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30話 女神様、解除の言葉

 遭遇した一角羽鹿の群れ。心を落ち着かせながら、戦闘行動に移る。


「風刃翼、展開! サクラさんは右、アクスさんは左、ピヌティさんは遊撃を! お願いします!」

「お任せを!」

「俺の斧が唸るぞ!」

「承知した!」


 三人が了承の声を上げながら配置に就く。当初は戦闘指揮を魔獣戦の経験豊富なアクスさんに頼もうとした。しかし、本人に断られてしまう。曰く、中型飛空船の機能や俺の魔法技能を把握していない。十分な指揮は難しいとのことだ。それから飛空船の所持者が指揮を執るのは、珍しくないとも言われた。


「一角羽鹿の群れが分かれた! 前方と左右に、向かっている! 私は前方の敵を討つ!」

「了解です、ピヌティさん!」


 まず守るべきは、飛空船の動力。魔獣を倒しても、船が動かせなくなれば困ったことになる。一角羽鹿の動きには、要注意だ。なんだ、群れが止まった? 魔力が集中している。鹿の鳴き声……違う! これは咆哮の一種だ! 


「みなさん、大丈夫ですか!?」

「こんなもの、効きません!」

「俺の鎧は耐咆哮が付与されている。問題ない」


 サクラさんは聖化粧術で強化されている。アクスさんは鎧の効果で無事だ。まあ本人の能力だけでも、余裕で耐えそうだけど。


「ピヌティさん、無事ですか!」


 まずい、身体が泳いでいる! 魔獣の群れに一番、近い場所にいたからだな! 急いでピヌティさんの居場所に向かう。


 一角羽鹿の周囲に、複数の光球が現れた。攻撃魔法まで使うのか。サクラさんとアクスさんは大丈夫だろう。風刃翼の足場があれば、避けられるはず。俺は魔獣とピヌティさんの間に割って入った。向かって来る光球を何とかしなければ。


「闇よ、敵を阻む盾となれ!!」


 光球から身を守るために、闇の盾を作り出した。ほぼ全ての光球を、防ぐことに成功した。しかし一つだけ、盾を貫かれてしまう。この軌道だと、ピヌティさんに直撃するだろう。再び防御魔法を使う余裕は無かった。俺は左手に魔力を集めて、光球に接触させる。


「ぐっ!」


 痛い、熱い! 俺の魔法耐性は精神系に偏っているらしい。物理魔法耐性が低いわけではないが、当たれば傷を負うし痛くもある。

 いや、それよりピヌティさんだ!


「すまない、ヤマト殿! 助かった! 礼は必ず!」


 どうやら自力で立ち直ってくれたようだ。前方の魔獣を相手に、戦いを始める。俺は後方に下がりながら、回復魔法で左手の傷を癒す。左右の戦闘に目を向けた。アクスさんは余裕を持って対応しているが、サクラさんは少し戸惑っているか。


「斧両断!」


 アクスさんが、一角羽鹿を縦に断つ。あ、風刃翼に斧が突き刺さった。


「すまん、ヤマト! 翼に当たった!」

「それくらいなら修復可能です! ただ当てすぎないように、攻撃してもらえると助かります!」

「了解!」


 サクラさんの方は、どうだろうか。一角羽鹿の動きは、通常の一角鹿や羽鹿より早い。だけど彼女が対処できない程ではない。おそらく全く情報の無い相手だから動きにくいのだろう。


「くっ、当たらない!」

「大丈夫ですよ、サクラさん! いつも通りにやれば、当たるはずです! 何度も叩きのめされた俺が保証します!」

「訓練の話ですよね! 人聞きの悪い!」


 おっと、調子が戻ったようだ。危なげなく対処している。ピヌティさんは左手に持ったピヌティで魔獣を次々と倒していた。なんか分かりにくいな。

 俺は近くに来た敵だけを狙い、木刀と魔法を駆使して戦っている。




 戦闘は終わった。時間にして四半時、つまり三十分ほどか。慣れない相手だったため、無傷とはいかなかった。それでも軽傷で済み、傷も治療が完了している。


「やはり回復魔法は助かりますね。ありがとうございます、ヤマトさん」

「どういたしまして。それより、すぐに出発しましょう」


 魔石や素材は異空間倉庫魔法で、まとめて収納した。ただし、飛空船上に落ちた物だけ。地面に転がっている物は放置。時間が惜しい。すぐ風雷号を発進させた。


「なあ、ヤマト。さっきの魔獣、どう思う?」

「どうも変でしたね。特に気になることが一つあります。見た範囲だと、全魔獣が結晶化しました」

「やはり、そう思うか」


 魔力の低い個体は、結晶化しない。つまり群れの全個体が強い魔力を持つのだ。最近、迷宮外で結晶化する魔獣が増えていると聞く。何か関係があるのだろうか。しばらく時が経ち、ピヌティさんから声が上がった。


