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飛空船創造スキルで大冒険! 2008年版七つの大罪と共存して特能獲得  作者: 石上夢悟朗
第三章 中型飛空船対抗五島制覇大競争の開催
55/217

55話 合間、予選通過から大レース前日

 予選通過が決定してから、三日目の夜。俺は今、大勢の人に囲まれている。性別は男女半々、年齢も様々。老若男女が揃っているな。さて、どうしてこうなったのか。今日の行動を振り返る。


 二日の訓練を終え、三日目の今日は休暇を取ることにした。魔獣狩り協会では、過去の実績に応じて休暇手当を支給している。俺は登録したばかりのため、今まで手当は無かった。今回の休暇から手当が付くことになる。金額は雀の涙だけど。


 せっかくの休暇だ。俺はサクラさんを誘い、町に出た。目的は魔導写真機の購入。以前より考えていたが、少々値が張るため先延ばしになっていた。だが、今なら買える。なぜなら今この国では、中型船大レース出場者応援キャンペーンを行っているからだ! 最大99パーセントオフの大特価! 購入した人が優勝すれば店の宣伝になるため、どっちもお得なセールです!


 首尾よく目当ての物を買い、二人で早めの夕食を取る。穏やかな時間を過ごし、格納庫に戻った。ピヌティさんと会い写真機のことを話したら、彼女も興味を示した。さらに自分も購入したいと言って、サクラさんに案内を頼む。マリアさんも外出中。一人になった俺は、酒場へ行くことにした。


 良さそうな店を探し、繁華街を歩く。穴場でもないかと、裏路地に入ったのが悪かったかもしれない。気が付いたら、大勢の人に囲まれていた。




「『無限の集い』代表のヤマト殿ですね。我々はラナ様サポートクラブ親衛隊! 貴殿に話があって参上しました。一緒に来ていただけますか?」

「行きましょう」


 ……これは想定外だったな。つまり実況を担当したラナさんを、応援している人たちか。害意は無い、ような気がする。俺が歩き出すと、周りを取り囲むように人の流れが動き出す。やがて一軒の酒場に辿り着いた。店内に入り、中央の円卓まで行く。座ろうとして、イスが無いことに気付いた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 近くにいた人が、店の隅に置かれたイスを持ってきてくれた。礼を言って、腰掛ける。対面に座るのは、最初に話し掛けた男だ。俺より一回りほど年上で、精悍な顔つき。豊かなヒゲが目立っていた。そして相当な魔力を持っている。


「私はラナ様サポートクラブ親衛隊長のグルディプ。不躾な招きに応じていただき、感謝いたします」

「構いませんよ。それで話とは、なんですか?」


 やたらと丁寧な対応だな。魔力の流れからすると、敵対する意思は感じられない。


「ラナ様は貴殿のファンを公言されています。つまり! ラナ様が応援するなら、我々も応援するのが道理! ここはサポーターが経営する店。貸し切りにしておりますので、好きなものを注文してください。支払いは全て、我々が受け持ちます」

「それでは遠慮なく!」


 そして宴会が始まった。聞くとサポーターの一人が、歩いている俺を見つけたらしい。それで急いで集まり、声を掛けたと。普段は仲間と一緒にいるため、邪魔をしないように話し掛けるのは控えていたみたいだ。確かに帝都を一人で歩いたのは、初めてだったな。


「中型船大レースには、不肖の弟子も出場します。槍の腕はいいものの、最近は初心を忘れているようで。傭兵団なぞ作り、お山の大将を気取っていますよ。遠慮なく叩きのめしてください」

