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飛空船創造スキルで大冒険! 2008年版七つの大罪と共存して特能獲得  作者: 石上夢悟朗
第三章 中型飛空船対抗五島制覇大競争の開催
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57話 中型船大レース、二日目

 日が昇り、レースが再開された。風雷号は巡航速度で飛ばしている。まだ先は長いからな。加速する余地を残しておきたい。地盛島(ちせいとう)を通過しての判断だ。


「現在、地盛島側ではトップです。マリアさんは、後方を確認してください」

「了解! 追い付かれそうになったら、皆に教えるんだね!」


 風切島(かざきりとう)側に遅れを取っているが、そちらは今の時点で考えても仕方ない。島ごとに通過難易度も異なるはずだしな。そのまま風雷号を飛ばし続ける。


「発見! 水流島だ!」

「マリアさん!」

「後ろは誰も来てないよ!」


 よし! 水流島に到達した時点で、先頭を維持している。地図を確認し、チェックポイントを目指そう。門を通過し、島の中に入った。川・湖・滝など、水の美しさを実感できる景色だ。レースの途中でなければ、のんびりと鑑賞したい場所だと思う。――それと魔獣がいなければな。


「魔獣を確認! 斑点鹿だ!」

「魔法攻撃に注意してください!」


 黄褐色の毛皮に白い腹。背中には多数の斑点。そして個体により斑点の色が違う。その色は得意な属性を表す。すなわち属性魔法を使うと同時に、強い耐性を持つことを示している。さらに厄介なことに、斑点鹿は群れで行動する。


「ヤマト君、どうするの!? 戦う!? 逃げる!?」

「戦いましょう! 後ろから魔法の集中砲火を受けると危険です!」


 高度を上げて逃げることも考えた。だが風魔法を使う個体がいる。群れ全体に飛行魔法を使われる恐れがあった。――本当に使ってきたか!


「風刃翼、展開! 足場を作ります!」

「私は左翼に向かう!」


 ピヌティさんが左翼に、サクラさんが右翼に移動した。単体の能力は、それほど高くない。だが数は厄介だ。近くに仲間がいたのか、戦闘開始当初から増えている。大規模魔法を使うか迷ったが、まだ二日目が始まったばかり。温存を選択した。マリアさんには後方の警戒を継続してもらい、三人で地道に数を減らしていく。


「これで終わりです!」

「急いで離れましょう!」


 サクラさんが最後の一体を討伐したのを確認し、風雷号を発進させる。


「後方から二艘、近付いてくるよ!」

「猪鹿蝶号とシンテイブだ!」


 マリアさんの報告を聞き、ピヌティさんが後方に視線を向けた。


「とにかく出発しましょう!」


 なんとか追い付かれる前に、この場を離れた。その後は地形を無視した鉄砲水に邪魔されつつ、チェックポイントに向かった。


「ヤマト君、追い付かれたよ!」

「猪鹿蝶号か!」


 何度目かの魔獣戦中に、猪鹿蝶号が追い付いてきた。場所は湖のほとり。中央にある小島が、チェックポイントとなる。


「よお、やってるね! 戦闘要員が三人だと辛いだろう! 手を貸すよ!」

「さらっと恩を売ろうとしないでください! 魔獣を倒さなければ、貴女たちも動けないでしょう!」


 とにかくドマさんたちと、共闘することになった。辺りを見回すと、複数種類の魔獣が敵意を剥き出しにしている。五つの島はソウルスキルの訓練場として、作られたと聞いた。そのためか迷宮内と同様の性質を持つ。どこかに島の主が存在し、魔獣の指揮を執っていると言われている。実際に姿を見た者は、いないらしいが。


