。切り札の一つや二つは用意してあるだろう。


「マリアさん! 効果の低い魔石は、どんどん使ってください!」

「了解!」


 風の流れを把握できれば、この島を迅速に進むことが可能だ。短時間で風切島の外に出た。




 最後の島、無縁島に向けて舵を取る。途中で剛壁防御丸と遭遇。左に並ばれた。機動力なら風雷号が上だったはず。どういうわけか、今は全く差がない。理由が気になるな。風魔法の効果範囲を拡大。声を相手の船まで、届かせる。


「お久しぶりです、シルドさん。お元気でしたか?」

「もちろん、僕は元気さ! さらに付け加えると、剛壁防御丸は大絶好調だね!」


 確かに絶好調みたいだな。以前とは速度が段違いだ。調子ひとつで、ここまで変わるのだろうか。


「後方から、猪鹿蝶号! 来たよ!」

「追い付かれたか!」


 マリアさんは補給作業をしながら、後方を確認していたようだ。


「ドマさん、財布の中身は大丈夫ですか!」

「おかげさまでね! これから、たんまり手に入るさ!」

「初めまして! 槍と大地傭兵団の、みなさん!」


 シルドさんが会話に参加してくる。最初に会ったとき、傭兵を非難していたような。大丈夫だろうか。


「剛壁防御のシルドかい。アンタの噂は、よく聞いている」

「きっと良い噂だね! 君の噂も、広がっているよ。傭兵(まが)いの連中に、傭兵の何たるかを教育してほしいな!」


 毛嫌いしていたのは、傭兵紛いのゴロツキか。槍と大地傭兵団に、敵意は持っていないみたいだ。


「教育なんて、柄じゃないね!」

「それは残念。さて、魔力の補給も終わった。僕は先に行かせてもらうよ!」


 剛壁防御丸が、さらに加速。風雷号と猪鹿蝶号を引き離した。


「ちっ! 先に行かれたか!」

「追い掛けます!」


 風雷号の速度を上げた。猪鹿蝶号も同様に、加速している。横並びのまま、無縁島に到着。見た目は、特徴のない島だ。だが各地に強い魔力を感じる。強力な魔獣が存在していると聞いた。その魔力だろうな。


『中型船大レースも大詰めを迎えています! 先頭は剛壁防御丸、シルド選手です! 風雷号と猪鹿蝶号が追い掛けます!』


 実況の声が聞こえた。ゴールが近い。だがそのとき先を行く剛壁防御丸の前方で、地面が盛り上がった。巨大な人型を成していく。魔獣の一種、ゴーレムだ! 


「押し通るよ!」


 剛壁防御丸が、結界の前方部分を強化したようだ。速度を落とさずに、ゴーレムへ激突。その巨体を弾き飛ばした。


『剛壁防御丸、ゴーレムに体当たり! 吹き飛ばしました!』


 ゴーレムの身体から、急激に魔力が失われていく。その魔力は、剛壁防御丸に流れていった。これは何だ!? いや。この気配には、覚えがある!


「魔力吸収!? 剛壁防御には、そんな力もあったのかい!」

「違います! あれはシルドさんの能力では、ありません!」


 大罪の欠片による力だ! おそらく普段は欠片の能力を、結界で抑えていたのだと思う。しかし結界の一部分を強化したことで、他の箇所が弱まったのだ。魔導機械の不調が多かったのは、これが原因か! 常に全力でソウルスキルを使っているわけではない。結界が弱くなったとき、周囲の魔力を吸収していたのだ。


「何か知っているみたいだね! だが詳しく聞いている暇は、なさそうだ!」


 ドマさんの言う通り、事態は逼迫(ひっぱく)している。俺たちも、シルドさんも。


『これは、どういうことでしょう? 様子が、おかしいような?』

『剛壁防御丸に、莫大な魔力が集まっている! これは危険だ!』


 ゴーレムの魔力を吸収した剛壁防御丸は、その後も周囲の魔力を取り込み続けている。遠からず限界を迎えるだろう。


「ヤマト殿! 剛壁防御丸が失速している! 落ちるぞ!」

「魔力を抑え切れなくなったのでしょう!」


 ゴーレムの魔力が大きかったことや、三日間のレースによる疲労が蓄積したこと。それらの要因が合わさり、魔力の制御が甘くなっているのだ。


『飛空船に魔力が集まり過ぎている! このままだと爆発するぞ! 何? シルド選手が棄権信号弾を捨てた!?』


 解説者――オルノブさんの切羽詰まった声が聞こえる。その言葉は間違っていないだろう。いつ爆発しても、おかしくない程の魔力だ。さて、どうするべきか。

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