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38話 出発、夢幻島へ

 王女との面会から、一ヶ月が過ぎた。国中で王女の話題が沸騰している。洗脳に使われた布から、わずかに王女様の魔力が感知された。これは感知されるように、最初から仕組んでおいたらしい。それからトリアさんは、意図的な情報操作が罪になったとのこと。


 すでにバイオレット様とトリアさんは、夢幻島に送られることが決まっている。異例の速さで裁判が進んだのには、理由がある。

 カイス王国が始まって以来の大事件であること。また第三王女は国民から人気が高くて、放置すると暴動が起きる恐れがあったからだ。


 そして俺は証拠隠滅罪で、罰金900万エルが決まった。泣きそうなほど、高い。魔法や飛空船を悪用した場合、通常の刑罰とは別に特殊罰が加わるらしい。特例として、分割払いが認められたのは助かる。


「ヤマトさん、もう出発の時間ですよ。全員、揃っています」

「ありがとうございます、サクラさん。こちらも出発の準備は完了しました」


 今日は夢幻島へ出発する日。島で生活するのは合計九名。まずバイオレット様とトリアさん。さらに王女付きのメイド二人だ。こちらは刑罰ではなく、王女の身を案じて同行を立候補した。


 次にボーロング三兄弟。長男のボーロング・コナンさんは、風や水を操る魔法を得意とする。さらに病を癒す力もあるとか。次男ボーロング・トレジャンさんと、三男のボーロング・ベアムンさんは建築の知識があるらしい。三人とも島のことを聞き付けて、自ら志願してくれた。


 最後は魔獣狩り協会カイス支部長グランザードさん、魔獣退治組合カイス支部長ソフィアさん。正確には、元支部長だな。二人は独自に貴族の動向を探っていた。両組織の実権を奪おうとする計画があったらしい。衛兵団や騎士団と、似たような状況になっていたわけだ。無茶苦茶な命令は、貴族の目を誤魔化しつつ証拠を掴むため。王女が欠片の情報を入手できたのも、二人の働きがあったからとのこと。


 仲が悪いというのは、意図的に流した噂と聞いた。解任されそうな状況を作り、相手の行動を抑制したのだな。解任前後の混乱に乗じた方が、実権を握りやすいと思われるからだろう。二人が夢幻島に行くのは、本気で開拓を進めるため。暗殺の危険を感じていた二人は、仕事を後任に託す準備をしていたことも都合がいい。


「これが最後の煉獄島送りになるでしょうか?」

「そうなると思います。バイオレット様」


 煉獄島送りの刑罰は、近い内に廃止される。改めて文献を確認したら、過去には安全地帯が存在していなかったらしい。誰一人、生存者がいなかったのも納得だ。これから安全地帯を中心に開拓が進むと、煉獄島送りが罰にならなくなるだろう。そうなる前に、先んじて廃止するわけだ。


「おう、ヤマト。煉獄島――いや、夢幻島か。そこまで、よろしく頼む」


 そうだった。今後は煉獄島の呼称は、使わないようになる。名称が二つあるのも紛らわしいし、正式と思われる夢幻島で統一した。


「全員、無事に連れていきますよ。アクスさんも大変ですね、引率」


 引率というよりも、監視というべきかな。ピヌティさんも同様に、監視の役目を負っている。物資を把握しているマリアンヌさんも、同行者の一人だ。

 船を見ていると、トリアさんが休憩室から出てきた。


「ヤマトさん、ヤマトさん! 船の中、凄いですね!」

「頑張りましたよ、本気で」


 やたらと元気なのは、久しぶりに屋敷の外へと出たからだな。ずっと軟禁されていたので、いつになく気分が高揚しているみたいだ。


「特に、お風呂! 素晴らしい!」

「トリアさんの要望は、可能な限り応えますよ」


 トリアさんとメイド二人から、要望があった。お風呂を男性用・女性用に分けてほしいと。王女の入った湯船に、男を入れては駄目らしい。三人で土下座までして頼まれたら、断れなかった。特にトリアさんには負い目がある。できるだけ希望を叶えてあげたい。俺が心の平穏を維持するためにも。