「相手が誰であれ、負けるつもりで出場はしませんよ!」


 久しぶりに飲んだせいか、少し気が強くなっているような。まあ、いいか。酔っ払いたちと笑いながら、酒を酌み交わす。……明日になれば、話の大半は忘れている気がする。


「ラナ様が大レースの実況を担当するか、決まっておりません。今は地道に街頭で署名運動をしています」


 情報通の話では実況者の数が多いため、かなり不利らしい。……不利な理由は、それ以外にもありそうだけど。やがて夜も更け、お開きの時間になる。


「今日はありがとうございました」

「なんの。礼を言うのは、こちらです。いつか、どこかの空で会いましょう」

「楽しみにしています、グルディプさん。いつか、どこかの空で会いましょう」


 互いに挨拶を交わし、店を出る。もう夜も遅い。飛空船発着場の格納庫に戻ろう。それから訓練と休暇で、大レース前日まで過ごした。




 明日、ついに中型飛空船対抗五島制覇大競争――中型船大レースが始まる。夕食を終えた俺たちは、風雷号の休憩室に集まった。


「いよいよ明日ですね。俺が飛空船を操作するので、マリアさんは補給をお願いします」

「わかったわ。あたしの操船だと、魔獣との戦闘は危ないからね」


 大レースでは、多くの魔獣がいる浮島を進んでいく。四つの島にチェックポイントがあり、全てを通過してから最後の島に向かう。五つの島は、それぞれ地盛島(ちせいとう)水流島(すいりゅうとう)火燃島(かねんとう)風切島(かざきりとう)無縁島(むえんとう)と呼ばれている。


 最後に行くのは無縁島だ。四島を巡る順番は、決まっていない。それを考えるのも、戦略の内らしい。今までの結果を鑑みると、勝率が高かったのは地水火風の順番だ。


「私が物見や警戒、サクラが戦闘担当だな。島の順番はどうする?」

「やはり地水火風の順で、巡るべきだと思います」

「俺も賛成です。ここで奇策に走る必要はありません」


 特に反対者もなく、四島を巡る順番が決定した。


「ところで五島の属性は、飛空水晶収集と同じだよね。関係があるのかな?」

「飛空水晶収集は、五島制覇大競走を元にしていると聞きました」


 おそらく水晶の入手を、チェックポイントの通過に見立てているのだろう。


「誤算だったのは、食料と魔石の件ですね」

「ヤマト殿の異空間倉庫で、有利に立てると思っていたが。まさか大レース参加者に、倉庫鞄の貸し出しがあるとは」

「それも今年からだったよね」


 重量を減らすために、食料を極限まで切り詰めたチームが出るのだ。それも毎回のように。多くの飛空船には、魔導師が乗っている。水を魔法で生成するのは、珍しいことではない。しかし食料の生成は困難だ。


 レースは数日間、行われる。早くて三日、遅いと五日間ほどだ。期間に差が出るのは魔獣や天候の影響を受けると、移動速度が大幅に変わるためだ。場合によっては、魔獣の大群に出くわすこともある。空腹を抱えて、戦闘を続けるのは極めて危険だ。


「安全のためですし、良いことだと思いましょう」


 それにしても、相当な容量がある倉庫鞄だ。十日分以上の水・食料・魔石を入れても、まだ余裕がある。食料を減らして、魔石を多く入れることを防止するためかな。


「開始直後は、どうするの? 先行して進むか、少し遅れていくか」

「俺は先行するべきだと思います」


 マリアさんの質問に、迷わず答えた。先行する場合、不意に魔獣と遭遇する恐れが高まる。先頭集団から少し遅れることで、魔獣の動向が読みやすくなる。また前の船が魔獣を倒すのを見計らい、こっそり後をつけるチームもいるらしい。


「考える必要もないな。先行に一票」

「二人に賛成です」


 優勝候補は『槍と大地傭兵団』のドマさん。そして『剛壁防御』のシルドさんだ。ドマさんたちは強力な隠蔽効果がある結界を使える。シルドさんはソウルスキル・剛壁防御で、魔獣を無視して進める。船の後をつける方法では、二人に勝てないだろう。


「では可能な限り、先行しましょう」


 話し合いは終わり、皆が部屋に戻る。俺は寝室に行ったあと、喉の渇きを感じた。休憩室に出ると、サクラさんが座っている。


「寝ないのですか」

「あ、すぐに寝ますよ。少し考え事をしていました。そうだ、ヤマトさん。お話に付き合ってくれませんか?」

「そうですね。何を話しましょうか」


 それからサクラさんと、とりとめのない話を続けた。時間が穏やかに流れる、心地よい空間。とっぷり夜が更けるまで、二人で話をする。名残惜しいが、もう寝る時間だ。寝室で横になり、目を閉じる。

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