「最優先で倒すべきは、あいつだね。水流熊(すいりゅうぐま)!」

「近くに川や湖があると、一段上の水魔法を使うみたいですね」


 水流島にいる水流熊だ。完璧な適応だろう。


「ドマさん、気を付けてください。周囲の魔獣は、お任せを!」

「当たり前のように、水流熊を押し付けるじゃないか!」

「逆でも構いませんけど、大丈夫ですか? ここはチェックポイントの近く。定点映像発信機があるかもしれませんよ」


 大型魔獣を周りに押し付ける傭兵。控えめに言って、印象が悪すぎる。半分は親切のつもりだった。


「ああ! そうだった! 槍と大地傭兵団の力、見せてやるよ!」


 今の一言で、猪鹿蝶号のクルー五人全員が槍を構えた。あれ、全員? 操舵手も戦闘態勢を取っている。猪鹿蝶号が動き出し、水流熊へ向かう。魔力操作に切り替えたのか。判断が早いな。


「俺たちは周囲の魔獣を掃討しましょう」

「承知しました。秘刀術、一刃無垠(いちじんむぎん)!」


 衝撃波を伴う斬撃だ。広範囲の魔獣に傷を負わせている。効果範囲が広い代わりに、威力は低い。倒し切れない相手も多かった。


「動きが鈍い。トドメだ!」

「ピヌティちゃん、追加の爆裂針だよ!」


 傷を負った魔獣を、各個に撃破していく。マリアさんは異空間倉庫袋を持っているため、使用した道具の補充担当だ。


「大地の盾!」


 これはドマさんの声か。地魔法で水流熊の魔法を防いだみたいだ。先程から、一進一退の攻防を繰り返している。猪鹿蝶号を動かし、側面を魔獣に向けた。二人の船員が槍で水流熊を突き刺す。彼女たちは動きを止めることなく、後ろに下がった。


「そろそろ終わらせてもらうよ! 大地三衝(だいちさんしょう)突き!」


 大地の力を纏った三連続の刺突技だ! まともに受けた水流熊は、地に伏せる。身体が消滅し、魔石と素材を残した。あ、きっちり回収している。


「向こうも終わったか」

「改めて出発しましょう」


 ピヌティさんが最後の一体を倒し、こちらの戦闘も終了した。風雷号を加速させようとしたとき、大きな魔力が動いていることに気付いた。これは飛空船だ!


「シンテイブか! 追うよ!」

「俺たちも行きましょう!」


 おそらく隠蔽の結界で、近くに潜んでいたのだろう。戦闘中は至る所に、魔力の乱れが起きる。なかなか気付くのは難しい。急いで追い掛けたのだが、シンテイブはチェックポイントを通過していた。


『水流島、最初のチェックポイント通過はシンテイブです。少し遅れて猪鹿蝶号と風雷号が通過しました』

『戦闘が終わった瞬間を見計らい、一気に加速して両者を出し抜いた形だな。一方の猪鹿蝶号と風雷号だが。通過こそ遅れたものの、両者の戦いぶりは見応えがあった』


 かなり離されたが、まだ追い付ける距離だ。ここで猪鹿蝶号が突然の加速。どうやら水流熊の魔石を燃料に使ったらしい。


「こっちも加速する!?」

「いえ、現状のままで行きます!」


 マリアさんが魔石を片手に問い掛けてきた。ここは無理するべきではないと、判断する。


「ヤマト殿、信号弾だ!」

「赤色、棄権の合図ですね!」


 かなり遠くだが、シンテイブが棄権したと分かった。ただ原因は不明だ。警戒を強めながら、風雷号を飛ばす。近くまで来ると、すでに救助隊の飛空船が到着していた。近くに控えていた救助船だ。風魔法で状況を把握する。


「原因が分かりました。道具の故障みたいですね。使っていた魔力探知機に、負荷が掛かり過ぎたみたいです」

「昨日から使い続けたのだと思うな。道具は大切に使わないとね」


 性能にもよるが、魔力探知機は安い買い物ではない。予備は無いか、あっても性能が落ちるのだろう。それからも鉄砲水と魔獣に注意を払いつつ、船を飛ばした。


「門が見えた!」

「一気に通過します!」




 ひたすら空路を進み続ける。途中で反対方向から、飛空船が飛んでくるのが見えた。剛壁防御丸、シルドさんの船だ。しかし先を進む猪鹿蝶号の姿は見えない。大分、離されたようだ。追い付けないまま、火燃島(かねんとう)に到着した。門を通り、一直線にチェックポイントへ向かう。