 だけど実行するのは、思い返しても大変だったな。


「でも良かったです。魔獣の素材を大量に頂けて」

「本当に助かりましたね、サクラさん。感謝の気持ちしかありませんよ」


 俺は王女様を助けるために、汚名を被ってまで証拠の隠滅を図った人間らしい。バイオレット様を慕う人間から、多くの礼を言ってもらった。誤解されている気がするけど否定もしにくい。また言葉だけでなく、物品の礼もあった。それが魔獣の素材だ。飛空船の強化に使うことを知ったら、協力して集めてくれた。


「ヤマト殿のソウルスキルは凄いな。これだけの船を創り出せるのか」

「ええ、自慢のスキルですよ」


 ここに集まった人たちには、飛空船創造スキルの説明をしておいた。夢幻島から出るために、竜人船トライバスターが必要だからだ。隠しながら使うのは、無理があると判断した。大半は島で生活する人員なので、問題ないだろう。


「寝室の数、多いね! 全部で、ええと何部屋だっけ?」

「十三部屋あります、マリアさん」

「そうそう、十三部屋!」


 大量の素材を使った結果、スキルが大幅に強化された。顕著なのが生活と収納に関する部分だ。船の中に異空間を作り、見た目以上に広い。また休憩室を中心に、それぞれ寝室が繋がっている。

 俺はステータスカードを取り出して、飛空船創造スキルを意識した。総合四級、機動二級、攻撃三級、防御三級、生活三級、収納三級、娯楽七級。娯楽が低いのは相変わらずだ。なんとかしたいと思うが罰金の支払いもある。遊ぶ余裕は、あまりない。


「十三部屋だと、かなりの人を運べますね。ヤマトは輸送の仕事を行いますか?」

「……考えてはいるのですけど、まだ分かりません。他に稼ぐ方法もありますし。ただ検討はするつもりです」


 バイオレット様の言葉に考えながら答えた。厳密に言うならマリアさんの依頼ですでに輸送はしている。ここで聞いているのは、仕事として専門に行うかだろう。


「ヤマト君。稼ぐと聞いて思い出したけど、寄付金は本当によかったの? 罰金の支払いに充てなくて。全部、開拓の費用に回すんだよね」

「王女様のために集まった寄付金ですよ。さすがに罰金の支払いには使えません」


 マリアさんが率先して動いたことで、結構な額の寄付金が集まっている。国民のために立ち上がった王女のために、少しでも役に立ててほしいとのことだ。

 寄付金の収集は衛兵団にも手伝ってもらっている。大きな金額になりそうということで、衛兵団長が気を遣ってくれたみたいだ。


「衛兵団が頑張ってくれたな」

「ピヌティさんも橋渡し役、お疲れ様でした」


 その衛兵団だが、騎士団との関係が修復されつつある。きっかけは王女の収監。カイス王国では、王族の収監は初のことだったらしい。両組織が協議を繰り返し、王女に失礼のない対応を考えたとのこと。

 また第三王女の人気が鰻登りであり、第一王女派と第二王女派が危機感を持つ。なんとか打開しようと、考えに考え抜いた結果。第一王女の歌声に合わせながら、第二王女の剣舞を披露すれば最高という結論に達したそうだ。近いうちに王女が偶像(アイドル)化しそうで心配に思う。この国は大丈夫なんだろうか。


「捕らえた貴族の対応では、両団に任せきりとなりました。元王女として、とても心苦しい限りです」

「欠片の影響が収まったら、罪を認めて自白を始めたのでしょう。それを知ったら欠片と関係ない者も、次々と内情を語っているとか。すぐに決着が付きますよ」


 元王女というのは、王族の資格を剥奪されたからだな。黄腕党は終焉を迎えた。洗脳後の違法行為で捕まった人間には、罰の軽減が認められている。だが無罪とはならない。バイオレット様が、気にしすぎないよう祈りたい。彼女の行動により、王国の闇が暴かれた。それは確かな事実なのだから。


「さて、そろそろ出発しましょう。風雷号を動かします」


 話を切り上げて、飛空船を発進させる。目標は夢幻島。魔獣除けの結界を張ってもらい、最高速度で島を目指す。


 ――それから三日後、無事に夢幻島へ到着した。

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