「洞窟が見えた! 周囲に魔獣はいない!」

「確認! 近くに寄せます!」


 洞窟の入り口付近に、飛空船を停める。さすがに中型飛空船だと、乗り込むには狭い。中に入ろうとして、問題があることに気付く。


「結界ですね。それも通行に鍵が必要となる術式です」

「無理して通ろうとすると、どうなる?」


 アクスさんに聞かれて、詳しく結界の様子を調べた。なんだ、これ? 不自然なほどに分かりやすい結界だ。


「術者に気付かれ、さらに防衛機能が発動します」

「鍵というと、特定の物や言葉が必要なのか。物質の鍵なら、大体は開けられるのだが」


 鍵開けも可能なのか、ピヌティさんは。ただ魔法の鍵は無理と。


「人物や動作で開くこともあるそうです。……私の刀で斬るのは危険でしょうか」

「それは最後の手段だと思います。解呪魔法で開いたとしても、危険なのは変わらないですね」


 さて、どうするか。


「手当たり次第に、試すのはどうだ? 言葉や動作なら、万が一ということも」

「それは駄目です。一回目の失敗で術者が気付き、二回目の失敗で防衛機能発動。三回目では完全に封鎖されます」


 俺の言葉にアクスさんが顔をしかめる。挑戦するとしても最初の一回だけだな。捜索用魔道具を見ると、洞窟の中を示しているのは間違いなさそうだ。念のため、再使用して確認する。針が回転し、洞窟の入り口を示して停止。その後に少し動き一方向を差して止まった。


「あれ? 今の動き、変だったような?」

「どうしました、ヤマトさん?」

「少し気になることがあります。一度だけ解除の言葉を試しても構いませんか? 確証はありませんけど、開くかも。失敗したら、解呪魔法を使いましょう」


 三人の了承は、問題なく得られた。


「試すのは構わないが、自信の程は?」

「正直、失敗する確率の方が高いです」

「他に思い付いたことも、ありません。お願いします、ヤマトさん」


 ピヌティさんの質問に、本音で答えた。そしてサクラさんの言葉を聞き、意識を集中する。右手を伸ばして、結界に触れた。


「解除文句、女神様!」


 成功した! それは同時に、結界を張った人間を表していた。


「もう中に入れます。行きましょう」

「ヤマトさん、お見事です!」


 四人で洞窟の中を進んで行く。最前列にピヌティさん、少し離れてサクラさんと俺が続く。アクスさんには、最後尾を頼んだ。


「なんだ? 魔石や素材が点在している?」

「何者かが魔獣を討伐したのでしょう」


 ピヌティさんの疑問に、俺は確信に近い思いで答えた。魔獣を討伐した人間が、この先にいる。ほぼ間違いない。突き当りの角を曲がったら、開けた場所に出た。驚くべきは足下だ。プラスチックみたいな、透明の板が敷き詰められている。


 視界を遮らないため、地下の様子が見えた。縦長の巨大な水槽のような物体が、いくつも並んでいる。おそらく、培養槽ではないだろうか。気になるのは、全ての培養層が壊れていることだ。

 近くには、魔石と素材が落ちている。足下に気を取られていると、扉を開く音が響いた。俺は警戒しながら誰何(すいか)する。


「誰だ!?」

「紫煙の魔導師と、呼ばれている者です」


 姿を現したのは、紫色の外套を着た人間。顔を見ると、予想した通りの女性だ。俺は捜索用魔道具を確かめる。


「貴様が紫煙の魔導師ならば、この場で捕らえる!」

「ピヌティさん! 魔道針を見てください!」


 俺の言葉で、ピヌティさんが動きを止めた。不審そうに、視線を向けてくる。


「魔道針? それを見て――」


 どうする、と言い掛けたのだろう。だけど、驚きの余り言葉を失ったようだな。王女捜索用の魔道具は、紫煙の魔導師を指し示していた。


「幻覚魔法、解いたらどうでしょうか?」

「そうしますね。最初から貴方には通じて無かったみたいですし」

「また、お会いできて光栄です。カイス王国第三王女バイオレット様」

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