 平坦な道ではあるが、岩肌に所々溶岩が流れている。落ちたら終わりだな。今までの傾向から考えると、溶岩が噴き出してくるかもしれない。思わず身構える。


「……何も起きませんね。噴き上がる溶岩を、避けながら進むと思いましたが」

「それだと死者が続出しそうで、レースにならない気がします」


 サクラさんの言う通りか。考えてみたら、結界で防ぎ切れなかったら即死だ。そこまで危険だったら、コースに採用しないよな。中型船大レースは競技なんだし。


「ヤマト殿! 前方に魔獣! あれはネズミか!?」

「あたし、ネズミは嫌いなんだよね! だけど大きすぎて、別の生物にしか見えないわ」


 全長は2メートルを超えていそうだ。赤色の毛で、全身が覆われている。


「発火鼠か! 火属性の魔法を使ってきます!」

「それなら切り裂いてから、進みましょう!」


 振り切ることも、不可能ではないと思う。だが後方からの魔法攻撃は危険だ。時間は惜しいが、戦うしかないか。――いや、待て。


「風刃翼、展開! マリアさん、魔石で燃料補給を!」

「わかったわ!」


 魔石が燃料に変換される。これで飛空船全体に魔力が満ちた。風刃翼にも、十分な魔力が宿る。


「突撃!」


 発火鼠の目前で、急激な加速。風刃翼で切り裂いた。残念だが、魔石と素材は諦める。少しも速度を落とさずに、魔獣を撃退できたのだ。上出来と考えたい。その後はチェックポイントを目指し、ひたすらに突き進む。


『また新たな飛空船が、姿を見せました。風雷号です!』


 すぐに実況の声は聞こえなくなった。チェックポイントの周囲は結界で覆われており、その外側には音が出ないようになっている。


 そろそろ日が傾く頃だ。逆側からの飛空船は見掛けるが、前方を進む猪鹿蝶号は見えない。どこまで離されたのだろうか。


「やっと、見えた! 出口の門と猪鹿蝶号だ!」

「このまま追い付きましょう!」




 火燃島を後にし、空路に出た。少しずつ猪鹿蝶号に近付いている。魔石による加速は、中断したのだろう。無茶な加速を続けると、船本体に負荷が掛かる。そのまま飛び続け、日が落ちる寸前に猪鹿蝶号と並んだ。ほぼ同時に、日没。レースは、一時停止だ。移動を続けると登録証が感知して、即失格となる。


「お昼ぶりですね、ドマさん」

「かなり引き離したと思ったが、もう追い付くとはね」


 俺は軽く話しかけた。できればドマさん達の、人となりが知りたい。


「ところで、あんたも賞金が目当てかい?」

「金も欲しいと思いますが、主な目的は賞品の方ですね」


 この様子だと、槍と大地傭兵団は賞金が目当てらしいな。


「魔導通信販売機か。買いたい物があるなら、使える場所を紹介するよ?」

「特定の物が買いたいわけでは、ないんですよ」


 俺は少し考えて、目的を話すことに決めた。いつか彼女たちの力を、借りるかもしれない。


「強力な魔獣がいる島を、開拓しています。補給物資を送るのにも限界があるので、魔導通信販売機が欲しいのです」

「開拓ね、物好きな。魔獣がいるなら、アタシらの力が必要じゃないか? 顔見知りだ。特別割り増しで、引き受けるよ」


 割引では、ないんだな。


「特別に強い魔獣との戦闘になりますが、よろしいでしょうか?」

「望むところさ!」


 冗談か本気か分からないことを、笑いながら話していく。そろそろ食事の準備をする必要がある。会話を切り上げないと。


「明日は全力で勝ちにいくよ。優勝はアタシらさ」

「こちらも負けません。最初にゴールするのは俺たちです」


 それから夕食を済ませ、休息を取る。今日は早めに寝て、明日に備えることにした。日の出に合わせて、出発となる。寝坊したら大変だ。

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